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『二人だけのボーダーライン』

『二人だけのボーダーライン』 No.045

罪を犯した白髪の混じる男は、約30年の服役を終えたばかり
ある人のお墓に行く前に、どうしても寄りたい場所があった…

初めてデートをした純喫茶は、今もまだ潰れずに残っていた
僕は買いたての茶色いジャケット
君はピンクのシャツに花柄のストール
ケチャップがきいたナポリタンと無理して飲んだブラックコーヒー
この味も、君の照れ笑いも、僕をあの日に連れ戻す…

君のお父さんから借りた車で海辺をドライブ
取りたての免許でハンドルを握る君と戸惑う僕
今日の為にお互い買った、ネイビーのボーダーシャツにブルーデニム
入り江が見渡せる展望台へ向かうが、道に迷う
ダッシュボードの中に地図があると言うが、見当たらない
君も一緒に覗き込んで、奥まで探す
一瞬の不注意で、道を渡る若い男女をはねてしまった
僕は助手席から飛び出し、二人に駆け寄るが意識がない
震えながらパニックになる君を守るため、僕は決断した…

刑務所に入ってから約半年後、君のお父さんから訃報を受けた
あの事件がきっかけで精神障害になり、罪の意識に耐えきれず大量の薬を飲んだと
その時に渡された手紙は、直ぐに読むことが出来なかった…

少し荒れたお墓の前で、ゆっくりと静かに手を合わせる男がいる
茶色いジャケットから朝顔が彩られたハンカチを出し、お墓の前にそっと置いた
“旅立ちの理由を知るのは、きっと世界中で僕だけだね…”
温めていた過去を埋めるかのような眼差しで、色褪せた封筒を取り出す
堅く閉ざされていた封印を、ゆっくりと解く
二人を隔てていた〈時の境界線〉が、今、消えた…


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