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個性と共感

ブログマガジン「大人のための寺子屋」では、僧侶の神崎修生が、仕事や生活に役立つ思想や教養についてご紹介していきます。

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◉個性と共感

養老孟司さんの著書『バカの壁』と『自分の壁』を読みました。養老さんの個性に関する捉え方が興味深かったので、感じたことを書いてみたいと思います。

まず個性とは、自然と身についているものだと、養老さんは捉えているそうです。

個性は、別に「発揮せよ」と言われなくても自然と身についているものなのです。周囲がお膳立てをして発揮させたり、伸ばしたりするたぐいのものではありません。むしろ周囲が押さえつけにかかっても、それでもその人に残っているものこそが個性なのです。
(『自分の壁』/養老孟司)
個性というのはどこにあるか。それは、初めから私にも皆さんにもあるものなのです。なぜなら、私の皮膚を切り取ってあなたに植えたって絶対にくっつきません。…皮膚ひとつとってもこんな具合です。
すなわち、個性なんていうのは初めから与えられているものであって、それ以上のものでもなければ、それ以下のものでもない。産みの親とだって、それだけ違うのに、何で安心して、違う人間に決まっていると言えないのか。
(『バカの壁』/養老孟司)

このように個性とは、私たちに最初から与えられているものであり、自然と身についているものだと言います。

僕自身、個性とは自然と身についているものだという養老さんの言葉に触れた時に、とても納得した感覚がありました。皆さんはどう思われますか?

何の因果か、僕はこのようにブログを書いたり、また僧侶の立場で人前でお話させていただく機会もあるものですから、「自分の特徴って何だろう?」と考えたり、「自分の特徴がなるべく活きることをやろう」と考える時もあります。

ただ、自分の個性について考えることはありますが、それを無理に伸ばそうとか、そんな感じで考えたことはありませんでした。個性っておそらく、遺伝とか育ってきた環境によって、勝手に育まれてきたものじゃないかと思っていたからかもしれません。

だから、自分の個性に合ったことは何かなと考えることはあるけれども、個性的になろうとか、そんな感じでは考えたことがなかったんですね。ですから、養老さんの言葉に納得した感覚があったんだと思います。

そして思ったのは、個性が大事だよと人から言われて、無理して個性や特徴を出さないといけない方がいるとしたら、その状況に苦しさを感じるんじゃないかと思いました。そしてそういう方は、個性とは自然と身についているものだという言葉を聞くと、楽になるんじゃないかと思ったんですね。

自分の個性とか特徴と合ったことをやれている方は、そんなに苦しくないかもしれないですが、全然自分が得意ではないことや、苦手な分野で、個性とか特徴を伸ばしたり、発揮することを求められていたとしたら、それは結構しんどいんじゃないかなって。僕だったらその状況って、結構しんどいな、苦しいなと感じてしまうと思います。

そんな方がいるかどうかは分かりませんが、もし自分がその状況だったら苦しいなと思ってしまいました。ですから、自分がもしそんな状況にいたら、この言葉に結構救われるだろうなと思いました。

また別の観点で、個性が違う人の集まりをいかにまとめていくのかという問題もあると思います。

もともと人ってそれぞれ違うじゃないかと、そういう認識が僕の中ではあります。同じ親と環境で育った兄弟姉妹でも、子どもの時から全く違います。同じわけがない。

その同じわけがない人の集まりを、いかにまとめていくのか。これもかなり難しいことですよね。それぞれが自由勝手気ままにやると、収拾がつかなくなります。ですから、お互いが違うんだという前提で、共通点や共感できるところを探したり、合わせようとすることも大事だと思うんですね。

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