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履歴書その9~2分の1成人式~

3回目の鬱による休職。もう教師を諦めなければいけないかもしれないし、ある日自殺しているかもしれないし、教師としての私の話を誰かにしておこうと思うけど、話し相手もいないのでここに書こうと思う。

2分の1成人式とは

私が子どもの頃はなかった学校行事に、「2分の1成人式」というものがあります。

成人式(20歳)→2分の1成人式(10歳=4年生)

10歳になったことをお祝いする行事です。

そもそも、私はお祭りごとが苦手なのですが・・・あ、そういえば自分の成人式も良い思い出がありません。

私の成人式の思い出

成人式で一緒に過ごすのは、地元の小・中学校の友達。私は小・中学校と、優等生の殻を被って生きてきたので、そもそもそこまで親しい友達がいませんでした。クラスでも部活でも、やんちゃして楽しそうにしている友達を羨ましそうに見つめる、かといって真面目な子たちと仲良くするわけでもなく、なんとなくの雰囲気での人付き合い。

さらに、高校生・大学生となり、私は(今もそうなのですが)その時所属している人たちとの付き合いが一番楽しく気軽で、高校生になれば中学の友達とは疎遠に、大学生になれば高校の友達とは疎遠に、社会人になれば大学の友達とは疎遠に、異動があれば前の職場の同僚とは疎遠に・・・という人付き合いをしてきました。だから、そもそも20歳の時には、地元の友達なんてほとんど付き合いがないのです。

でも、成人式に参加しない・・・なんて思い切ったこともできず、小・中学校の友達の後ろをついていくだけ。同じ中学だった人たちと、夜、幹事力がある同級生が半分以上の人数を集め、お祝いをしました。何をしゃべったか、誰としゃべったかなんて、まったく覚えていないのですが、割られた卵が床に散乱していたことだけは鮮明に覚えています。

その記憶が鮮明に残っていて、今では地元の友達は1人もいません。

話が逸れました。

私の2分の1成人式の思い出

私が勤務していた小学校では、2分の1成人式が毎年行われていました。

(その後分かったのですが、この行事は賛否両論あるらしく、私の経験では4年の学年主任の先生が実施するかしないかを決めているのではないか、と感じました)

私が4年の担任をしていた時のこと。学年主任の先生は2分の1成人式賛成派でした。

成人式に合わせて3学期に行うことが多いようで、私たちも着々と準備を進めていきました。

子供たちにはサプライズを・・・ということで、「大事なお手紙だから必ずおうちの人に渡すように」と、『お子さんへのお手紙をお子さんには内緒で書いていただき、封筒に入れて提出してください』と依頼した手紙が中に入っている封筒を子供たちに配りました。

数日が経ち、私の元へ、我が子へのサプライズが詰まった封筒が提出されます。中身は私も分かりません。ただただ、全員分集めることだけを気にしていた記憶があります。

将来の夢へとそれに向けた決意表明、さらに日頃育ててくれている親への感謝の気持ちを示す、なかなか分量の多い作文を、人前で読んでも恥ずかしくない文体・内容になるよう添削し、それを何も見ないで言えるように暗記、さらに来てくれた保護者の前でスピーチをするための一人一人の動線、歌唱指導、ここを見ながら読むと堂々として見える、と子供がスピーチをする際目に入る黒板に、丸いマグネットを6つ使ってポンデリングみたいな花の目印を付けたりもしました。さらに、入念なリハーサル。当時は今より根拠なき自信をもっていた私も、神経質になった記憶があります。

そして、本番。前々からお手紙でお知らせしていたこともあり、多くの保護者が狭い教室に来てくださいました。

一人一人、立派にスピーチ。緊張から途中で何を言うか忘れてしまった子も、少し間が空いた後、とっさに自分の言葉で思いを述べます。リアルな緊張感。そして「エラい!」と心の中で叫ぶ私。

全員のスピーチが終わった後は、将来への思いを歌声に乗せます。他のクラスはCDに合わせて歌うのですが、私は張り切って、下手くそなのに練習量でカバー。夜な夜な音楽室で練習し、教室にあった古いオルガンで伴奏をします。

歌も終わり、いよいよサプライズ。私は事前に子供たちから集めた封筒を、子供たちに配ります。

封筒を開け、喜び、感極まる子供たち。そして、その姿を見て、感極まる保護者たち。

「おめでとう」「なんで教えてくれなかったの!」「ありがとう」「嬉しいな」「立派なスピーチだったね」

と、笑顔での親子のやりとり。手紙には、我が子へのメッセージが幼い頃の写真やかわいいシール、カラフルなマスキングテープに彩られています。

しばらくは親と子の時間。私は、邪魔にならないように存在感を消しつつみんなの様子を見ています。

しかし・・・

そんな中一人だけ、写真やシールなどがなく、鉛筆で淡々と書かれた手紙を持っている子がいました。

私はその親を批判する気はまったくありません。お仕事に家事に忙しい中、書いてくれた、気持ちのこもった手紙です。ただ・・・

手紙を持っている本人は、周りを見ればきらきらした色鮮やかな、思い出の写真が飾られた手紙を持っている子が目に入る。本人の思いは私には分かりません。鉛筆で書かれた手紙をどう思っているかは分かりません。ただ、カラフルな手紙とモノクロの手紙、両者を客観的に見ることができる立場の私は、ただただ胸が痛む思いでした。

その後は、写真撮影。狭い教室なので、子供と来てくださった保護者、全員揃って写真を撮ることができません。なので、出席番号順で3回に分けて記念撮影。子供が椅子に座り、その後ろに保護者が立つ。

写真を撮っている私は、誰の親は来ていて、誰の親が来ていないか一目瞭然。ここでも胸が痛む思いを隠しながら、作り笑いで「はいチーズ!」と言っていました。


だから私は、2分の1成人式が苦手です。

所属していた学校の4年生の先生が「2分の1成人式?やらないよ」って言ってくれるとホッとしました。

※あくまで私個人の見解です。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

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