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建前を認め、その奥にある本音に寄り添う

勉強をしたり、本を読んだりしていると、必然的に知識が増えていきます。世界中のあらゆる情報をすべて取得することは不可能ですが、それでも学ぶことによって自分なりの軸が形成され、信念が生まれてきます。理路整然と、学んだ知識をベースに、自らの世界観を言語化する。このプロセスがあるからこそ、ディスカッションに参加でき、自分の意見を述べ、他人の意見を聞いて、新たな気づきによって自分の世界がアップデートしていきます。

ですが、自分の考えを他者に伝えるのはことのほか難しい。知識が増えれば触れるほど、あれもこれも言いたくなって「長く」なり、専門知識を使えば「わかりにくく」なり、信念はときに傲慢さを持って「独りよがり」になってしまう。

こういうときは、自分を幽体離脱させるようにちょっと高いところから自分を見つめ、冷静な分析をしてみたい。あれこれと内容を詰め込みすぎた意見は飽きられます。狙う結果を一つに絞り込んで、あえて短く話すことで相手の「想像力」を活用することができます。専門用語満載のかっこいい言葉、必要以上にまとまった発言内容で人の心を動かすことはできません。感情を込めて、ちょっと言葉足らず、稚拙な表現であったとしても、それが聴き手の想像力を刺激して感情を引き出すことができます。事前に相手の求めている言葉や内容を探って、ピンポイントで提示できれば、こちらの要求をスムーズに伝えることができるでしょう。

心を動かす言葉と、動かせない言葉。

この違いは一体どこにあるのでしょうか。その答えは、聴き手のニーズをくすぐることができるかどうかにあります。「自分のニーズと関係があることを話している」と感じたら、話し手の言葉に注目し始めます。知りたい、学びたい、悩みを解決したい、認められたい。これらの欲求は私にもありますし、他者もみな当然のごとく持ち合わせています。その欲求に関連した言葉を散りばめることで、私たちの言葉は聴き手にとって「聞いてみたい」という言葉に変わっていくはずです。

人の心にある「建前を認めてほしい」という欲求にも関心を持ちたい。相手の本音を推測して、建前を取り払って認める。「理屈ではこうあるべき」ではなく「理想はこうありたい」という欲求。この狭間で揺れ動く他者の感情を察して「わかります!」と共感してあげること。相手の抱えている問題(建前)を認め、その苦悩に共感しながら、本音に入っていく。本音は必ず認めてあげることが大切だと思います。

自分の本音を見せて、相手の信頼を得て、その上で相手が断りたくても断れない状況にあるという建前を認めてあげながら、その奥にある本音に寄り添っていきたい。気をつけたいのは、建前を触れずに本音から入ること。人は理屈では動きません。心の琴線に触れるからこそ、こちらの意図が伝わり、こちらが望む行動を促すことができるんだと思います。

久保大輔




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