The Naked Writer

東京在住の写真家とジャーナリストの2人が日々の記憶を綴るブログです。 Writer :…

The Naked Writer

東京在住の写真家とジャーナリストの2人が日々の記憶を綴るブログです。 Writer : ライター。東京で雑誌の編集、書籍執筆などをしています (dyuasa08@gmail.com) K: 東京で写真と映像、音楽を作る毎日。 (Insta: @kotaroymt)

マガジン

  • 俺的編集後記

    ドイツ在住ジャーナリストの日常

  • 旅先のMoments

    自分が行く先で出会った景色、瞬間の写真たちについての話です。

最近の記事

  • 固定された記事

モノクロのとびきり遅い夏

今回の冬の思い出を尋ねられたら、僕は「花火」と答えるだろう。 昨今の状況もあって、毎年恒例だった花火大会は中止になったり、存在そのものが消えてしまったところも少なくない。 去年も花火と言ったら友人たちと河川敷で申し訳ない程度に楽しんだ線香花火がいいところだった。 花火を見にいく、そんな発想は完全に頭から消え失せてしまっていた時、友人が「熱海で花火大会やるらしい。行きたい。」と言い出した。 もう12月だぜ?と最初は耳を疑ったが、どうやら本当にやっているらしい。 そもそ

    • 記憶の中の喫茶店

      2020年10月をもって、近所の喫茶店が閉店した。上京した2020年以来、ほぼ毎日原稿を書くために通っていた場所だった。 その喫茶店が好きだった理由はまず、紙巻きたばこが席で吸い放題だったこと。2つ目にマスターだった80代のお母さんが大好きだったこと。コーヒーの香りが特別良かったからとか、値段が安かったからとか、そんな理由ではなかった。 最初の理由は今のご時世では珍しい。チェーン店の、豚小屋のように押し込められた場所でたばこを吸うのは、奴隷になったみたいで気分がよくない。

      • ベルリンと森鴎外

        ベルリン旅行  ドイツ移住後の初めてのブログを書く。移住の経緯や動機、その他諸々はおいおい記そうと思う。  ところで今、このブログはベルリンからの帰りの電車の中で書いている。私が住んでいるのがデュッセルドルフというドイツ西部で、電車で5時間ほどの距離。料金は片道50ユーロだから、東京⇔大阪間の新幹線の半額といったところか。余談だがJ R東海は利益率が50%くらいある会社でそのほとんどが東海道新幹線の収益によるもの。国鉄分割民営化時の葛西氏の政治力がいかに優秀だったか分かる

        • 「複業」のススメ

          本当に教えたくない話をします 今回のテーマの「複業」は私はもう2年くらいやっているから、少しは話をする資格があると思う。ちなみに、私の職業は記者・編集者。同じような職種に従事している人には絶対に教えたくない。ライバルが増えるから。でも、まぁ書く。 読んで損しないと思いますよ。私が実地で積み上げたノウハウなので。記事を書いたり編集したりするのは世界中のどこでもできる仕事で、おすすめです。多少の才能と、根気強さは必要だとは思いますが。後者の方が大事かな。結論から言うと、仕事が好き

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        モノクロのとびきり遅い夏

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        • 俺的編集後記
          26本
        • 旅先のMoments
          9本

        記事

          寿司テロと「罪と罰」

          スシローの迷惑客の動画が出回り、SNS上で大騒動になっている。「けしからん」「テロ行為」「躾がなっていない」――。ほとんど罵詈雑言だ。そんなに怒るエネルギーがあるなら、子どものマスク虐待やコロナ騒動の公金の行方についてもっと憤ってほしいと思うが、それは本題ではない。ドストエフスキーの「罪と罰」において、秀才の元大学生で主人公ラスコーリニコフとマルメラードフの関係性は物語の中核をなしている。酔いだくれでダメ夫、元公務員だが己の弱さから仕事が続かず、過去に生きているマルメラードフ

          寿司テロと「罪と罰」

          屋久島 Layover

          僕の2022年最後の冒険は屋久島に決まった。 急に天から降ってきたような話で、半ば上の空で返事をしていたのだが、 スケジュールもいくつかの幸運が重なり、気がついたら2年ぶりの飛行機に乗っていた。 久しぶりの空港に無意識にテンションは上がった。 羽田から鹿児島空港へ。そしてセスナに乗り換える。 降り立つと、空には煙みたいなグレーの雲がもくもくと立ち込めていた。 今回はとある撮影で1週間ほどの滞在の予定だった。 毎日早朝に起きて、始まるのが機材を背負ったままのトレッキング。

          屋久島 Layover

          フリースタイルで生きる~精神の自由というパラドックス~

          締め切りに追われている。11月中旬までに、いろいろとやらなければいけない仕事がある。激動の昨年を終えて、少しは忙しさもマシになるかと思いきや、仕事が止まらない。今年は、まったく休んだ気がしない。まぁありがたい話ではある(原稿料がもう少しあればなお、ありがたい笑人間とは際限のない欲望を持つ生き物である) 10月31日に、1年がかりのプロジェクトであった書籍を発売した。25歳の私の、すべてが詰まっていると自負している。 取材→書く→校正のネバー・エンディング・プロセスにいると

          フリースタイルで生きる~精神の自由というパラドックス~

          フロム アラカワ トゥー ウチュウ ノ カナタ

          「今日から宇宙仲間ね!」 もう夕日が落ちかけている荒川の河川敷で撮影を終えた時、彼女たちはそう言った。 僕にとっては宇宙という僕たちのはるか空高くに存在しているそれを意識したのも初めてだったし、こうやって宣言されて何かの「仲間」に入れてもらったのも初めての経験だったかもしれない。 二人はダンスをやっていた。 片方はバレエで、もう片方はコンテンポラリーダンスだ。 共通の知人を介して知り合い、気づいた時には彼女たちの踊りを僕が写真に収めることになっていた。 場所は荒川の河

          フロム アラカワ トゥー ウチュウ ノ カナタ

          息苦しさの正体

          生きづらい時代だ、毎日疲れる、息が詰まりそうだーー。そんな言葉をこの頃よく聞くようになった。確かに、現代の日本社会はとても非寛容だと感じる。私は学生時代、アメリカに留学していたが、帰国後、日本社会の不自由さとのギャップで、精神的に参ってしまったことを覚えている。ほかにも、笑える話がある。学生時代に所属していた学部では地域の中学生に対して英語を教えるというプロジェクトがあったのだが、その時に私は黒板にデカデカと「同調圧力」と記し、15歳の少年少女に「お前ら、これに負けるなよ」と

          息苦しさの正体

          忘却の彼方にある新宿の高層ビル

          上京して丸2年が経つ。渋谷や新宿などの高層ビルを見ると、頭をよぎる記憶がある。それは、就職活動をしていた時のこと。当時の私は、どの会社にもひっかからず、通常は6月ごろに内定が出るはずが、8月まで就活をしていた。8月の猛暑のある日、某社の面接のために「これで何度目」という東京遠征に出かけた私は、面接を終えた午後、あることに気づいた。「帰りの新幹線代どころか、帰りのバス代もない」 今となれば、私はどの会社の面接をその日に受けたのか、なぜ行きのバスか新幹線かの車中に「金がない」と

          忘却の彼方にある新宿の高層ビル

          スキャナー内の星空と東京の思い出

          うちにはスキャナーがあった。 しかもEpsonのハイエンドスキャナーだ。 過去形なのでもうないのだけど、元々は現像したネガをスキャンするために購入したものだった。 モノクロは自分で現像することがあるので、それをスキャンするためにも必要だったのだ。 最初はかなり悪戦苦闘して、スキャンのプロセスを身につけ、自分でデータ化していたのだが、やはりどこまで行ってもラボのクオリティと手軽さにには敵わず手放してしまった。 気を抜くと埃やチリが入り込み、写真にうつってしまうのでスキャン

          スキャナー内の星空と東京の思い出

          果てしなき空の上:気球での挑戦

          いつの時代も人間の好奇心とは尽きないもので、やれ未開のジャングルに突撃してみたり、やれ海の一番深いところまで潜ってみたり。空への挑戦も例外ではないだろう。 人間が初めて空を飛んだのは今から約250年前くらいの1783年、フランス人のモンゴルフィエ兄弟によってなされたらしい。 なんでも彼らは煙の立ち登る様子から空を飛ぶことを思いついたとか。 飛行機にはわりかし慣れている僕だったが、それ以外で空との関わりを持つことはこれまでの人生で特になかった。 たまたまあいたGW後半。空

          果てしなき空の上:気球での挑戦

          サンフランシスコ: 記憶の断片を辿って

          2018年2月。 僕はサンフランシスコにいた、らしい。 ほんの最近までそんなことはすっかり忘れていた。 なにせ短い滞在だったし、僕の周りでいろんなことが起こっていてなんとなくバタバタしていた時期だったからだ。 父親の友人を頼って現地入りして、実際父とも過ごした。 当時大学生だった僕はどのような道を進んでいくのかもわからず、文字通り当てもなく彷徨っていた。 サンフランシスコの急な坂を登った先に答えが落ちている感じがして、一人で街を歩きまくった。 シティライツブックスト

          サンフランシスコ: 記憶の断片を辿って

          We are always running late

          時計を見ると5時をすぎたところだった。 ヤバイ。 ベッドから跳ね起きると、「起床したら夕方」と「昨夜から変わっていない散らかっている部屋」という事実に心が折れそうになる。 ぐるぐる回転する自分の脳とは裏腹に、窓からは沈みかけた夕日の光と、帰宅途中であろうキッズたちの声が聞こえてくる。 昨日からほぼ24時間履いているジーパンを脱ぎ捨てると、シャワーを浴びる。 なんで昨日帰ってすぐ入らなかったんだろうといつも後悔する。 仕事では遅れないのに、プライベートでは遅刻常習犯

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          iriの魅力は、「少数者へのまなざし」にあり

          2021年の夏ごろから、シンガーソングライターのiriにどハマりしている。それまでは一番有名なwonderlandしか聞いたことがなかった。低音のR&B調の女性シンガーだなくらいの印象であった。 その印象が大きく変化し、彼女の虜になったのが、この曲だ。 「24-25」はiriが25歳になったタイミングで書き下ろした楽曲らしく、とにかく歌詞が良い。 ”いたいけな日を 情けない夜を 忘れない日々を また繰り返していく 嘲笑った日を 痛い目見た日も ぼやけてく明日を また塗り

          iriの魅力は、「少数者へのまなざし」にあり

          不登校問題を考える

          不登校の児童生徒の数が右肩上がりに増加している。特に、コロナ騒動が始まった2020年度においては、累計で過去最多の数字を記録した。その背景には、当然不登校という状態が社会に受け入れられていることの証左でもあろうが、それにしても積極的に学校に行きたくない子ども(登校しぶりと呼ぶ)が200万人近くいる事実は異常としか言いようがない。特に、少子化の現代においてこの数字は非常に危機的なものだろう。 最近、不登校関連の仕事を始めたことで、まだ少しの期間ではあるがこの問題と向き合うよう

          不登校問題を考える