抑圧への抵抗がテーマのオペラ(後編)
オペラには抑圧される人々が反抗する場面やテーマが数多く見られます。
香港やウクライナで戦っている人たちへの共感から、オペラ作品の中で抑圧者に抵抗する場面を集めてみました。
今回は後編です。
前編を読まれていない方はこちらから先にどうぞ。
ヴェルディ『ナブッコ』
イタリア第二の国歌“行け、わが思いよ”
国を失ったヘブライ人たちが祖国を偲ぶ歌です。
この場面はぜひ通して見てください。約14分間ですが見る価値はあります!
拍手の最後に観客が「イタリア万歳!」と叫んでいます。
それに応えて合唱を丸々アンコールする指揮者ムーティ。
アンコールを起立して聴き、共に歌う観衆。
歌い終わって涙する合唱団員。
イタリア人ではない私でも胸が熱くなってしまいます。
苦労して自分たちの国を建てたイタリア人にはこの曲に特別な想いがあるのでしょう。
自分たちの国というものがいかに大切かを再確認させられる気がします。
少し長いですが、歌詞も添付しておきましょう。
字幕が欲しい方は後半だけですが、以下の動画をどうぞ。
ヴェルディ『マクベス』①
亡霊に怯えて先王の暗殺を周囲に悟られてしまうマクベス。
「この地を捨てよう。この国は呪われた者の手に落ちた。いずれ盗賊の巣になるだろう。」と歌う廷臣たち。
権力の簒奪が明るみに出る時、失望した人々は国を去り、反乱の狼煙が上がるのです。
ヴェルディ『マクベス』➁
マクベスに王位を奪われた王子マルコム、家族を殺されたマクダフ、反乱に加わった民衆らは木の枝を身に纏い、バーナムの森からマクベスの城へ攻め込みます。
決戦を前にした強い決意と祖国回復への切なる思いが伝わってくる場面です。
サン=サーンス『サムソンとデリラ』①
異教徒ペリシテ人に支配されるヘブライ人。
ヤハウェの神を愚弄した太守アビメレクに、ヘブライ人を率いるサムソンは猛然と反抗します。
圧政者への怒りから爆発的な反抗へ… 虐げられた人々の思いが伝わってくる場面です。
(映像が無いので終わりがわからないと思いますが、約6分間くらいのシーンです。)
サン=サーンス『サムソンとデリラ』➁
妖女デリラに誘惑されて目を潰され、ペリシテ人の神殿に囚われたサムソン。
ダゴン神を崇めるペリシテ人がこの舞台の演出では武器を弄ぶ現代のブルジョワに擬せられています。
現代でも強欲な人は富や力と引き換えに「独裁者」という邪神に平伏すのです。
ベートーヴェン『フィデリオ』 再び!
自由を奪う者に抵抗するテーマのオペラ、再びベートーヴェンの『フィデリオ』に登場してもらいましょう!
遂に夫を救出したレオノーレ。解放された囚人たちと喜びを分かち合う場面。
指揮者バーンスタインの燃えるような音楽に観客も熱狂しています。
この合唱は抑圧と戦う人全ての勝利と開放を願ったベートーヴェンの、人類への贈り物だと思います。
ベートーヴェン『交響曲第9番「合唱」』
このシリーズの最後は自由への讃歌で終えましょう。
ベートーヴェン『交響曲第9番「合唱」』
1989年ベルリンの壁崩壊を寿いで、歌詞の‘Freude’(友よ)を‘Freiheit’(自由よ)に替えて歌われています。
ウクライナでもいつか必ずこの曲が、この歌詞で歌われることでしょう。
『抵抗のオペラ』(後編)は以上です。
この紛争に関してはロシア側にも言い分があったり、日本でもそれを支持する人がいます。
ですが政治的事情などそこに住んでいる人には関係ありません。
たとえ自分のものを取り返す意図だったとしても、他人の家に勝手に上がり込んではいけないのと同じです。
私はウクライナはもちろんロシアにも、今回紹介したオペラのように抑圧をはねのけた人たちが自由の勝利を高らかに歌う日が来ることを期待しています。
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