経験の「タグづけ」と全体合理性が他社との違いを生む
過去の投稿を整理して、
マガジン化してみました。
マガジンは他にもあるのですが、
研究の方向性として
「センス」「ストーリー」「リーダーシップ」
の3つに収れんされていく様子が
なんとなく見えてきました。
センスを磨いたり、
戦略ストーリーを構想したり、
リーダーが自らの哲学や審美眼をベースに
ビジョンを掲げることも
すべて「違い」をつくるため。
今日はあらためて、
それぞれの要素を
丁寧に言語化してみたいと思います。
そして「経営のあり方」について
深く考察し、
スポーツクラブの経営の現状
と照らし合わせながら、
自らの問題意識に
向き合ってみます。
■具体的な経験にタグづけする
営業やマーケティングなどにおいて、
実践して結果が出たとします。
結果は放置することなく、
うまくいった、
もしくはうまくいかなかった理由を見破る。
見破るとは、
目に見える現象の
背後にある論理をつかむということです。
また、
成功者の自伝や評伝を手に取り、
ただ漫然と読むのではなく、
なぜこの人はこのときそうしたのか、
いちいち立ち止まって「なぜ」を考える習慣は、
自分との比較を生み、
自分だったらどうするのかを考え、
いつしか自分の潜在的なセンス
に気づくことになる。
疑似体験を通して、
ロジックの引き出しを増やすことも可能です。
即効性はないけど、
コツコツと「具体と抽象の往復運動」という
筋トレを繰り返せば、
おのずとセンスが錬成されていく。
目の前に起きる
経験したことのないような事態にも、
過去に実践した論理をもとに
サクッと思考し、行動ができる。
センスがいい、勘がいい、
そのように「映る」のは
論理という骨組みを適宜活用している
と換言できます。
論理化する、という作業はつまり、
個別具体的な経験にタグをつけるということ。
具体的な経験を論理化することなく、
次から次へと横滑りさせるだけではこの、
センスや勘は身につかず、
競合との違いも作れません。
■信念と引き出しの多さ
自らの人生から紡ぎだされた哲学
にもとづくビジョンを言語化し、
激しく変化する状況の
本質を見抜き、
局面ごとに
最善の意思決定と行動を起こす。
詳細に市場を分析したり、
顧客アンケートやシミュレーションをせずとも、
本質的な「論理の引き出し」があれば、
意思決定は誰よりも早く行うことができます。
なかなか意思決定ができず、
仕事を停滞させるリーダーは、
情報が足りないのではなく、
信念やビジョンの欠如、
および論理の引き出しが不十分
であることに
その原因があるはずです。
過去の情報を、
論理化することなく
「正解」の在庫
を積み上げているだけでは、
次々に迫りくる
難局を乗り越えることはできません。
「正解」は過去の正解であって、
今の正解であるとは限りません。
VUCA化する現代
においてはなおさら、
その傾向が顕著にあらわれています。
リスクある決断を素早くできるかどうかは、
その人に独自のビジョンがあるかどうか。
そして普段から
論理の引き出しを圧倒的に増やす努力
をしているかどうかに尽きます。
■部分の非常識は全体で合理化
そもそもビジョンがなければ、
戦略ストーリーも立てようがない
のですが、
信念に基づくビジョンがある前提で、
戦略ストーリーを構想する
ということは
経営そのもの
であると言えます。
また、
全体構想である戦略ストーリーを創り、
現場に浸透させ、
独裁的に動かせるかどうかも
見逃せないリーダーの資質。
民主主義的に、スタッフ全員の顔色をうかがって、
嫌われまいとするリーダーには、
「分業」させつつも
「分断」はさせない、
そんな全体をまるごと動かす
という発想そのものができません。
しかしながら、
情熱的で、
ひとりだけ盛り上がっているのも逆に分が悪く、
一歩引いて、俯瞰的かつ客観的に、
自分も全体の一部分だという
ある種冷めた感覚がなければ
務まりません。
シンプルで分かりやすく、
ロジックとパッションがバランスよく、
懐疑的になりがちなスタッフを
無理に説得しようとせず、
共感をえるようなコミュニーションを行って、
できるだけ早い段階で
小さな成功の兆候を見せること。
実際に行った因果論理を
時間軸に順番に並べるという、
「戦略ストーリー」
をみせることで
自分たちのやっている「静止画」を
「動画」にして理解を促す。
部分部分は非常識に見えても、
全体を通して合理性を担保している、
部分のずれは
全体で整合性がとれるということが分かれば
スタッフの心にスイッチが入り、
実行が加速されていきます。
そして部分の非常識は
競合からの模倣を防ぎ、違いとなります。
■振り返りは時間軸で具体的に
自分にとって切実な、
理屈抜きに実現したい世界とは何か?
そんなリーダーの自問自答が
すべての起点になります。
つまり、
センス磨きも、
ストーリーを構想することも、
リーダーとして全体合理性を説き、
リームを牽引することも、
リーダーのビジョン次第ということ。
サッカークラブの経営を通して、
サッカーという競技を魅せるだけではなく、
社会の課題解決や、
自身の体験から沸き上がる問題意識、
それらを解消すると
どんな世界が見えてくるのか。
そんな前提で、
仕事の結果をどのように分析し
論理を見抜いてストックしていけるかを
ひとつひとつ
考えていかなければなりません。
たとえば
試合のチケット販売が、
その日の天候や成績、
大きなイベントが開催されていた、
といった「その日」だけ
に焦点をあてるのではなく、
どんなイベントを企画し、
誰に対してどんな喜びを提供しようとしていたか。
その人たちに向けていつ、どのように告知したか。
ウェブやSNSのデザインは?文言は?
試合後には、
どんなアクションを起こし
顧客の声を拾っているか、など
試合の前後に数か月の範囲で
個別具体的アクションを時間軸で並べて見直し
ひとつひとつの論理を引き出して
抽象化していかなければなりません。
次の試合に向けて
準備をしなければいけないから
振り返っている暇がない、
というのであれば
では「どうするのか?」
振り返り、
論理をストックする時間を生み出すために
年間スケジュールの立て方
から見直さなければなりません。
チケット販売の検証だけ
をとってみても、
拡張性の高い整理と改善の余地
があることが見えてきます。
ありとあらゆる場面において、
この具体と抽象の往復運動を行わなければ
引き出しが増えず、
常に自転車操業的な作業に
終始してしまいます。
疲弊する社員を救うためにも、
リーダーが何をしなければならないか
が問われています。
そして上述してきたような
「違い」をつくる思考こそが
大きな価値を生む源泉
なのです。
※本稿は以下文献を参考にしました。
戦略読書日記 〈本質を抉りだす思考のセンス〉
(楠木建)
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