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球場の星—県立川口高校野球部のこと

桃胡雪(みるくゆき)

「公立校でも甲子園に行けるんだ！」、

というような希望を抱き、埼玉県立川口高等学校に入学した生徒がいた—という話を、テレ玉の「高校野球ダイジェスト2021」という番組で耳にした。

川口高校はこの夏、全国高等学校野球選手権埼玉大会で、準決勝まで進み、私立昌平に４- ７で敗れたのだった。

高校野球関連のサイトを眺めていると、川口高校に対し「県立の星！」なんてコメントを残している方もいらっしゃった。他にも「限られた環境の中、よく頑張った」的なコメントがあったり、川口高校野球部は県立高出身の方々の胸を、めいっぱい熱くしてくれたのだった。

上記のツイートの引用の通り、その中の一人に私も含まれている。と言っても私は県外、北海道の道立高校の出身者だけれども。

北海道はもともと公立人気の異様に高い土地だったので(少なくとも私の頃、私の周りでは)、私の「体感」と埼玉育ちの方の「体感」はもしかすると少し違うのかも知れない。

ただ「私立」と「公立」の違いというものは、大学への進学を考える時期になると、否応なしに目の当たりにさせられる。

先に断っておこう、私はけして「公立校に進む人にはお金が無い」と言いたいわけでは無い。

しかし、私立の方がお金がかかることは確かだ。

ちなみに「私立はお金がかかるという考え方って、高校野球に関しても同じかな？」と念の為に調べてみて、こちらの記事を参考にさせていただいた。

実際に強豪野球部のある高校にいらしたという方が書いた記事なので、これが「現場の実情」なのだろうと思う。

お金に関してだけでは無い、練習する環境だって、グラウンドの使用についてとかそういうことに関しても、私立と公立で差が出てきてしまうらしい。これは私の相互フォロワーさんも仰っていたことで、高校時代は剣道部を退部からの美術部、という所属であった私には、盲点というか「そうだったんだ！そういう環境面もあったのか！」と驚かされた点でもあった。

私立は私立で、ある程度スポーツに打ち込める分、公立(しかも文化部)出身の私には想像もつかない程の努力が必要だろうし、なんなら全国から集まってきた選りすぐりの選手たちの中で活躍することの難しさといったら、想像しただけでプレッシャーが強すぎる。その表れなのか、試合の後にインタビューを受ける主将たちは皆、信じられないくらい大人っぽい。こんなにしっかりしているのに高校生？と、本当に驚かされる。否、ぶっちゃけ公立の主将も大人っぽいので、これはもはやスポーツというものの成す力なのだろうか。

…うまく話がまとまらなくなってきたけれど、私立と公立、どちらが恵まれているとかそういうことではないのは確かだ。どちらにも大変さはつきもので、その分どちらにも良さはあるのだ—そこまでは、私にも想像が叶う。

そういう中で結局は「自分がどこにいたか」が、心の琴線をどういった塩梅に、心のどの辺りに張るのかを変えてくるのだと思う。

たとえば練習に制限のある公立校が、私立の強豪校の中で準決勝まで登り詰めたという事実は、やはり公立出身者には「響く」ところであろう。

私なんかはどうしても、進学とかに金銭問題で自由が利かなかった自分と重ねてしまう。そういった制限の中で私は、好きに進学先を決められる友人たちが心から羨ましかった。私は勉学を怠った愚か者なので(うんと頑張れば特待で入れた学校もあったかも知れないのに)、頑張っている球児の皆さんとは違いすぎる。違いすぎるからこそ、今になって高校野球を見、制限の中でも見事に準決勝まで進んだ川口高校野球部が、とても眩しく、輝いて見えるのだ。

やはり彼らは星だ、見ている大人にもその輝きの尊さを教えてくれる、清らかに明るい星なのだ。

こんなに高校野球を追ったのは、私にとって、今年が初めてだった。

それこそ高校時代は、運動部の男子にちょこちょこ意地悪い人がいたのもあって、(自分も剣道部にいたものの)「運動部なんて糞くらえ」くらいに思っていた部分も正直ある。

けれど、なんやかんや自分の母校が北海道の強豪・私立北照に負かされたと聞くと、ちょっと悔しかった。北照なら仕方ないよなあと思いつつ、でもやっぱり、甲子園が難しくとも、南北海道大会でいいところまで進んでいる母校を見てみたい気持ちはある。

(ちなみに南北海道代表は北海高校になった様ですね、おめでとうございます。私がほんのわずかに通っていたのが系列の北海学園大学の二部なので、なんだか嬉しい。)

大人になると、いろんな—たとえ過去に対してだって、見方が変わるものなのだなと、つくづくそう感じた。

さて、今の私にもさまざまな制限がある。それでも「やらねば」、そんな風に思う。川口高校野球部がこれだけのことを成し遂げてくれたのだ、大人も頑張らねば恥ずかしい。彼らがのびのび練習できる様に、大人がより良い「世の中」を創りあげていかねばならないのだから、大人がここで挫けてはいられない。心から、そう思う。

ありがとう、川口高校野球部。私も頑張るね。


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