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生産性150%の老女がいる

FROM 安永周平

あるコンサルタントの男性が、顧問先のメーカーからの依頼で「作業員の勤務態度や道徳心を評価できないか」と相談され、現場でのリサーチを行っていました。彼はまず、製造プロセスの様々な箇所で作業に従事する人々に聞き取り調査を行いました。

すると、あるエリアで「白いプラスチックの部品を硬い木の部品に糊で貼り付ける」という一見とても退屈で単調な作業が行われていました。そこで彼は、作業員の1人をつかまえてこう聞きました。

製造ラインで働く作業員の声


男性「自分の仕事は好きですか?」

作業員「つまらない仕事だよ」

男性「何をどうする仕事?」

作業員「この白いやつをね、こっちの堅いブロックの上に置くんですよ」

男性「この会社は気に入っている?」

作業員「いいや」

男性「それで、給料には満足?」

作業員「どうだかね。大したこたぁないよ」

他の4〜5人の作業員に聞いても、似たような答えが返ってきました。やれやれ…と思いつつ工場内を歩いていいると、彼は白髪をロールパンの形に束ねた小柄な老女が口笛を吹いているのに気づきました。彼が製造チャートで調べると、彼女の成果率は平均より50%も高いのです。そこで彼は、彼女にも同じような質問をしてみました。

同じ作業をしている老女の答え


男性「この会社がお好きですか?」

老女「すばらしい職場よ、今までで最高の仕事ね」

男性「給料のほうも?」

老女「とってもね」

男性「ボスはどんな人?」

老女「最高よ」

男性「ところで…これ、何をしてるんです?」

老女「ピアノを作ってるのよ」

「自分は必要とされている」と感じたい


そう、彼女が従事してるのは、ピアノの鍵盤を組み立てる作業だったのです。同じように、先の「この白いやつをね、こっちの堅いブロックの上に置くんですよ」と言っていた作業員もピアノの鍵盤を組み立てていました。しかし彼女は、有名なピアニストの指や子どもたちの手が、彼女の組み立てた鍵盤を叩き、多くの人々を楽しませることを知っていたのです。

つまり、彼女は自分の仕事の大切さを思い「自分が役に立っている」という貢献感に突き動かされていたのです。人は誰しも、自分は必要とされていると感じたいものですから。また、同じような話がイソップ童話にもありますよね。『3人のレンガ職人』という話で、旅人が道を歩いていると、レンガを積んでいる3人の職人に出会い、「ここで何をしているのですか?」と尋ねます。

すると、1人目は「レンガを積んでいるのさ」と答え、辛くて不公平だと考えていました。2人目は「大きな壁を作っているのさ」と答え、家族を養うために仕事があることに感謝していました。3人目は「歴史に残る偉大な教会を作っているのさ」と答え、教会の完成をイメージし、そこに訪れる人々の幸せまで考えていました。

人に行動すべき「目的」を与える


同じ仕事をしているはずなのに、この3人の違いは何でしょうか? お察しのとおり、それは「目的」の違いです。「ただレンガを積む」のと「偉大な教会を作るためにレンガを積む」のでは、完成に大きな差がでます。先の老女の話も同じで「白いやつを堅い木の上に置く」のと「多くの人々を楽しませるピアノを作る」のとでは、仕事ぶりに雲泥の差が生まれるでしょう。

あなたが人を動かすリーダーの立場にいるのなら、この話から学ぶことは多いはずです。人に動いてもらい、チームを率いていくにあたって、メンバーの行動にどんな目的・理由を与えるかによってパフォーマンスは大きく変わるでしょう。ですから、リーダーの仕事は「チーム全体の目的」と「メンバー個人の目的」とをいかにして近づけるか…といっても過言ではありません。

人に気持ちよく動いてもらう秘訣とは?


人に気持ちよく動いてもらうには、相手にもメリットがなければいけません。自分だけが得をして相手が損をする…そんな関係は決して長続きしません。優れたリーダーは”相手にも勝ってもらう”のです。自分(チーム)にとっても相手にとっても魅力的なWin-Winの関係となる案を考える必要があるのです。これって何かに似ていると思いませんか?

勘のいいあなたは既にお気付きでしょうけど、これは「交渉」です。相手を味方につけるための交渉です。仕事であれ、家族との関係であれ…私たちは人に何かを求める時にはいつも交渉をしているのです。常に何らかの形で交渉に関わっているのですから、交渉の技術を学ぶだけでもかなり有利に物事を進めることができます。人を動かすリーダーならなおさらです。

交渉のスキルがなければ損をする


実際、あなたが仕事をしていれば、いつかは誰かの「卓越した交渉術」を目の当たりにするはずです。なぜなら、世の中には交渉の達人が少なからずいるからです。そうした状況で、もしあなたが、交渉の技術について何も知らなければ…知らないうちに大きな損をしてしまうかもしれません。自分が望まないことを、不本意にもやらされてしまうかもしれません。

これは、相手を心理操作して反撃しろという話ではありません。しかし、交渉の技術を学び、身に付けておけば、様々な状況下で大きな恩恵を受けられる可能性は高くなります。やる気のないメンバーに、魅力的な目的を持ってもらうように働きかければ、見違えるようにパフォーマンスが上がるかもしれません。人に気持ちよく動いてもらえるかどうか、これはあなたの仕事ぶりに大きな変革をもたらすと思いますが…いかがでしょうか?

PS
では、具体的にどうすれば人は気持ちよく動いてくれるのでしょうか。実は抑えるべきポイントはたった1つです。詳しくはコチラ確認してみてくださいね。

「相手が言うことを聞いてくれない」とお悩みの方へ


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