認知症介護日記45 「花火大会」

7月22日の晩、仕事を早く切り上げた父と僕、そして祖母の3人は地元で行われる花火大会へ出発した。

正直なところ僕は花火大会にあまり興味がない。小さい頃は大きな花火が見れて楽しいイベントだったが、いつの日か花火大会に参列するのに行きも帰りも人や車で大渋滞するストレスが行きたいという気持ちを上回ったのだ。

でも今回はそのストレスよりも「祖母を花火大会に連れていきたい」という気持ちが上回った。理由は「今回の花火大会が祖母にとっては最後の花火大会になるかも」と思ったからである。

祖母がどれほど長生きするかはわからないが、10月から施設への入居を考えているので、入居を開始したら今までのように気軽に3人で出かけることは厳しくなるだろう。もしかしたら来年は施設のメンバーで花火大会に行けるかもしれないが、その頃の祖母は夜空に舞うものが花火だと認識できないかもしれない。いろんな気持ちを胸に僕と父は祖母と花火を見ることにした。

肝心の花火大会だが、遠い親戚が進めていた穴場はすでに大量の人、結局父の車で発射場所の港から程近い市街地をぐるぐる回り、車から花火を見ることにした。
車内では父が「ほら、ばあちゃん花火が見えるぞ」とアピールするが、祖母には花火の綺麗さを見るほどの余裕がなかったらしい。「綺麗ね」と言いながら、花火が見える方角とは違うところを見ているし、終始「ここはどこか?」と言っていた。

祖母に花火を見せると喜んでもらえるという僕と父の期待は外れたのかもしれない。これが最後の3人で見る花火大会だと思うと悲しい気持ちになるが仕方ない。僕と父はできることをしたと考えるしかないのである。


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