認知症介護日記62 「元気でね」
9月27日水曜日の午後6時すぎ、僕と父そして祖母の3人は父の車で街に出かけた。
今回街に出た理由は2つ、1つ目は入居前に髪をすっきりさせるために市中心部の駅前にあるチェーンの理容店へいくこと。2つ目は、その理容店から車で1分のいつもの喫茶店で入居前最後の夕食&オーナー夫婦との会話を楽しむというものであった。
祖母が理容店に行っている間、僕は一足先に喫茶店に向かった。
喫茶店では、オーナー夫婦とここ1年半の同居生活(介護)で起きた思い出話を30分ほどした後、父と祖母が合流した。
入居する前最後の喫茶店で祖母が頼んだオーダーはカレーライス。
喫茶店のママは祖母が注文したカレーの他に、山口の郷土料理である"けんちょう”を振る舞ってくれた。
祖母とオーナー夫婦の友好関係は60年以上だが、ここ1年前ぐらいから会話はほぼなった。昔の祖母はおしゃべりで、人と人の会話に割り込むタイプだったのに、認知症になってからは会話に割り込んだり、自ら会話を始めることがなくなった。今考えると、きっと僕とオーナー夫婦の会話のペースが祖母にとっては速かったのだろう。
結局喫茶店には1時間ほど居た。
本当はもうちょっとゆっくりしたかった。しかし半年以上前ぐらいから祖母は僕と父が喫茶店でゆっくりしたいと思ってもソワソワし、子供のような"帰りたいアピール”をするようになった。今回もその傾向が見えたので仕方なく会計を済ませることになったのだ。
「〇〇ちゃん、元気でね。」
喫茶店のママが祖母に対してこういった。
いつもはいつもありがとう、と言うママだが、次回祖母がいつこの喫茶店を訪れるのは何日後だろう?今回で60年以上、月1回は訪れていた喫茶店だが次回はいつ来れるか定かではない事情を思いながらママの言葉を聞くと、普通なら単なるお別れの言葉だが、いつもと比にならないほどの深い言葉となった。
祖母の入居日まで、今日を合わせてあと4日。
いつもなら今日父は休みで明日は勤務日だが、今日は講習に参加していたらしく、明日が今日分の振替休日らしい。明日は僕と父が気軽に祖母を食事に連れて行けるもう一つのお気に入りの店で食事をする予定だ。
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