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【こころ #7】四肢麻痺のオリンピック通訳に出会って

大野 圭介さん(前編)


 「働きたいけど働く場所がどこにもない」という一人の障害者の「想い」から、付加価値のある仕事をつくろうと、創業者が障害者とともに藍染の修行を始め、6畳一間から藍工房を立ち上げて大きくなった社会福祉法人がある。その名も『社会福祉法人 藍』。


 大野さんは現在、その想いを引継ぎ、同法人の理事長を務めておられる。現在では、藍染製品をつくりだす就労継続支援B型事業所(注1)『ファクトリー藍』のみならず、障害のある方がフレンチを中心とした洋食レストラン運営に携わる就労継続支援B型事業所『アンシェーヌ藍』も展開し、併せて共同生活援助事業(注2)『ガーデン藍』や特定相談支援事業(注3)『コンシェルジュ藍』も手掛けている。

(注1)
就労継続支援B型事業所とは、障害のある方が、一般企業に就職することに対して不安があったり、就職することが困難だったりする場合に、雇用契約を結ばずに生産活動などの就労訓練を行うことができる事業所

(注2)
共同生活援助事業とは、入所施設での生活ではなく住宅地域で共同生活し、将来的に自立生活を行うことを支援する取組

(注3)
特定相談支援事業とは、障害のある方やそのご家族が障害福祉サービスを利用するにあたって相談ができる窓口となる取組


 大野さんは、何の経験もないままにこの福祉分野に飛び込んだとき、唯一採用してもらった相手にこう言われた。「福祉バカはいらない、人生経験豊かな人が欲しい」。その通り、大野さんの人生経験は豊かだ。


 大学卒業後に一度は就職するもワーキングホリデーへ。滞在した先のオーストラリアで現地に恩返しがしたいと向かったボランティアセンターに、英語がうまくなくてもできそうな仕事を見つけた。「日本語教えてくれる人募集」。

 記載された住所に向かうと、運命の出会いが待っていた。ドアを開けて出迎えてくれた相手は、四肢麻痺の女性。「メラニー・ホークスさんという方でした」。今でも名前を忘れない。


 時は1998年。2年後には彼女の地元オーストラリアでシドニーオリンピックが開催される。彼女から出た「オリンピックで日本人の通訳をする。そのために日本に留学もする。」という言葉に驚かされた。そんなエネルギッシュかつポジティブさに加えて、「彼女は自分のことをすごく褒めてくれてもっと頑張ろうと思ったし、ありがとうと言われて素直に嬉しかった」。彼女はその後、通訳する夢を本当に実現し、大野さんは「目に見えて感謝される仕事に就こう」と福祉の世界を志した。


中編に続く)


▷ 社会福祉法人 藍




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