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【こえ #6】もともとモノづくりが好きで、大学の工学部では医用工学を専攻し…

西田 英里奈さん


 第5話で発声が不自由な方を補助する電気式人工喉頭「ユアトーン」を国産として初めて開発した須貝さんをご紹介したが、同じ電制コムテック社で現在その製品の開発を担当する技術者がまだ入社4年目の西田さんだ。

 もともとモノづくりが好きで、大学の工学部では医用工学を専攻し、将来は北海道でモノづくり、特に健康・福祉系の機器開発に携わりたいと考えていた。就職活動の際に電制コムテック社が「ユアトーン」を製造・販売していることは知らなかったが、会社見学を通じて「ユアトーン」やさわやかな朝を迎えたい方に使用いただく「ルーチェグラス」といった製品に触れ、入社を決めた。

 普通の会社であれば何年か会社のイロハを学んでから、いや、それでもなかなか希望の仕事に就けるものではない。しかし、西田さんはなんと入社半年で希望通り「ユアトーン」の主担当になった。なんとも懐の深い会社である。

 入社2年目からは過去にいただいていたお客様からの声をもとにユアトーンの改良開発を進めた。ただし、着任当時はコロナの初期。メインユーザーである高齢者に直接訪問できず、新製品を開発しても試してもらえないまま「不安だった」。結局試作品は多くの社員に試してもらいながら修正を繰り返し、何とか製品として形になった。そんな時、コロナ流行が少し下火になった。販促担当に試作品を託し、ユーザー様に試してもらうと好評で、ようやく少し安心できた。

 いまだユアトーンにはたくさんの課題がある。電制コムテック社が1998年以来25年間続けている「お客様登録カード」。そこにはお客様による製品改善への声が詰まっている。

 そこでずっと言われ続けているのが「(使うと)ロボットみたいな声になってしまう」。他にも「(通常電気式人工喉頭は片手で喉に押し当てて使用するのだが)話すときに機器を操作している・使っている印象をなくしたい」など。

 こうしたお客様の声に対して、世の中にある人工喉頭にはすべてボイスコイルモータが使われているが、音を出す部分の構造を根本的に見直すことも考えた。それ以外にも、当事者は「はっ」と息を吐けないために口の形だけで音が出てしまい、今の人工喉頭では「はひふへほ」が「あいうえお」になってしまう。その程度であれば文脈で聞き取れることも事実だ。それでも「出せない音がご自身のお名前に入っていたらと考える。究極は元の声に戻して差し上げたい」。

 片手で喉を押し当てて使わずハンズフリーで装着するタイプも販売している。ただ、やはり“使っている印象”や着け心地といった課題も多い。「人によっては手で持って押し当てることが難しい故に必要な方もおられるから」と改善を止めるつもりはない。


 今の仕事を通じて「生まれたときにあって息を吸うのと同じくらいに普通に使っているのが声。それを突然失う大変さ」に改めて気づかされた。
 「いま自分が課題だと思っていることについてクリアできるところまで行きたい」。担当としての目標をたずねて返ってきた答えは力強かった。


▷ 電制コムテック株式会社(ユアトーン)


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