見出し画像

あと176日(妊娠4ヶ月:14週6日)


ふと、ある感情が私を占めた数日があった。

もう元の私には戻れないのだろうか。

呼んでもらったらふらっと家を飛び出て、足取り軽くいろんな人に会いに行けて、身一つでどこへでも何でもできていた。仕事して、好きなときに好きなものを食べて、欲しいものは自分の決断で手に入れてきた。全てが自分の責任である代わりに、いつもある程度の自由が手に入っていた。あの頃の私にはもう戻れないのだろうか。


妊娠して、とても嬉しかった。
自分一人の体じゃなくなることの喜びを目一杯感じることができた。まだ動きを感じられないお腹に不安を感じながらも、健診の度に姿を見せてくれるかわいい我が子にいつも涙が出そうになった。

それと同時に、確実に自分の体が自分でコントロールできなくなっていった。悪阻に悩んで検索魔になった。それでもどうすればいいかわからないほど気持ちが悪くてどうしようもなかった。ホルモンバランスが崩れたお陰で肌が荒れたけど、対処法もわからなかった。ふとしたことで不安の波が押し寄せてきて、夜にいつも泣いていた。これから自分に降りかかる痛みを想像して何度も怖くなった。
そんな一つ一つが、私に寂しさを運んできた。

なんてないものねだりなんだろう。
きっと妊娠していなかったら、妊娠して子どもがいる人をうらやんでしまっていたんだろうな。自分が妊娠したからといって自由にご飯や飲み会・旅行に行ける友達や家族をうらやましいと思うなんて。


いつも、自分がどの状況にあっても、自分にないものを想像して、それを持っている人を羨んで、勝手に寂しくなってしまうような人生を私は歩んでいくんだろうか。

つまらない。くだらない人生を歩もうとしているなあ。


反対に、今の自分にあるものを数えてみた。

第1に、家族がいる。元気な親がいて、優しい兄がいる。結婚してくれた旦那がいて、旦那の家族もとても良くしてくれる。
友達もたくさんいる。離れていても連絡をくれて、会いにきてくれる大事な親友がいる。
安心して過ごすことができる家がある。まだ引っ越したばかりで慣れない部分もあるけど、綺麗で二人暮らしをするのに丁度いい広さの家がある。
健康な体がある。ほどほどに運動もしてきたから基礎体力もあるし、不自由なところはない。
そして、そんな体だったからこそ妊娠して子どもを授かることができた。子どもも今のところ何の問題もなく成長してくれている。

何が不満だったんだ。
ないものねだりもいい加減にしたい。


他の人から見たら、私の人生も羨ましいと思ってもらえるものなのかもしれない。いつも誰かの人生と自分の人生を比較して悲しくなってしまうくらいなら、自分の過去と現在を比較して今が幸せならそれでいいんじゃないか。と、思えるくらいには少し強くなってきた。母は強し、の準備段階に入ったのだろうか。


冒頭でも話したように、きっと元の私にはもう戻れない。
身軽で自由な私はもういないけど、それと引き換えに得た幸せはあの頃の自分ではきっと得られなかった。
夫がいて子どもがいて、自分一人の自由な時間なんてこれから先あんまりないかもしれない。でもこの不自由を幸せだと思えたら、私はどんなことでも楽しんで生きていけそうな気がする。

お腹の子と一緒に。
未知で不自由で不安だけど幸せな人生が、私を待っている。