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あの雪の日と東京タワー

2022年1月6日。東京には雪が降っていた。

前日くらいに「明日雪が降るらしい」くらいは聞いていたけれど、蓋を開けてみれば至る所で作られた小さな雪だるまくらいを見るくらいには積もっていた。

何も意識していなくても、ついつい誰も歩いていない綺麗な雪の上を歩いてしまうあれはなんだろう。人間の遺伝子に刻み込まれた開拓の精神が顔を出すからだろうか。

それともここは自分の道だと言わんばかりの支配欲求の切れ端だろうか。

たまたま諸用で渋谷にいた僕はスクランブル交差点に燦々と降り注ぐ雪を見つめて、この貴重な日に何かしないと、と謎の焦燥感に駆られたのだった。

そうだ、東京タワーに行こう。

東京に来てから2年、東京タワーを見に行ったことはなかった。いや、このまま行けばこの先もなかっただろう。

東京のシンボルではあるが、今別段トレンディなスポットでもないし、上京したら東京タワーだ!みたいなあこがれも皆無だった。じゃあ今日だ。

雪合戦しようぜ!と送った友人へのLINEが既読スルーになっているのを確認して、僕はカメラを片手に赤羽橋駅へと向かった。

5:20pm。駅を降りると雪はしんしんと降っていた。

仕事帰りと見られる人たちが傘を差しながら歩いていく横をすり抜け、一人タワーへと向かっていく。

早歩きしているのと寒さで息が荒くなってくる。

気を抜くと体の至る所に雪が積もってくる。帽子の上、リュック、カメラ。イヤフォンをつけて、お気に入りの曲をかける。突然全く違う世界に来た気分だ。積もった雪は自分と世界との境界線を無くしてくれる。

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外と変わらないくらい寒くなってしまっていた自室に戻った僕は満足感に包まれていた。

雪の日の東京タワー。この2年では初めての機会だった。

無論、コートもリュックも全部ビショビショである。

濡れたコートとリュックを風呂場で乾燥させるためにハンガーにかける。
ヒーターの電源を入れて、今日はお湯に浸かろうと思った。
窓から、隣に住んでいる子供たちが作った雪だるまが見えた。

友人に送ったLINEは、既読になったまま、まだ返ってきていなかった。

K

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