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ニューメキシコ州の古本屋 "Coas Books"

私がアメリカで大学生だったとき、
コアスという本屋に行くのが大好きでした。
ニューメキシコ州にある古いかわいい街並みのダウンタウンにある特別な古本屋。 
大学で文学のクラスのときはここで格安でよく本を購入したものです。

この本屋には児童書、フィクション、旅行記、などといった一般書だけでなく、ビンテージの高価な本や専門書、日本語を含む外国語で書かれた本もありました。

新書店では見つからない本もここに来れば見つかる。 
読まなくなった本はここに持ち込み、クレジットとして次回購入する本に使えるといったように本好きにはたまらないシステムです。 
多くのアメリカの古本店はこのシステムを使っています。

大学に使う本だけではなく、読書が好きな私はよくここに来て、
いろいろなペーパーバックの本を購入し、
長い時間をこの本屋で過ごしたものです。
古本の匂いを感じながらアメリカ語で書かれた本を読むのは、
極上の時間でした。

赤毛のアンの本もたくさんありました。

自分が読みたい本を探しているとき、この大きな古い本屋で自分で探すのは容易なことではありません。 
何度もこの本屋に足を運んでいると、1つのことに気づくようになりました。


この本屋ではアルバイトの人も含め、多くの人が働いていました。 
その中で、1人、中年女性がいました。
いつもピンクのシャツを着て、眼鏡をかけ、ちょっとウェービーで短めの髪をした女性。 
彼女は本を棚に戻しながら、いつも本を読んでいるのです。 
時には立ったまま、時にはスツールに腰かけて。
ここで働いている彼女は本当に本が好きなんだなということが
見ていて伝わってきました。

彼女に探している本を訊くと、すぐにその本がある場所に案内してくれました。 
パソコンなんて使いません。 
彼女はコアスの本たちを知り尽くしているのです。
他の人が探せない本も彼女なら見つけることができるのです。

彼女は同僚たちと無駄話もせず、いつも本を読んでいました。 
そんな彼女の姿を見るのも大好きでしたし、尊敬の念さえ抱いていました。
いつしか、コアスブックストアに来ると、彼女の姿を探すようになったのです。
彼女に探しあててもらって、読んだ本の数はかなりのものになります。

大学も卒業し、この町も離れ、10年が経ちました。 
10年後、再び、古い当時のままのダウンタウンを訪れ、コアスブックストアに立ち寄りました。
当時とまったく変わらない古書の匂い。 
棚も本のジャンル分けも変わってない。 
まるで時間が止まっていたかのようでした。
そして、もちろん、私が一番最初に探したのはわかりますか? 
そう、彼女です。 
大きめの眼鏡をかけたピンクの服のちょっとウェービーな短めの髪の中年女性。 

たくさんの本が並ぶ棚を数列過ぎたところに、いたんです、彼女が!
以前と同じようにスツールにちょっと腰かけて、本を読んでいました。
もちろん、ピンクの服を着て。 大きな眼鏡、ちょっとウェービーな短めの髪も。

探していた本もあったけど、それよりも会えたことの大興奮で、思わず話しかけてしまいました。

「私、10年前、大学生で、あなたにいろいろな本を探してもらってとても助けてもらったんです。
今回、あなたがいるかな?って思ってここに来たら、いらっしゃったのでうれしくて!」って言いました。

彼女は
「そうだったの? また来てくれてうれしいわ。 私はいつもここにいるわよ。今日はどんな本を探しているの?」と。

実は、「2冊、探している本があるの。 1冊目はTara French の IN THE WOODS。 もう一冊はKaren Slaughter の UNSEEN。」

彼女は
「Tara Frenchのその本は最近売れちゃったかも。。でもKaren Slaughterのその本はあるはずだわ。」
そしてそれぞれの本棚のところに行くと、彼女が言った通り、IN THE WOODS はなく、UNSEEN はあったのです。
流石、彼女は私が記憶していた通りの人でした。

このやりとりがどんなにうれしかったことか。 
そして、この時に探してもらった本はまだ手元に。

当時、彼女の見つけてもらってCOAS BOOKSで購入した本

この再会から5年が経ちました。
今年の秋にはまたこの町まで足を運びたいと思っています。
あのピンクの服を着た、大きめの眼鏡をかけた、ちょっとウェービーな短めの髪の女性に会えることを願って。
さあ、今度はどんな本を探してもらおうかな。

スツールに腰かけたピンクのシャツを着たあの店員この写真から見つけましたか?
この時も本を読んでいました。

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