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英文法の小径

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毎回、一つの文法項目について、意の赴くままに説明を試みた散文を掲載中。
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2023年3月の記事一覧

【英文法の小径】現在形〈時制〉その三

Ann takes piano lessons.現在とは、過去から未来へと向かう時の流れのなかの今、この瞬間のことであるけれど、英語の動詞の〈現在形〉が表すのは通常、今していることではない。そうではなくて、いつもすること、決まった時に繰り返し行うことを表す。 だから、'takes' という〈現在形〉を使った冒頭の文が言おうとしているのは、アンが例えば週に一度、ピアノを習っているということ。彼女の習い事、習慣について述べているのです。今、つまりこの話をしているときに彼女がレッ

【英文法の小径】現在形〈時制〉その四

Water boils at 100 degrees celsius.これは、今、目の前でキッチンのガスコンロにのっているケトルの水が沸騰して、温度が100度に達している様子を描写している文なのだろうか? もちろん、そうではなくて、英語の動詞の〈現在形〉は、常に起こること、繰り返し起こることを表すのだから、「水は摂氏100度で沸騰する」=「水の沸点は100度である」ということ、つまり、水という液体の性質を述べているのです。 これなどは、現在はもちろん、過去においても、おそ

【英文法の小径】現在形〈時制〉その五

We know each other.二人はいつ、知り合いになったのだろう。'We' につづく 'know' は〈現在形〉だけれども、もちろん、今ではない。過去のあるときに知り合って、そのとき以来、知り合いなのだ。だから、今も、お互いに相手のことを「知っている」。これが冒頭の文の言っていること。そもそも know は、知っているようになるという過程ではなく、その結果「知っている」という意味。 know のように、一定期間、変わらずに続く状態を表す動詞を、英文法では行為や出来

【英文法の小径】現在形〈時制〉その六

I (can) see the moon.夜空に浮かぶ月を見て一言。まさに今、つまり話し手が話をしている時点で、月が見えている。〈現在進行形〉を用いなくていいのだろうか。 see という動詞は視覚の意味で用いるとき、対象に目を向けるという動作ではなく、対象が目に入ってくるという状態を表します。つまり、「見る」ではなく「見える」ということ。 そして、この意味の see のような動詞は、〈現在形〉のままで今の状態を表すことができるのです。動作を表す動詞とはちがい、今、生じてい

【英文法の小径】現在形〈時制〉その七

1-a. My back aches. 1-b. My back is aching.今の背中の痛みを訴えるには、どちらの形を使えばいいのだろう。今、つまり話し手が話をしている時点で起きていることは〈現在進行形〉を用いて表すのではなかったか。 実は、この場合は〈現在形〉でもいいのです。ポイントは ache という動詞の性質にあります。痛みのような感覚は、やがておさまることはあるにしても、しばらくは変わらずにつづく。その意味で、ache は状態を表す動詞。(1-a) のように

【英文法の小径】現在進行形〈時制〉その一

I’m reading ‘War and Peace’.時制で用いる形の一つに〈現在進行形〉がある。[am/is/are + -ing]という形は、まさに「現在=今、進行中=継続中」のことを表すのだから、この名前は、実に言い得て妙だ。 それじゃ、この文の話し手は、今、つまりこの話をしている時点で「戦争と平和」を読んでいなければならないのだろうか。 そんなことはないのです。これが、カフェで友人と話をしているときの発言でも少しもかまいません。例えば、1ヶ月前に読み始めて、今の

【英文法の小径】現在進行形〈時制〉その二

This week I’m not eating lunch.文の主語 'I' につづく 'am … eating' という形は、〈現在進行形〉。その名の通り、現在=今、つまり話をしている時点で、進行=継続していることを表します。 しかし、冒頭の文は少し様子がちがうようです。'this week' とあって、これは、今を含む限られた期間を指します。月曜日から毎日、もちろん今日も、そしておそらく明日も、ランチ抜き。といっても、いつまでもつづくわけではなく、あくまでも一時的なこ

【英文法の小径】現在進行形〈時制〉その三

Someone is knocking on the door.‘is knocking’ は [am/is/are + -ing]の形、すなわち〈現在進行形〉である。現在=今、「進行中」のことを表すとされるけれど、この文もそうなのだろうか。 動作には時間のかかるものもあれば、’knock’ のように、ほとんど時間のかからないものもある。一定の時間を要する動作なら、それが「進行中=継続している」とは言えるけれど、瞬間的な動作の場合はどうだろう。 瞬間的な動作を表す動詞の〈

【英文法の小径】現在進行形〈時制〉その四

It’s getting warmer.例えば、春先の外気の描写。こういうとき日本語では「暖かくなってきた」と「た」を使うけれども、冒頭の文は ’is getting’ と〈現在進行形〉だ。 一週間ぐらい前から暖かくなり始め、だんだんと暖かくなってきて、今もその途中で、すっかり春らしい暖かさになるのはこの先のことだろう。 〈現在進行形〉は、すでに始まったことが今もつづいている=まだ終わっていないということを表すのだから、冒頭の文ではやはり〈現在進行形〉がふさわしい。このよ