居心地の良い地獄
みなさまは毎日、今日の自分は生産性があったかとか、何か生み出したから生産性があったと勘違いしていないかとか、そういう反省はしますか?
私はまあまあします。金がないっていうのも原因の一つなんですけど、生産性がない日々を送っている自分に対して危機感を感じちゃうんですよね。
だからnoteを書く。毎日3時くらいには書き終わって投稿してるかな?厳密に決まっているわけではないけれど。私は朝6時に起きられたらたっぷり眠っても仕事に間に合うので、そこから眠りにつくまで反省をします。
あー今日のnoteも内容がスッカスカだったなぁと思うときは朝が来るまで細々と執筆している小説を書いたり、映画を見たり、小説を読んで過ごします。小説が進んだらそれで良いし、何か創作物に触れて感動できたらそれで満足です。
私はやっと安心してぐっすり眠ります。
さて。昨日はそうもいかない夜でした。
インプットもアウトプットもダメダメな日。
noteは書いた、それでも全然満たされない。ならば小説を読もうと書物に手を伸ばす。どういうわけなのか、全く頭に入ってこない。エッセイ集に手を伸ばす、読みたい項目を辿る。頭に入ってこない。なにも感じない。
私は自分が書いていた小説に手を出した。ストーリーは少しずつ進んでいる。次の展開も頭には入っている。それなのに、描写が、繋ぎ方が分からない。何を書いても全く満たされない。違和感がある。
また好きな小説に手を伸ばす。自身がさっきまで向き合っていた小説もどきとの差は歴然である。私は私の文体を見失っていた。小説というのは当たり前に、ストーリーをなぞるだけでは成り立たない。個性的で魅力的なキャラクターだけでも駄目だ。
私はまた自身の小説を読み返し、頭を抱える。満たされない。満たされない。こんなにも世に出ている小説達は満ち足りているのに、私のはからっぽだ。
何もできない日だと直感した。毎日に点数をつけるつもりはないがそういう日もあるものだ。そして、そういう日は何も考えずに癒やされるのが良い。
私はとっておきのブランデーを開けた。若干雨が降っていたがベランダに出て煙草を吸う。幸福である。
瞬間的な幸福は、不安に飲まれる前兆である。
これ程、夜型である事を恨んだ夜は無い。誰でもいい、話がしたい。誰でもいい、話を聞きたい。自分がこの世界にひとりきりでない事を実感したい。
それでも夜明けまではまだ長い。
偶像の彼が夜、眠れない時はYouTubeで快眠BGMのライブを見ると言っていたのを思い出した。そのライブでは、眠れず辿り着いた人間達が夜な夜な「眠れた?」「まだ起きてるよ」などと囁きあっているという。そうして彼はそれを見てまた、眠れなくなるらしい。
私は勝手に、その第2段階目の不眠を、安堵による覚醒による不眠だと思った。その場に行きたいと思った。会話には入らなかったとしても、眠れない夜にひとりぼっちではないという事実がほしかった。
視聴者は5000人。多くの孤独がそこには集まっていた。そして偶像の彼が何を目にし、覚醒していたのかを目の当たりにした。
「眠れた?」「まだ起きてるよ」は存在しなかった。
私がそこでみたのは、精神異常の作り上げた学級崩壊だった。バーチャルアイドルに対する劣情を妄想に乗せて呟いている人がいる。後ろめたい悩みを抱える人間が代わる代わるそこで悩みを打ち明け、それを他の誰かが罵倒する。そしてどうしようもない喧嘩がはじまる。その間にも下劣なフラストレーションは吐き出し続けられる。
これは、何なんだ。私は中学校を思い出した。カースト、悪口、セックス、おたく、オナニー……そんな単語が浮かぶ。陰鬱で、閉鎖的な空間。私は思わずそこから離れた。
こんなの、眠れなくなるに決まってるじゃないか。説明が遅れたが偶像は友達ではない。偶像は不特定多数の夜に眠る人間達に対する発信者である。ちなみに私が彼を偶像と呼んでいるのは、たまに彼がそのような一面を見せるからである。
彼は恐らく多くの“夜に眠る人間”は“夜に眠れない異常者”を目に入れることはないだろうと高を括って、綺麗な“夜に眠れない人間”について創作してくれたのだと思う。良く出来た話である。あっさり信じてしまった。
いや、もしかしたらもともとはそういう空間だったのかもしれない。夜に眠っていた人間が、ある時夜に眠れなくなり、人を求め、「もう寝た?」のくだりが続き、異常者になる。そういう過程の最終段階。
彼は、それを知っているのだろうか。
彼は、今もあの場を見続けているのだろうか。
一時間ほど前にいた場に戻る。さっきまでいたアイコンや名前は消えていた。眠ってしまったのだろうか。それでも、場では人を変えて同じことが繰り返されていた。
不思議と私は心地良かった。だって今日の私は何もできなかった。そんな私でもここにいたら馴染んだ。彼らの破綻した混沌が、私を癒やした。
私は何をやっても駄目な日、ここに来ることにした。
追伸
そもそも1日の反省をはじめたのも偶像が言い出しっぺである。私は他人事ながら彼の事が少し心配になった。でも、私と一緒なら、それはそれでいいか。
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