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【あし #22】義足ユーザーとして義肢装具業界に身を置く


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井上 修さん


 下肢(脚)切断者は全国で約7万人とも言われ、そのうちの多くが日常生活に義足を使用している。最近では、パラリンピックや義足モデルなど、義足を目にする機会も増えた。その一方で、その義足を誰がどうやって製作しているか、ご存じだろうか?


 切断者のもとには、リハビリを担う理学療法士だけではなく、同じ国家資格である「義肢装具士」も訪れる。
 脚の切断面を採寸・採型し、同じサイズの脚の石膏モデルをつくり、それをベースに切断面を覆う「ソケット」を製作していく。さらに、ソケットに膝や足首の代わりとなる金属製の継手や、その継手を繋ぐ筒状のパイプなどを組み立てて、義足全体ができあがる。再度、患者さんの切断面に合わせ、ご本人が使いやすいように調整するまでが義肢装具士の仕事だ。
 全国には、こうした仕事を担う「義肢装具製作所」が約700あると言われ、業界には、そういった製作所に様々な部品や材料を供給する「部材メーカー」もある。


 井上さんは、バイクの事故で下肢を太ももから切断し、現在義足を身に着けて生活している。それと同時に、上述の部材メーカーである株式会社小原工業に勤める社員でもある。切断した後の井上さんに、現在の会社との出会いをもたらしてくれたのは、パラ陸上だった。


 井上さんが義足を使い始めた当初は、同じ切断者が走っているのを見ても「どうやって?」と思うほどで、まさか将来「走ることができるなんて考えもしなかった」
 しかし、義足生活になって6年ぐらい経った頃。義肢装具士さんから、義足ユーザーによるランニングチーム『スタートラインTokyo』が開催する初心者向け講習会のチラシをもらい、初めて走ることに挑戦する。
 当時は、東京パラリンピックの3-4年前。「大腿義足でパラ陸上に取り組むアスリートはまだ多くなく、ちょっと頑張ればパラリンピックも夢じゃない」と目標を持てた。
 その後、東京パラリンピックが近づく中で、競技人口が増加し、競技力を向上させる様々な取り組みも始まったことで、その目標は叶わなかったが、今でも「仕事の合間を縫って大会に出場し、上にのぼっていこうと思っている」



 そんなランニングチームで出会ったのが、現在勤める株式会社小原工業の社員。井上さんが「自分に合った仕事がないか?」と聞けば、すんなりと誘われる「巡り合わせ」だった。


 義足のユーザーだった井上さんが、自分に義足を提供する業界の中に足を踏み入れた。そこには、それまで知らなかった世界が広がっていた。
 部材メーカーの社員という立場から、「(義肢装具士の)仕事をマジマジと見ると、こんなにも大変なことをして義足を作ってくれたのだと感謝した」。仕事相手になった義肢装具士にとっても、取引相手の井上さんは義足ユーザーでもあり、使ってみての感想などユーザーの生の声を聞けることは貴重な機会だった。


 また、業界の課題も見えてきた。
 義足は、国の補装具費支給制度の下で支給されるのだが、その負担元は公費だ。それ故、例えば、義肢装具士がその切断者にとって過剰なスペックの高価な義足を支給しようとすれば、自治体から認められないこともある。
 仮にそれが、義肢装具士が本当に切断者のことを考えて支給しようとした義足だとしても、上記のように誤解されれば支給が下りないのだ。それを避けるために何より大事なのは、「それを求める切断者自身が声をあげること」だと知った。
 井上さんはそれまで、切断者として、与えられた義足をそのまま使用するものだと思い、そこまでは考えてこなかった。同じように考えて、なかなか声を上げない当事者は、決して井上さんだけではないのではないか。


 さらに、義足ユーザー自身だからこそ、それによるズボンや靴の履きづらさなど、日常生活での不便さにも気付くことができる。これも上記同様、切断者はこれまで、そういった小さな改善ニーズの声も十分に上げてこなかったのかもしれない。
 「ユーザーとしての自分の声がダイレクトに商品開発につながったら嬉しいし、会社の利益にもなったら最高」と井上さんは話す。



 どの障害領域もそうだが、課題や新しい改善のヒントをもっているのは、常に障害のある当事者自身だ。だからこそ、もっともっと当事者には製品やサービスを提供する側に入ってきてほしい。
 義足ユーザーであると同時に、その部材メーカーで働く井上さんは、それを実践されている。そして、当事者こそ業界の中で貢献できることを証明するためにも、井上さんの今後の活躍を期待せずにはいられない。
 





ここまで読んでくださった皆さまに‥


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