見出し画像

それを「共感」と言い切れるか?──Think Out!010レポート

普段会わないような人と、普段考えないような問いについて対話をしながら考える「頭のワークアウト Think Out!」。2020年5月24日(日)に行われた第10回(テーマ:共感)のレポートを、参加者のあおやぎさんが執筆くださいました! 対話しながら思考が生き生きと変化する様子が丁寧に描かれたレポートです。どうぞお楽しみください。(事務局マツイシ)

はじめまして! 今回は初参加のあおやぎがレポートをお送りします。

「共感」というテーマ、非常に興味深く、問いのとまらない時間でした。

■前回につづくオンライン開催

前回の開催につづき、今回もオンラインでの開催です。初の試みだそうですが、参加者がアイコンを自由に移動させることができ、近くのアイコンの人は大きく映って声が大きく聞こえる、離れると小さく映って小さく聞こえる、というおもしろいツールを使用されていました。

この「対面時における人と人との距離感」を模したようなしかけ、個人的には楽しく使わせていただき、オンラインとはいえ初対面の方とも、話しやすくなった気がします。

■問いを出しあう

2グループに分かれて、「共感」にまつわる問いを出しあいました。

あおやぎのいたグループで挙がった問いは、このようなかんじ。

人はどのくらいの共感で満足できるのか?(たとえば「共通点を見出す」でも満足できるだろうか)
シンパシーとエンパシーのちがいは?
つい「わかる」と言ってしまうが、「共感」は同じ体験をしていなくてもできるのか?

私からは「共感が暴力性を持たないようにするには?」という問いを出しました。共感という形を取りつつ相手から言葉を奪い、自分の思考の枠組みに引き寄せようとする態度を見かけるとき、そこに不安を感じるためです。

■新たな問いを生む Think Out! 前半

問いを出しあったグループで、対話を深めていきます。お互いの出した問いの意味を確認したり、気になった点について考えを出し合うことで、不思議と「新たな問い」が生まれました。

共感は本当に「求められる」ものだろうか? 生きるために、むしろ自分が「したい」もの、「求めている」ものなのではないか?
「共感している」と言うとき、100%の共感をしている保証はあるのか?

グループでの対話をしていて感じたことは、共通の言葉を使っていても切り口は多様だということです。

あくまで私が解釈した範囲での紹介ですが、お一人おひとり、注目するポイントが異なるのがよく感じられました。

「共感はしようと思ってするものか、あるいはしてしまうものなのか」というように、”意思”に関連して考える方もいれば、共感しないものに対して”反発している”と見られかねないことの不本意さを例に挙げて、「共感」という言葉に抱かれているイメージに疑問を投げかける方もいたのが印象的です。

■理解と共感はちがうのか? Think Out! 後半

休憩をはさんで、グループ変えをしました。

前のグループで出た話を共有して深掘りを提案してもよし、新しいグループでまた問い直してもよし。

私が参加した後半グループでは、「共感」の様々な見方をだしあって、それ単体というより、他の言葉と比較して考えてみる時間になりました。

前のグループで話したのだが、共感は「承認」を示すのではないか。
共感は「それをやっている自分」が想像できるかどうかなのではないか。
マナー的な共感というものがありそうだが、今で言うと「マスクをつける」もそうなのではないか。

どの考えも面白く、それまで気軽に使ってきていた共感という言葉が、むくむくと立体的になっていく感覚です。

私は実体験に照らし合わせて、「理解できなくても共感できた気になってしまうし、共感できなくても理解はできるということもある」と話してみました。

他の方の言葉で自分にとって発見になったのは、理解と共感についてそのちがいを、”要する時間”で考える視点です。

「理解」には時間がかかる。「共感」はその時の感情、センセーションによって、すぐに起こることがある。感情は動きやすいものだから。

たしかに、どんな話を聴くときも、その時の自分の心理状態や関心事に大きく左右されている気がします。対して、その人のことを本当に理解したと言えるまでには、相手の経験や、その話題にまつわる知識など、一朝一夕では得られない情報のようなものが必要です。

また、目に見えるもの、耳で聞こえるそういった情報がそろったからと言って、果たして本当に「理解」と言えるのか。ここも疑問だと思います。

■チェックアウト・感想

最後は1つの場に戻って、チェックアウトをしました。以下、私の感想を簡単にまとめます。

まず、あっという間の2時間半。まだまだ問いが生まれそうで、あくまでテーマについて深く考えるきっかけのような時間。そう感じました。

気軽に使う言葉でも、とらえ方は人それぞれ。そこに触れてみて、深く掘っていくことで、今まで考えもしなかった見え方が現れます。

”哲学対話”というと、なにやら自分の意見をしっかり持っていないといけないように感じる方もいるかもしれません。

でも今回参加してみて一番感じたのは、「自分を出そうとしすぎなくても大丈夫」ということでした。

他の方が言ったことを聞いて、自然と問いが生まれたり、相対的に自分の考えが見えてきたりするからです。その相互作用が起きることで、場に現れる問いの精度も上がっていったように思います。

考えることは楽しい。そして、対話することは楽しい。そんな気づきに満ちた場を体験しました。

■最後に

初参加の哲学対話「Think Out!」、月に1回と言わず週に1回でも参加したいような、静かな刺激に満ちた空間でした。

TOI事務局の皆さま、参加者の皆さま、ご一緒できて嬉しく思っています。ありがとうございました!

今後の開催も楽しみにしています。

あおやぎさんのレポート、いかがでしたでしょうか。ご興味持たれた方はぜひ、次回、6月28日(日)のThink Out!(テーマ:性別)にお越しください。運営メンバー一同、お待ちしております。詳細・お申し込みはこちらから。

よろしければサポートいただけますと幸いです。いただいたサポートは哲学対話を広げるために使わせていただきます。