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写真家の田中希美男です。 しばらく中断していた「Photo of the Day」をこ…

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写真家の田中希美男です。 しばらく中断していた「Photo of the Day」をここ note に"臨時引っ越し"しました。カメラやレンズ、そして写真のあれこれの話をします。 X (twitter):https://twitter.com/thisistanaka/

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(42)レンズ1本を完全解剖する・後編

「(41)レンズを解剖する・前編」からつづく  下の(図-A)も(図-B)も、前回すでに取り上げて説明をしたものだが、今回の解説を読んでもらう時に「どの部分を解剖しているのか」がわかりやすいように再度、ここに取り上げておく。  (図-A)は、レンズの解剖をおこなっている「M.ZUIKO DIGITAL ED 12~40mmF2.8 PRO」ズームレンズの外観と、各操作部などの名称を示している。  (図-B)は、9群14枚構成の12~40mmズームレンズのカットモデルである

    • (41)レンズ1本を完全解剖する・前編

       交換レンズの企画、設計から、そして研磨、組み立て、さまざまな検査を経て完成するまでの様子を順を追って、以下のよう3回にわたって解説をした。  ①レンズを設計する     ━━ 新型レンズの企画、設計、試作まで  ②レンズを研磨し加工する     ━━ レンズを研磨して加工、仕上げまで  ③レンズを組み立てる     ━━ レンズの組み立て、調整、完成まで  そこで、今回(前編)と次回(後編)の2回にわけて、レンズ組み立てとは逆ルートで、順を追いながら1本の製品レンズの「

      • (40)レンズの組み立て、調整、完成まで

          レンズの設計、試作、検証をほぼ終える頃になると、生産技術部門が中心となって設計部門や品質管理部門のメンバーも加わり、念入りに量産試作への話し合いがおこなわれる。もちろん、生産がスタートする前に光学ガラスレンズの準備や必要な機構部品などの仕入れ、その他の各種部品の製造とレンズ組み立て時に使用する特別な工具や調整検査機器の用意も始めなければならない。  そうして、ようやく工場のパイロットライン(仮の組み立て工程ライン)での量産試作が始まる。  タムロンでは球面レンズの研磨と

        • (39)レンズを研磨して加工、仕上げまで

           レンズの光学や機構などの設計ができあがると、その設計図面に沿って部品などを調達、レンズ組み立てがスタートする。いやその前に、レンズの組み立て製造にとってもっとも重要な工程である光学ガラスレンズの研磨、加工、調整をおこなわなければならない。 タムロンのレンズ研磨や組み立てのメイン工場は青森県に  なお前回「①レンズを設計する」でも述べたことだが、この「レンズができるまで」シリーズについては、交換レンズのトップメーカーでもあるタムロンに全面的に協力してもらっている。  タム

        (42)レンズ1本を完全解剖する・後編

          (38)新型レンズの企画、設計、試作まで

           というわけで、①レンズの企画と設計、②レンズの研磨と加工、③レンズの組み立て、のレンズ製造工程を短期シリーズ「レンズができるまで」として3回にわけて続けたい。  デジタルカメラが高画素化してくると、交換レンズはフィルム時代のレンズよりも高い性能が求められるようになった。描写性能だけでなく、AFや手ぶれ補正の性能アップのための複雑なメカニズムや電子部品も制御技術も、高性能化してきた。  優れたレンズ設計技術はもちろん、組み立て工場ではレンズを高精度に安定的に組み立てる調整技

          (38)新型レンズの企画、設計、試作まで

          (37)光学ガラスレンズの製造工場を見学する

           交換レンズには多種多様な「部品」が使用され、高い精度で組み上げられている。こうした交換レンズの部品の中で、もっとも重要かつ中心となるのが光学ガラスレンズ(硝材)であろう。  私たちの身の回りには多くのガラス製品があるが、写真用レンズなどに使用されるものが「光学ガラス」だ。光学的な機能を備えた透明度の高い均質なガラスで、通常一般のガラス材とは品質も性能も大きく異なる。その光学ガラスを加工、研磨して仕上げたものを「光学レンズ」とよんでいる。  光学ガラスレンズの種類には「屈

          (37)光学ガラスレンズの製造工場を見学する

          ■番外編■PENTAX FA Limitedレンズの話《後編》

           現在、ペンタックスのFA Limitedレンズは、旧型からモデルチェンジされた4本がラインナップされ販売中である  HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited  HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited  HD PENTAX-FA 31mmF1.8 AL  HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WR  しかし《前編》から話を続けているのは上記の4本の新型HD FA Limitedレンズについてではなく

          ■番外編■PENTAX FA Limitedレンズの話《後編》

          ■番外編■PENTAX FA Limitedレンズの話《前編》

           PENTAX一眼レフ用交換レンズの中に、独特のテイスト(レンズの味)を持った「Limited(リミテッド)」レンズがある。それには2つのシリーズラインがある。  ひとつはフルサイズ判カメラ対応の「FA Limited」シリーズで、4本の単焦点レンズがラインナップされている。もうひとつは、APS-C判カメラ用の「DA Limited」シリーズがあって、4本の単焦点レンズと1本のズームレンズがラインナップされている。なお「FA」とは「Full-frame Auto」でフルサイズ

          ■番外編■PENTAX FA Limitedレンズの話《前編》

          (36)ニコンのOPTIAを活用する ━━ レンズの味を決める

          OPTIAってなんだ?  解像力などの結像描写性能ではなく「レンズの味」つまり「ぼけ味」や「立体感、奥行き感」などの描写再現性能は、感覚的で情緒的な評価しかできなかった。定量化して客観的データにすることが難しかった。ところが、それらレンズ描写の「味」を定量測定して、検証ができる「OPTIA(オプティア)」と専用の画像シミュレーター(ソフトウエア)が開発された。と、ニコンが発表したのは10年ほど前のこと。ミラーレスデジタルカメラが広く普及する前の、まだデジタル一眼レフカメラが

          (36)ニコンのOPTIAを活用する ━━ レンズの味を決める

          (35)「ぼけ」の効果と働き ━━ レンズの味を決める

           前回(「ぼけ」の話・その1)では、「ぼけ」について私自身の考え方や感じ方を中心に、やや独断的に話を進めた。そこで今回は「ぼけ」の描写の様子や〝味〟について、様々な例を出しながら、できるだけ客観的で一般的な観点(になるように心がけて)で話を進めたい。  「ぼけ」の描写はレンズそのものの個性であり、レンズそれぞれの持ち味でもある。「悪いぼけ、美しくないぼけ」とされていても、「好きなぼけ、個性的なぼけ」として高く評価されることもある。とくに最近はそうした傾向が強くなってきている

          (35)「ぼけ」の効果と働き ━━ レンズの味を決める

          (34)「ぼけ」で大切なもの ━━ レンズの味を決める

           写真やレンズにおける「ぼけ」の話を2回にわけてする、つもりだけど、じつは私の力量不足のためもあって、その説明が難しくて困っている。さて、どのように話を進めていけばいいのか・・・。   というわけで、先の見通しが曖昧なままスタートする。  「ぼけ」については、その評価、捉え方、考え方、感じ方、好き嫌い、良い悪い、など受けとり方に多種多様で個人差もある。  そこで、ここで話を進めるにあたり、まずは勝手ながら私が「ぼけ」について考えていること、感じていることの話から始めて、次回

          (34)「ぼけ」で大切なもの ━━ レンズの味を決める

          (33)手ぶれ補正の種類と方式 ━━ 描写力を向上させる技術

           手ぶれ補正の話、前回のつづき。  レンズ内ぶれ補正の話を中心にしつつ、それ以外の方式の基本的な話も取り上げて解説していきたい。  写真撮影用のカメラやレンズに搭載されている手ぶれ補正の方式には大別すると以下の4種類になるだろう。  ①「レンズ内手ぶれ補正」 ━━ レンズに機構を内蔵  ②「ボディ内手ぶれ補正」 ━━ カメラボディに機構を内蔵  ③「同時シンクロ手ぶれ補正」 ━━ レンズ内とボディ内の機構を同時にシンクロ動作  ④「電子手ぶれ補正」 ━━ 画像処理による補

          (33)手ぶれ補正の種類と方式 ━━ 描写力を向上させる技術

          (32)手ぶれを防ぐ方法 ━━ 描写力を向上させる技術

           手ぶれ補正については、ここ『いいレンズってなんだ?』シリーズの仕様表の読み方編の中、「レンズ内手ぶれ補正の話 (16) 」として解説しているので、併せて読んでいただけるとハナシが早い(多少、内容が重複するところもあるけれど)。  今回は ≪ 前編 ≫ として「ぶれ」の現象とその種類についての基本的な話を、そして ≪ 後編 ≫ では「ぶれ補正の方式」などについての話に続けたい。  なお、手ぶれ補正の方式には、カメラ内(センサーシフト式)手ぶれ補正やレンズ内(光学シフト式)

          (32)手ぶれを防ぐ方法 ━━ 描写力を向上させる技術

          (31)コーティングの種類と役割 ━━ 描写力を向上させる技術

          レンズコーティングのおもな役目として、   ①反射の低減/透過率の向上   ②フレア/ゴーストの発生防止   ③カラーバランス/諧調描写の最適化   ④キズや汚れの防止(フッ素コーティング)   ⑤レンズ表面の酸化(ヤケ)防止  前回では、上記の一般的なレンズコーティングの役目を5つにまとめ、それぞれについて解説をした。  そこで今回は、レンズ工場でのコーティング処理工程の簡単な説明と、通常のレンズコーティングとは「別扱い」されている特殊コーティングについても取り上げてい

          (31)コーティングの種類と役割 ━━ 描写力を向上させる技術

          (30)レンズコーティングとは ━━ 描写力を向上させる技術

           レンズコーティングの役目や効果とはどのようなものなのか  レンズコーティングにはどんな種類があるのか  コーティングはどのようレンズと組み合わされているのか  コーティングでレンズはどこまで進化するのだろうか    今回と次回の2回でレンズコーティングの話をするけれど、その前に、皆さんもご存じだろうけど「光の性質、特性、現象」について(僭越ながら)ごくごく簡単に再確認しておきたい。  光は粒子性(光線)と波動性(光波)を併せ持ち「光の基本3法則」というのがある。①光は直進

          (30)レンズコーティングとは ━━ 描写力を向上させる技術

          (29)非球面レンズと特殊レンズ ━━ 描写力を向上させる技術

           前回の「レンズ性能を向上させる方法や技術・その4 」では、4種類の特殊光学ガラスレンズの中から①低分散ガラスと②高屈折レンズについて解説をした。  ① 低分散レンズ  ②高屈折レンズ  ③ 非球面レンズ  ④ 特殊加工レンズ  今回は前回のつづきで、③非球面レンズと④特殊加工レンズについて解説をしたい。 ますます進化する非球面レンズ  特殊光学レンズで、ぜひ注目してほしいのが非球面レンズである。近年、低分散系レンズと並んで非球面レンズは高性能な撮影レンズには欠かすこ

          (29)非球面レンズと特殊レンズ ━━ 描写力を向上させる技術