サッカークラブは高級レストランなのか、居酒屋なのか?
クラブの価値を
誰よりも分かってくれているサポーター。
彼らを味方につけ、
新規ファンの獲得をうながすメカニズム
について
昨日まとめてみました。
ビジョンがあるかどうか、
サポーターを頼る謙虚さがあるかどうか、
そしてクラブ自身が、
クラブの持つ価値を、
誇りをもって信じているかどうか。
サポーターはクラブの一挙手一投足を注視し、
都度評価をくだしています。
クラブは自覚をもって日々、
たゆまぬ努力を続けていくのです。
■クラブの「隙間」をうめるサポーター
さて、
地道な努力を前提としたメカニズム
によると、
「どうやらクラブはストイックらしい」
という雰囲気がただよってきますが、
どっこいそうとも限りません。
昨日も、
そしてそれ以前にも何度か書いていますが、
クラブには「隙間」がたくさんあります。
「隙間」とは、
「余白」と呼ばれることもありますが、
ときにサボることもあれば、
能力不足による停滞も多々あり、
頻繁に
サポーターをイライラさせるもの。
つまり、
ストイックにがんばるのは当然のことながら、
ストイックさによってカバーできない、
埋めようのない領域がたくさんあるということ。
クラブという組織も、
つまるところ人間の意識と行動が集まって成り立つ
生き物に他なりません。
「だって人間だもの」よろしく、
気持ちが乗るときもあれば、
乗らないときもあるし、
「そもそもできない」ことだってたくさんある。
その「隙間」を埋める存在が
サポーターであり、
クラブは謙虚に、
サポーターを頼らなければならない
という考え方。
イングランドの下部リーグに所属するクラブは、
私の知る限りにおいて、
このような
サポーターとの「共創」を実現している。
というかそもそも、サポーターなしに
経営や運営が成り立たないといってもいいくらい。
ズブズブに頼りまくって、
100年以上の歴史を積み重ねているのです。
■ビジョンを知るサポーターとの協力関係
Jリーグにおいても、
「ボランティアスタッフ」
にスタジアム運営の一部
をゆだねているクラブも多い。
無償、もしくは交通費程度を支給、
お弁当と観戦チケットをプレゼントして、
試合と、試合前後2時間の
計4時間ほど、
イベント補助やチケットのもぎり、
マッチデープログラムの配布などの業務
を委託しています。
これは試合開催時
に限った話ですが、
たとえばポスターのデザインとか、
ウェブサイト、SNSの管理運営、
イベント企画の評価、意見交換といった
より広範囲にわたる業務を、
サポーターのスキルや専門性を頼りに
委託するパターンが、
もっと採用されてもいい
と考えています。
もちろん、何度も言ってますが
(とういかこれからも何度も言いますが)
「何をしたいのか」
「どんな価値を信じているのか」
という確固たるビジョンを持つクラブと、
ビジョンの理解と、
ビジョンの実現に協力したいと願うサポーター
という関係性の上
においてのみ成立する話。
クラブのリーダーシップ
という軸があって初めて成り立つ協力関係は、
クラブの「隙間」をうめ、
あたらな価値を創造し、
サッカークラブをより一層
魅力的なものにすると信じています。
■つぶれそうでつぶれない「居酒屋」
少し横道にそれましたが、
クラブのビジョンは一つであり、
絶対的なものであっても、
そのビジョン実現の手段、戦術は、
クラブ単独で決められるものが絶対
では決してありません。
さらに、
パーフェクトな存在であるはずもない
クラブには、
いたるところに余白があり、
その余白を嬉々として埋めてくれるサポーターは、
クラブになくてはならない存在
であると言えます。
高級レストランのように、
息をのむような完成された料理
を提供することはなくとも、
お客さんが進んでカウンターに入り、
ビールを入れたり、お皿を洗ったり、
料理を運んだりする小さな居酒屋が、
身近さという「世界観」を武器に
飲食業界で生き残る道を模索する。
衛生管理はしっかり、
料理はそこそこおいしくて、
店長の会話は魅力的で楽しい。
たまに熱くなりすぎて話し込んでしまい、
ときに酔っぱらってしまうことも。
小さなスペースには、
店長の魅力にひかれるお客さんが連日訪れ、
満席でいそがしいときは
常連客がサポートしてくれる、という
家族的な世界観が、
つぶれそうでつぶれない居酒屋の真骨頂。
そんなスタイルを、
サッカークラブは目指すべきなのでは
と思うことがあります。
■こだわりと自信をもって
当然、レアルマドリードやリバプールのような、
世界的ビッグクラブはその限りではなく、
むしろ「高級レストラン」的経営
を志向しているのかもしれません。
一方、ビッグクラブとはいえない
その他大勢のサッカークラブが、
有名選手、監督、美しいサッカー
というフルコースで勝負するのではなく、
経営者のビジョン、
ビジョンに一貫したコンテンツの数々といった
アラカルト(の集積)による、
クラブ独自の世界観で勝負する方が、
勝ち目がありそうです。
迎え入れるお客さんの層が
まるで違うので、
下手にビッグクラブに
戦いを挑むことなく、
平和で安定したマネジメントができます。
1,000人のうち990人は
レストランに行くかもしれませんが、
10人が頻繁に
ちょっと傾いたのれんをくぐってくれれば
居酒屋は経営できます。
10人に対して、どんな感動をデザインして、
驚きとともに提供できるかどうか。
クラブがこだわること、
自信があることに対しては、
卑屈にならず胸を張って、
納得いくようにやり切るべき。
批判を受けることもあるでしょう。
なかなか評価してくれないこともあるでしょう。
お客さんの声はひとつひとつ丁寧に傾聴し、
それに従うのか従わないのか、
自分の信じる道を突き進むのかは、
クラブが、もしくはクラブの経営者が
判断しなければなりません。
自分のこだわりを捨てて、
角の取れた丸い、
「誰にも否定されない」
クラブづくりをするのか、
それともその逆を目指すのか。
物理的な顧客の減少、
財布のひもが固くなる少子高齢化時代を
たくましく生き長らえるクラブが進むべき道は、
レストランか居酒屋か。
答えは後者ではないか
というのが今日の私の提案です。
※本稿は以下文献を参考にしました。
究極軸 好きな「何か」を磨いて成功する9つの習慣
(黄帝心仙人)
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