普通のOLがフォロワー１万人になった

私はどこにでもいるような、いたって普通のOLだ。
都内の私大を卒業後、中堅企業の総合職で代理店営業をやっている。
ありふれたOLで多くの人の興味を惹き付けるような美貌やハプニング、お金持ちでもなんでもない。そんな私がTwitterのフォロワーが１万人を超えた。

私は元々、言葉の領域、または広告の領域で働きたかった。
でも、その夢は挑戦もせずにあっけなく散った。
社会人になって全く関係ない仕事に就きながら、日々絶望を味わっていた。
あのとき、もっと挑戦すればよかった、世界を知らなすぎた、そんな後悔がどんどん身体と心にずっしりのしかかってきた。
そんな想いを紛らわすのがTwitterだ。気持ちをつぶやくと、それが誰かの心に届いていく。いいねやフォロワーの数は、誰かの心を揺さぶった証しでもあり、何者にもなれなかった私を肯定してくれる数でもあるのだ。

社会人になって、何者にもなれなかったことがずっとコンプレックスだった。
私は困難な家庭に生まれ育ち、学生の頃に家出したきり帰っていない。学生時代は人よりも勉強をしたし、課外活動も頑張った。それは、何か他人より優れていないと自分が認められていない気がしたからだ。小学生の頃から、不登校ぎみで協調性がなく、愛想もない子どもで、ほめられることはあまりなかった。それでも塾の模試で成績が上位になったり、偏差値が60を超えたときは、塾の先生や両親にとても褒められた。だから、勉強をしたし、努力をしないとダメだと思っていた。よく周りからは、がんばりやさんだね、とポジティブに言われたけれど、自分はがんばらないと認められない人間だとネガティブに捉えていたからだ。頑張らなくても愛されたかった、そう常々思っていた。だから素直に褒め言葉として受け取れなかった。私には頑張る以外の選択肢がなかっただけだ。

指定校推薦で入学した大学では、ちゃらついたサークルや飲み会にも行かず、学生支援団体の代表をやるなど、真面目な大学生時代を過ごしていた。しかし、大学3年生の頃、大切な人に裏切られた出来事で心が病み、そのまま就活期に入り、色々失敗し、有名企業にも華やかな職種にもつくことが出来なかった。純粋で真面目だったからこそ、信頼してる人に裏切られる代償はあまりにもでかかった。

社会人になると、家族と疎遠になったこと、信頼できる人からの裏切り、大学卒業後に肩書きを失ったことで、もともと低かった自己肯定感はさらに底に落ちていった。勝手に周囲に期待されていた人生だったからこそ、プライドだけが高くなっていた。なんだか友達に会う気持ちも起きず、土日は部屋にずっと閉じこもる日々。

このままじゃやばいな。死ぬかも。

そうだ、何か得意なことをしてみよう。

そう思って始めたのがTwitterだった。
昔から、言葉だけは良く褒められた。そして何より言葉を届けることがずっと好きだった。そんな私にTwitterは性に合っていた。

いいねが増える度、フォローが増える度に、自分が認められてる気がして嬉しかった。そして、悩んだり苦しんだりしているのは私だけじゃないんだなって、みんなのいいねに救われた。時には、考えるOLさんに救われてます、なんて言われることもあった。

どちらかというと、不幸が多い人生のような気がしたけど、Twitterを始めてからそんな人生も少しずつ肯定できるようになった。

何者にもなれなかった自分だからこそ、できることもあるんだなと。
そんな大きな気付きを１つ得ることかできた。

社会人の端くれとして、世の中についてちっぽけだけどわかったことがある。
それは、仕事の価値とは、誰かの役に立つことが本質であり、自分のためにあるわけではないということ。だから、仕事の価値は自分が楽しいとか生き生きしてるとかやりがいがあるとか、そんなのはどうでもいいってことだ。推し量るべきは、誰かの役にたったかどうかたけだ。そこに年収も職種も会社の知名度も関係ない。私は憧れの仕事に就くことはできなかったし、楽しくもないが、誰かの役に立てている。それだけで百点満点の花丸じゃないか。

そして今。
私は仕事にはできなかったけど、こうしてTwitterで、夢だった「自分の言葉で誰かの心を揺さぶること」が小さくだけど、できている。

もし、心のなかで仕事が楽しくなくてこのままでいいのかな、何者にもなれない自分が悔しい、と悩んでいる人がいるならば、仕事以外のフィールドで自分が得意なこと、それを評価してもらえる環境を探して飛び込んでみるのも、いいかもしれない。

ただのOLが、１万人にフォローされる。そんなこともあるかもしれないから。

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