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【こえ #47】「電気式人工喉頭」を愛用するが故の期待

中村 政明さん & 浅子 勝彦さん


 これまでも何度かご紹介してきたが、声帯を摘出した方が声を取り戻す代表的な方法としては、以下の2つがある。

  1. 口や鼻から食道内に空気を取り込み、その空気をうまく逆流させながら、食道入口部の粘膜のヒダを新声門として声帯の代わりに振動させて音声を発する『食道発声』

  2. あご下周辺に当てた振動を⼝の中へ響かせ、⼝や⾆の動きで振動⾳を⾔葉にして発声することを補助する器具『電気式人工喉頭(EL)』を使う方法


 声帯を摘出し声を失った人に対して発声訓練を通じて社会復帰を支援する『埼玉銀鈴会』に所属する中村さんと浅子さんはどちらも②の『電気式人工喉頭(EL)』、その中でも、第5話の須貝さんがかつて国産初の開発に着手し、現在は第6話の西田さんがさらなる開発に取り組む電制コムテック社「ユアトーン」を愛用している。


 まず、お二人に『電気式人工喉頭(EL)』を選択した理由を聞いてみた。
中村さんの場合、当初は『食道発声』に取り組んだが、「あめ、あたま、おちゃ(といった単語一つずつ)ぐらいは発声できたが、なかなかその先に進めなかった」。その結果、『食道発声』を諦め、『電気式人工喉頭(EL)』を使った発声に取り組んだ。

 浅子さんの場合は、最初から『電気式人工喉頭(EL)』を使った。「食道発声を習得するには時間がかかり、何より「すぐに話せるほうがよかった」ことを重視しての選択だった。


 一方で、お二人に『電気式人工喉頭(EL)』を利用する上での課題も聞いてみた。

 中村さんからは、音量について「(周囲の騒音が小さい)病院に行ったときには小さく、(周囲の騒音が大きい)電車で話すときは大きく、もっとスムーズに声の強弱を調整できたら」という声が聞かれた。中村さんがお使いの『電気式人工喉頭(EL)』にはダイヤル式の調整ボタンがついているが、それが「小さくてスムーズにできない」のだそうだ。また、声の高低の変化(抑揚)をつける機能もついているが、「もっと変化が欲しい」という要望もあった。それでカラオケを歌いたいそうだ。

 浅子さんからは、「一番は重さ」ときっぱり返ってきた。周囲に話しかけてもらえる状況で返し続けるにも「ずっと持ち続けることが辛い」ために、逆に話すことを遠慮するようになってしまうこともあるそう。軽さや簡易さに高い期待が寄せられた。


 こうした声の重要性は当事者以外にとってはあまり想像できないかもしれないが、当事者や、何より『電気式人工喉頭(EL)』の開発者にとっては貴重な改善意見になると思う。こうしたちょっとした声が少しでもより良い製品開発につながれば嬉しい限りである。

▷ 埼玉銀鈴会



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