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抵抗のオペラ(前編)

香港やウクライナでの抑圧に対して私たちはどういうメッセージを発信できるでしょうか?
過去の多くのオペラ作品では抑圧に抗う人々が描かれ、今でも私たちを鼓舞し続けてくれています。
私もその中のいくつかを紹介することで抑圧者への断固たる抵抗を表明したいと思います。

動画のリンクは取り上げた場面から始まりますので、そのままご覧ください。


モーツァルト『フィガロの結婚』

結婚直前の妻を狙う好色な主人・アルマヴィーヴァ伯爵への抵抗を誓う下僕フィガロ。
初演当時の検閲によって表現は抑えられていますが、特権階級の横暴には絶対に従わないという決意が伝わってきます。
企みはまず暴くこと。 現代も同じですね。

ベートーヴェン『フィデリオ』①

政敵に拉致された夫が幽閉されている牢獄を突き止めた妻レオノーレは男装して牢番に仕えています。
そこは不当に囚われた人々が多くいる抑圧の象徴のような場所でした。
しかし彼女は諦めず、遂に夫を救出することに成功します。

ベートーヴェン『フィデリオ』➁

囚われの夫を見つけ出したいレオノーレは牢番へ、囚人たちにしばし陽の光を浴びさせることを提案します。
自由への憧れと監視の目への警戒心を歌う囚人たち。
彼らの歌は現代も抑圧に耐えて生きる人々の声でもあるのです。

ロッシーニ『ウィリアム・テル』①

悪代官ゲスレルに反抗するスイスの村人たち。
怒った手下たちは村を焼くと脅し、村の長老を見せしめに殺して一触即発という、手に汗握る緊張のシーン。
一定のリズムを刻みながら盛り上がっていく音楽が人々の怒りの高まりを表しています。

ロッシーニ『ウィリアム・テル』➁

ハプスブルク支配下のスイス。
代官ジェスレルの横暴に民衆は遂に怒りを爆発させます。
「ジェスレルを追い出せ!」と叫ぶテルとそれに呼応する民衆。
この場面は現代も抑圧に抵抗する人々の姿そのものなのです。

ロッシーニ『ウィリアム・テル』③

ハプスブルクの兵士に父を殺されたアルノールは民衆と共に武器を取って立ち上がります。
このオペラの初演は1829年パリ。
翌年現実に、専制的王政を打倒すべく七月革命が勃発します。
その時オペラと歴史はリンクしていました。

ムソルグスキー『ボリス・ゴドゥノフ』

前編の最後は紛争の当事者ロシアのオペラで締めくくりましょう。

ロシアの帝位簒奪者ボリスから民心は離れ、先帝の息子を名乗る「偽ドミトリー」がポーランドの支援を得て進軍して来ます。
ロシアの大地の象徴「白痴」は涙に暮れて歌うのみ。

白痴の歌う歌詞を添付します。

流れよ、流れよ、苦い涙!
泣け、泣け、正教徒の心よ。
すぐに敵が来る
そして闇が訪れる、
闇は暗く、前途に光明は無い。
禍だ、ロシアの禍だ。
泣け、泣け、ロシアの人々よ、
飢えた人々よ!

『オペラ対訳プロジェクト』
https://w.atwiki.jp/oper/

ロシアはまた同じ歴史を辿るのでしょうか…


さあ、いかがだったでしょうか?
後編でも抑圧に抵抗する人たちを扱ったオペラをご紹介します。
ぜひ読んでくださいね!


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