見出し画像

ミニシアターの苦戦に学ぶ---「ミニ」は誰にとっての価値なのか?規模と価値の非連動性についての考察

マーケティングにおいてビジネスのサイズ・規模、そして提供される製品やサービスの「大きい」「小さい」といったサイズ・規格の概念は、顧客にとっての本当の価値を見極める上では必ずしも重要ではありません。


顧客価値


顧客にとっての価値とは、顧客が企業の提供するものからどれだけ意味や喜びを感じ取り、深く体感できるかによって決まります。
この点において、ブランドの力の源泉となるのは、顧客自身が企業の提供するものをどのように認識し、それを利用・活用して、どれだけその存在を価値あるものと見なすかにあります。

苦戦するミニシアター

(映画館の名前は)イタリア語で「人生に映画を」を意味しています。
2004年、当時閉館した映画館を引き継ぐ形でオープンしたこの映画館。
当初は大手の映画会社が配給するヒット作品を中心に上映していました。
ただ8年前、近くに大型の映画館がオープンし、競争が激しくなります。
運営会社は差別化を図るため、大手が扱わない作品を独自に選んで上映する「ミニシアター」に営業形態を変えました。
幅広い世代に親しまれてきましたが、厳しい経営が続き、ことし3月末での閉館が決定。
運営会社は、市内にもう1つのミニシアターを運営していて、そこでの営業は続けていくとしています。

「人生に映画を」経営難で閉館も…ミニシアターのこれからは より


例えば小規模ながら独自の視点を持つミニシアターは、その「ミニ」という規模の小ささそのものに価値はありません。
重要なのは、そこで顧客が他では得られない映画体験を通じて、コミュニティとの絆を深めたり、文化発信の場として機能したりと、共に価値を創造できることです。
顧客がミニシアターに足を運ぶ理由は、映画を媒介にした人間関係の構築や、充実した時間の過ごし方を共創したいという思いにあるのかもしれません。

Stranger 小金澤剛康 会長
「ミニシアターというとコアな映画ファンだけが来るところだと思われがちだがそれでは、その少ない人たちをミニシアターどうしが奪い合うだけで、事業として広がっていかない。ミニシアターの魅力はスタッフとお客さんとの距離の近さであり、気軽に入れる文化発信拠点として、地域社会に貢献できる施設にしていきたい。コアな映画ファンと初めて足を運んだ人たちが共存できる空間を作りたいという思いが強い」

「人生に映画を」経営難で閉館も…ミニシアターのこれからは より

社会資本としてのブランド


マーケティング活動と顧客により共創された強いブランド(価値)は単に製品やサービスの枠を超えて、顧客の生活における「欠かせない存在」=「ありがたい存在」として認識されます。
それは、その製品やサービスを通じて、企業と顧客が響あい共創することによって生まれる文化的価値や社会的なつながりだからです。

例えば、ミニシアターが提供するのは、映画鑑賞の場だけではなく、コミュニティを基点とした価値共創によって生まれる文化的空間です。

誰にとっての「良いブランド」か?


したがって、「良いブランド」か「悪いブランド」かを判断するのは、規模の大小ではなく、顧客が実際にそのブランドから価値を強く感じ、対価を喜んで支払おうと思えるかどうかによります。企業が提供する価値が顧客にとって本当に魅力的で、顧客自身もその価値創造に主体的に関わることができれば、ブランドは強くなるのです。規模に囚われずに、顧客との価値の共創を重視することこそが、ブランドの真の力の源となるのです。

 ヘビーユーザーとライトユーザーでは、そもそも利用するブランドのレパートリーの数が違います(Banelis et al., 2013;Romaniuk & Sharp, 2022)。ヘビーユーザーはレパートリーが多いので小さなブランドも含まれる確率が高く、ライトユーザーはレパートリーが少ないため小さなブランドが含まれる確率は低い。その分布を所与の時点で集計して比べれば、相対的に小さなブランドのほうがヘビーユーザー比率は高くなるというだけの話です。
 もちろん小規模でも魅力的なブランドはたくさんありますが、それは小さいからではなく、提供している顧客価値が高いからです。

常識崩壊 「証拠」が語るマーケの真実 第13回
ヘビーユーザーの多さは、本当に「小さなブランド」の強みなのか? より 
太字は筆者

顧客との価値の共創という視点を大事にすることで、「顧客が享受する体験価値こそがブランド力(価値)の源泉」ということがより明確になります。

Price is wht you pay, Value is what you getの法則
価値に顧客は対価(Cost)を払います。対価に見合うかどうかもValueを考える上で重要です。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

それでは、また。


よろしければサポートをよろしくお願いいたします! みなさまのお役に立てるようにこれからも活動を続けます! 今後ともどうぞご贔屓に!