【感想文#4】遅効薬物こと『ワールドトリガー』
ワートリの面白さでこの世を治めたい。のでよく見かけるワートリディスにアンサーしていきます。
前提知識
異世界からの侵略者である「近界民」から市民を守り戦う防衛組織「ボーダー」に所属する人たちが主人公です。
近界民もボーダー隊員も、「トリガー」という道具(、あるいはテクノロジー)を使用して戦闘します。
トリガーを起動するとどうなるかというと、実体、つまり使用者の肉体に代わり「トリオン体」が現れます。トリオン体は「トリオン」と呼ばれる、全人類が持つ生命エネルギーで生成されます。
トリオン体でいる時は、例えば足を切られても血は流れないし痛みも感じないため、怪我などのダメージを受けずに戦闘できるんですけど、胸か首をやられるorトリオン量がゼロになるとトリオン体が破壊されてしまいます。
トリオン体が破壊されると普通はその場で実体に戻るのですが、ボーダーは実体を自動的に基地に送還する独自のシステム(通称、「緊急脱出」)を持っています。
ボーダー隊員は隊員同士で模擬戦したり、近界民と戦ったりすることでポイントが付与されます。このポイントが4000点になると、B級隊員に昇格です。
ではA級に上がるためにはどうすればいいかというと、「B級ランク戦」で1位か2位にならなければなりません。ランク戦は日程や対戦相手の組み合わせは運営側で決められていて、三つ巴、もしくは四つ巴のチーム戦になります。なので通常B級以上の隊員は隊員同士でチームを組んでいますし、チーム毎の特色があったり、チームメンバーは入れ替えがあったりします(スポーツ漫画だと地区予選大会みたいな立ち位置ですね)。
戦闘シーンで人が死なないから緊張感がない
っていうディス。トリオン体と緊急脱出という画期的なシステムのお陰ですね。
そもそも「人が死ぬ」と「緊張感」と「作品の面白さ」の結び付けが全くできないんですが個人的に?!
自分がバトル漫画の戦闘シーンでハラハラする時の原因って、思い返すと抜本的に「アクションなどに迫力、躍動感、臨場感がある」「展開の予想がつかない」なんですよね。
ワートリにおける戦闘シーンも上記2つの要素を満たしていて、ワートリは十分緊張感あるバトル漫画だと思ってるんですが、ディスの感情はそういうコトではないのも十分承知なので、「登場人物の生死を分けた戦闘にこそ緊張感がある」ってコトで話を進めたいと思います。
てか普通にワートリでも戦闘で人が死ぬ描写あるんですよね。
◆エネドラという近界民は戦闘終了後に味方に殺されます。
◆ネームドキャラではありませんが市民・ボーダー職員も近界民の侵略によってたくさん亡くなっています。
◆数年前、ボーダーの前身組織である旧ボーダーの構成員も近界民との戦闘で数名亡くなっています。
◆主人公・遊真の父も紛争中に身代わりとして亡くなっています。
◆遊真のお目付役だったレプリカも、一応生きている設定ですが、瀕死(?)の状態で近界民に連れて行かれてしまい、今後どうなるか分からない状態です。
◆遊真本人も、紛争で重傷を負い、今後いつ死んでもおかしくないっていう身体です。
◆2人目の主人公・修は近界民との戦闘中にトリオン体を解除したことがあるので、生身の状態で体を刺されて重傷になっています。
実際トリオン体と緊急脱出があっても、トリオンが切れてトリオン体から生身になるかもしれないし、敵に緊急脱出のシステムが狙われて機能しなくなるかもしれません。現状のその先に「戦闘での死」はいくらでも想像できるかと思います。
そういうことじゃないよ!戦いながらの生きるか死ぬかの瀬戸際描写だよ!登場人物が死ぬことでしか緊張を感じないし漫画の面白さは緊張感からしか得られないよ!っていうタイプは仕方ないですね。残念ですがワートリ王国の民にはなれないです。。。
ランク戦が長すぎる
っていうディス。それはそう。それはそうなんです。実際10巻〜23巻がランク戦なので長いことには長いです。
>>内輪でサバゲーごっこしかしてない
でもその内輪のサバゲーごっこ=ランク戦が死ぬほど面白いんです。
どこが面白いかって、突き詰めていくと
◆緻密な戦略の集団戦
◆画一化されたトリガー構成
の2点に集約されるかと思います。以下トリガーについての補足置いときます。
トリガーとは
ボーダーのトリガーは、トリガーホルダーという入れ物にトリガーを最高8種類まで入れて使われる。ホルダー内にはトリガーチップを装備するための4×2のスロットがあり、利き腕側のスロットに装備されたトリガーを主トリガー(メイントリガー)、反対側を副トリガー(サブトリガー)と呼ぶ。戦闘時はメインとサブで1種類ずつ、同時に2種類のトリガーを使うことができるが「片側のトリガーを2種類同時に使う」ことはできない。ただし「旋空」や「スラスター」のような特定トリガー専用のオプショントリガーは、基本となるトリガーと同じ側に装備する必要がある代わりに同時に使うことが可能である。
攻撃手用のトリガー:弧月、スコーピオン、レイガスト
銃手・射手用のトリガー:アステロイド、メテオラ、バイパー、ハウンド
狙撃手用のトリガー:イーグレット、ライトニング、アイビス
オプショントリガー:旋空、スラスター、鉛弾等
共通トリガー:シールド、バッグワーム、スパイダー、グラスホッパー等
ランク戦は戦場の地形や天候が選べたり、過去のログが自由に見れるようになってたりしています。つまり、過去ログで相手チームの対策を練ったり、地形を生かしたチームプレイができたりするので、戦闘員の純粋な戦闘力プラスアルファで戦略による利というものが生まれてきます。
ワートリにおける戦略は、トリガーが画一化されているっていうところが肝です。おんなじ手札をどう工夫して使用していくか、この部分がかなりロジカルに描かれているからこそめちゃくちゃ面白くなります。
イカとかのTPS/FPSをプレイするのが好きな人、プレイのゲーム実況を見るのが好きな人はワートリ絶対ハマると思います。
>>近界民と戦争とか言っときながら登場人物みんな部活感覚じゃん
上述の「緊張感がない」にも繋がるディスかと思うんですけど、例えば那須隊っていうチームは、ランク戦参加目的が「チーム員のうち1人が引っ越しちゃうから、このメンバーとして最後のランク戦、良い順位を残して最高の思い出を作ろう!」なんですよね。こういうところが部活って言われる所以かと思います。
以前、
Q. ボーダー隊員がみんな若いのはなぜですか?
A. 一番大きな理由は、「若いほどトリオン器官が成長しやすいから」です。
っていう公式QAがありました。
一番大きな理由以外は回答されていませんでしたが、倫理観が育ちきってない若い子を戦闘用の駒として作りあげるっていうのが2つ目の理由としてあると思うんです。
普通はいくらトリオン体といっても人やトリオン兵に向かっていきなり武器を向けられないですよね。実戦でも臆することなく敵を殺しに行くことができるよう、傷つかないトリオン体でゲーム感覚の模擬戦として日常的に戦わせることで、"正常さ"が欠如する"慣れ"の場がボーダーである場合、部活マインドという異常性が保たれることこそがある意味で正常な状態であると言えるんじゃないでしょうか。
>>話が進まないから早く近界遠征に行ってほしい
逆に何でこんなにランク戦をやっているんでしょう。ランク戦がなかったら話はどうなってしまうんでしょう。ランク戦の役割とは何なのでしょう。
◆強さのデフレ
例えば射手の出水くん、黒トリガー争奪編や大規模侵攻編で即興で追尾弾の弾道をリアルタイムで引いていたり、合成弾をさらっと作っていたりしましたが、ランク戦が進むにつれてそれらが超高難易度技であることが判明されます。強さがインフレしていく漫画はよくありますが、ワートリは強さのデフレを描いているところが面白いですね。
脱線しましたが、つまり、遠征に行って敵キャラとかが増えてごちゃる前に読者にワートリにおけるtierを説明してくれてるのがランク戦の役割になります。
◆モブだと思われていたB級隊員たちの深掘り
大規模侵攻の際、ちらっと出演したB級隊員の村上鋼くんは派手な活躍はせずに話が終わったんですけど、ランク戦編を通じてSE(←ワートリ界における超能力のこと)関連の背景や来馬先輩、荒船さん、カゲや遊真たちとの関係性が描かれます。
東さんとかも初回登場時や大規模侵攻の際に登場してた時は普通にモブだと思うじゃないですか。蓋を開けてみればちょうやばい人だったっていう。
鋼くんや東さんだけでなく、B級上位中位の全員に対して深掘りがされるので、多元的なストーリーが展開されており、ワートリの漫画としての深みっていうのがランク戦により演出されてるのではと思います。
◆主人公周辺の成長
ランク戦前の状態で遠征に行っても修やチカは何もできずに退場していたと思うので、遠征で活躍できるように物理的(強さ)・精神的な成長がランク戦通じて描かれています。
◆ガロプラ関連
ランク戦の裏でガロプラ、陽太郎関連など、迅さんは暗躍してます。
キャラの描き分けができてない
っていうディス。
逆にキャラの描き分けができている状態とはどういう状態を指すのでしょうか。ほとんどの漫画が目と髪型による描き分けだし(あだち充とかもはやヒロイン一緒だし)、そういう観点でしたら他の作品と比較してもそんなに描き分けできてないってほどじゃないと思うんですけど。。
ワートリは登場人物多いですよね。数えたことないんですけど(A級8部隊+B級上位中位14部隊)×平均部隊人数4人=88人で軽く見積もってもこんだけいます。登場人物の多さに加えて、作品の都合上、若い子が多く、異様に奇抜なキャラデザ(ワンピースみたいな)が少ないっていうところはライト層(週刊あるいは月刊で読んでる層など)にとってはこんがらがるポイントでもあるかなと思います。
ですがライト層がディスるはずないので、描き分けできてないってディスる層は「単行本買って読んでるけどキャラクター数が多くて読んでる途中でいちいち登場人物の確認が必要」っていう層だと仮定します。
でもまあ仮定しておいてまで何ですが言ってしまえばこれも作品に対する興味の差に起因するものですよね。興味を持ってキャラクターの特徴(所属や口調)さえ掴めば、誰が誰だかわからなくなるという危険ってヤツは二度と訪れない。
正直ワートリのキャラクターの特徴付けってかなり天才的だと思うんですよ。
◆シウミン系統の風間先輩
◆プライド高いけど人懐っこい猫目の天才キャラ出水
◆攻撃手兼狙撃手の映画好きなマニュアリスト優等生Tetsuji Arafune
◆麻雀と推理小説が好きなトリオンキューブこと諏訪さん
◆高飛車で器用貧乏な"もぎゃり"ヨーコちゃん
◆スーツのポケットに手を突っ込んで尊大キャラかと思ったら雪だるまを作り出す二宮さん
◆真の悪こと太一
等々、自分は登場人物全員の特徴ノンストップで言い続けることができます。
何が言いたいかというと、例えば「嵐山さんと迅さん髪型似すぎてて見分けつかないよぉ〜」となった場合、迅さん=ぼんち揚が好きという特徴を覚えてさえいれば、「これはぼんち揚を持っているから迅さんだ!」となることができますっていうことです。
まとめ
推しCP:二出、太刀出、烏出、オキカト、スワカト、迅ヒュ、陽ヒュ
三つ巴が好きなので「総合1位太刀川と2位二宮に挟まれる出水」の図が大好き。年下攻めが好きなので烏出も大好き。
二宮と出水は喫煙所で逢引してるし、烏丸には「出水先輩今日は上じゃないんですね」って言われるし。ランク戦観戦席の上にあるブース、灰皿たくさんあるので勝手に喫煙所って呼んでるんですけど喫煙所に高校生連れ込む大人アウトすぎるんで喫煙所が本当に喫煙所なのかBBF2を期待しています。
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