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【のう #1】脳機能に着目し失語症を治療する起業家


都志 宣裕さん


 脳の言語を司る部位の障害によって、「聞く、話す、読む、書く、計算する」ことが難しくなった状態を想像したことがあるだろうか?『失語症』と呼ばれる。

 失語症当事者は、「とにかく単語が出てこない」「会話で、内容は理解できても喋れない」といった困りごとを抱え、本人のみならずご家族など周囲も意思疎通に苦労するため、どちらも疲弊してしまう傾向がある。



 失語症は、決して縁遠い障害ではない。

 「けつえき」の第1話で、脳卒中サバイバーのグラント愛さんをご紹介したが、日本で毎年、約27万人が新規または再発で『脳卒中』を発症し、約12万人が発症後に死亡している。生存しても長期の後遺障害に悩まされ、そのうち約3割が抱えるとも言われるのが、言語機能障害である失語症なのだ。


 こうした社会課題に対して、脳機能をターゲットとしつつ、アンメットな領域の1つである失語症の“治療”を目指しているのが、都志さんが創業したGhoonuts株式会社だ。

 「脳波を測って診断して予防する、で止まることはしたくなかったんです。あくまで“治療”として脳の変化までやり切りたい。非侵襲の電気刺激なら日本でもできないか。」

 そうして電気刺激の研究を進める中で、言語機能に及ぼす効果に可能性を見出したのが、現在注力する「失語症のリハビリテーション」。現在、失語症トレーニングアプリ「コトバサプリ(コトサプ)」のリリースに向けて、クラウドファンディングを実施中だ。

 なお、この電気刺激の効果は、100人に1人とも言われる統合失調症や、584万人あまりにのぼると発表されたばかりの認知症などにも見込まれ、幅広い社会課題の解決につながることが期待されている。



 脳への電気刺激と一言で言っても、さぞ怪しいかもしれない。しかし、Ghoonuts社の取り組みは、極めて地に足がついている。

 東京都立大学と東京工業大学との3者共同研究を皮切りに、「脳波を測り、言語のテストを実施し、その場で脳のどの部分が壊れた言語機能を再獲得しようとしてるのかを見出し、そこを集中的に刺激する」方法を育ててきた。
脳への電気刺激用電極を独自開発する必要があるとなれば、化学メーカーとの共同研究を開始した。

 さらに、現場でより使いやすいものとしてサービスを届けていくために、オンラインでの言語リハビリサービスを提供する企業との連携や、言語聴覚士をはじめ医療専門職を育成する大学との連携を、矢継ぎ早に始めている。


 実は、こうした取り組みは、「何の伝手もないところから、社内チームで具体的に提案し、それを受け止めてもらった」結果なのだ。

 「世の中のだいたい全てのことは、やるべきことをちゃんとやっていなくてダメになっていると思っています」と話す都志さんは、社内メンバーと研究協力先を探し訪ね巻き込んだ。利用者側も同じだ。面倒がらずに全国の患者会をまわって体験の場を設け、利用者の方々からの問合せには24時間対応する。

 「当たり前のことを、当たり前にやることで、製品は売れると思っています。それが大事だし、それが強みだと思っています。」

 地に足がついているのは、研究開発内容だけではない。創業者の姿勢もだ。


 今後の課題は、「患者や、そこにつながる行政との接点」だ。

 Ghoonuts社がリリース予定の失語症トレーニングアプリ「コトバサプリ(コトサプ)」は、「比較的若くして失語症を患った40代50代の社会復帰を後押ししたい」。

 脳卒中や失語症の当事者会自体は色々なところにあり、全国協議会もあるのだが、高齢化しているのが現状だ。そこにターゲット層が所属していない場合や、全国協議会でも把握できない若年層の当事者会もある。そうした中で、いかに「若い方との接点をもっていくか」。


 これは、他の障害分野でもよく聞く話だ。新しい価値をもたらす製品やサービスが世の中に広がっていくには、初期のユーザーコミュニティの存在が欠かせない。地に足がついた研究内容や創業者であっても、欠かせないのだ。

 今回のInclusive Hubの取り組みが少しでもGhoonuts社のユーザーコミュニティの一助になれば嬉しいし、是非読んで頂いた方も、周囲に当事者がいれば是非ご連絡を。



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