続き
それからというものの、先輩は仕事をやめてしまった。先輩にとって彼女さんがどれだけ大切なものだったかを私は知りもしなかった。
とある日私はまた持病の関係で病院に行くと先輩がいた。
先輩!と声をかけようとしたが私には勇気がなかった。
しかし先輩が私に気づき、
『あ、君!』
『先輩!』
『もう会社辞めたし先輩やめていいんだよ』
『〇〇さん』
『どうしているの?』
『それは私のセリフです〇〇さん。私体弱くて毎月病院に通ってるんです。』
『あぁそうだったの?あ、もしかして…』
『そうです。私知っているんです』
『そっか。知ってたんだ。ごめんねぇ。僕あれから心の穴がぽっかり空いてしまって、どうしたらいいか分からなくてとりあえず仕事やめて実家に帰って休んでいるの。』
『そうだったんですね。私あの時先輩を頼ってばかりで今思うと申し訳なくて…』
『だから!先輩やめて笑』
『あ、そうでした。ところでここで何を?』
『あぁ彼女ちゃんが亡くなってからここ来たら彼女ちゃんに会える気がして何回も来ているんだ』
『彼女ちゃんに会えました?』
『会えないから今日も来たの。医者にはさ迷惑がられてるかもしれないけど気持ちの整理着くまではってね。長いよねぇ俺。ごめんそろそろ帰るわ』
『ま、、待ってください』
『え?』
『〇〇さん、お昼食べに行きませんか。私お腹空いちゃいました』
『俺実家遠いし帰らないと』
『グー』
『あ、、、』
『行きましょ行きましょ。私の行きつけあるんで』
『俺の方が先輩なんだから奢ってやるよ』
『いいんですかぁ。先輩。ありがとうございます。ゴチになります。』
『早すぎる君は』
『えへへ』
『先輩って好きな食べ物あるんですか』
『うーん、彼女ちゃんがねオムライス好きでよく食べてたなぁ。』
『オムライス!一緒ですね!今から行くとこもオムライスのお店です』
『もしかして喫茶店の?』
『はい。そうです。知ってます?』
『彼女ちゃんがよく連れて行ってくれたお店なの。最後に行った外食もそこだったかなぁ。彼女ちゃんがね、美味しそうにオムライス食べるもんだから最後の外泊で連れて行ったの。嬉しそうだったなぁ。彼女ちゃん。俺彼女ちゃんがご飯食べているところ見るだけで幸せだった。』
『そんなに彼女さん好きだったんですね。』
『あ、つい語ってしまった。』
『今なら私に全て語ってください。私全部受け止めるので』
『俺ね、会社で失敗ばかりしてさよく上司に怒られてたのよ。でもその上司いつも優しくてさ。その上司はもうやめちゃったんだけど辞める前に俺に仕事も大事だけど彼女も作れよって言ってくれて、上司は奥さん早いうちに亡くしちゃって俺のリカバリーっていうの。国語苦手俺。生きがいだったみたいで』
『前の私を先輩がしてくれたことみたいな感じですかね?』
『あ、それ。そんな上司に憧れてて。だから君が可愛くて仕方がなかった。ま、それは置いといて。上司といつだったかな。飲み会言ったの。そこで出会ったのが今の彼女ちゃん。』
『そうだったんですね。』
『苗字が違ったから気にしていなかったんだけど彼女ちゃん、上司のこどもだったみたいなの。上司は奥さん亡くしてこどもを頑張って育ててはみたものの子育て下手くそすぎて奥さんの母親から追い出されて1人になっちゃったみたいでさ。相当追い詰められていたみたいで、その母親もすごく毒親みたいで子どもを虐待するんだよ。だから早く結婚してほしくて上司が俺に差し出したみたい。俺はそれを上司から知って彼女ちゃんを助けてやりたくなって、でもいつの日か彼女ちゃんが僕のこと好きって言い出してそしたら俺急に泣き出しちゃったみたいで、彼女ちゃんのその一言がとてつもなく重く感じたの。俺彼女ちゃん支えなきゃって。彼女ちゃんとそこから1年くらいかな?一緒に暮らしてたんだけど、また毒親がやってきてさ彼女ちゃんに色々手を出し始めて彼女ちゃん倒れちゃって病院に行ったらもう長くはないって言われて、俺どうしたらいいか分からなくてその毒親の事は警察に話してひとまず安心して。』
うなずく
『俺もう仕事やめようとした。そしたらね彼女ちゃん、私のためなら仕事続けて、私はこういう未来だったんだからもういいよって。今でも忘れられない言葉だよ。いい子だよね。俺はそんなこと言えない。それから仕事続けながら彼女ちゃんと一緒にいたの。気づいていたかもしれないけど彼女ちゃん入院してたの。』
『私が通院の際見ちゃいましたすいません。』
『いいのいいの。彼女ちゃん余命短い中で毎日毎日生きてくれたんだ。一生懸命。』
『もしかして私が仕事ミスしちゃった日が最後の外泊だったんですか。』
『うん…そうだね、』
『知ってたら私、、、じゃあオムライスもお昼抜けた時間に行ったってことですか。』
『もう終わったこと。気にしないで』
『先輩、、、私ただただ最低な人間じゃないですか。』
『だから終わったこと。あの日仕事に行った俺も悪い。仕事優先した俺が悪い。彼女ちゃんあの日倒れたんだそのまま行っちゃったんだ。俺本当の最期しか居られなかった』
『ごめんなさい。』
『だからぁ。でも俺だったら君みたいに自分責めてたかも。彼女ちゃん最期に彼氏になってくれてありがとうって言ってくれたんだ。俺出会えてよかった。彼女ちゃんと』
『先輩、全部吐き出せました?今私先輩の後ろに女の人が見えました。すごくすごくニコニコした女の人が』
『え、ほんと?』
『はい。先輩これでもう病院に来なくて大丈夫じゃないですか。あ、先輩!私先輩のことが好きなんです。先輩のこと全部全部受け止めました。先輩を支えていきたいです。』
『急展開すぎてよく分からない。』
『先輩、私と付き合ってください。』
『え?え?』
『だからぁ』
『俺、ちゃんと生きるよ。だからもうしばらく回答は待って。俺人間になって戻ってくるから。それまでは俺頑張る。』
『先輩かっこいい…』
『ってかいつの間にか先輩に戻ってるし』
『話の流れ的に先輩の方がいいかと』
『まぁたしかに笑
じゃあまたねオムライス美味しかったし美味しそうに食べてる君がなんか好きになれたかも。』
『〇〇さん、、、』
『お金これ出してね。』
『は、は、はい、。ありがとうございました。』
『元気でいろよ。』
『はい!』
その後先輩と〇〇は一緒に暮らしポンコツ2人って感じで家事も育児も失敗ばかりの日々であったが毎日が楽しそうであった。お茶をこぼし服を汚したり卵を焦がしたりこどものお迎え忘れたり。ただただ2人の日々に幸がありますように。
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