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【横断 #5】インクルーシブデザインから未知の未来へ

タキザワ ケイタさん


 すべての人のためのデザインを意味する『ユニバーサルデザイン』という言葉があるが、タキザワさんが代表を務めるPLAYWORKS株式会社は、『インクルーシブデザイン』を実践している。「あらゆる人が使いやすいものをつくることは一緒だが、インクルーシブデザインは、多様なリードユーザーと共につくる活動です。」と教えてくれた。


 『インクルーシブデザイン』に取り組む源流は、タキザワさんがまだ広告代理店でプランナーをされていた頃に、奥様が妊娠されたことに遡る。その時に捉えた課題が、「電車内では皆がスマホを見ていて妊婦が前にいても気付かない」ことだった。マタニティーマークをIoT化して、近くにいる人にだけスマホへプッシュ通知を送り、「座りたい・・・」と「譲ります!」をつなげるデバイスを開発した。この『スマート・マタニティマーク』は、Googleのコンテストでグランプリを獲得した。

 『スマート・マタニティマーク』を展示会やコンセプトムービーで発表すると、妊婦さんのみならず「障害のある方からも使いたいという声をたくさんいただいた」。ただ、コンセプトを超えて社会実装するには、アプリをインストールするハードルやビジネス面の難しさもあった。そこで、手助けを必要とする方を「妊婦や障害、持病のある方、訪日外国人など」に広げるとともに、LINEアプリで繋がれる仕組みにアップデートした。生まれ変わった『&HAND』サービスは、今度はLINEのコンテストでグランプリを獲得した。

 このサービスはJR東日本や東京メトロ、ANAなど公共交通機関からも注目され、主要駅・地下鉄線・空港などで「リアル環境での実証実験を行い、サービスデザインやプロトタイピングのノウハウが溜まっていった」。同時に、障害のある「当事者とのネットワークやコミュニティも育っていった」ことで、『インクルーシブデザイン』を専業とするPLAYWORKS株式会社を立ち上げるに至った。


 同社が取り組む『インクルーシブデザイン』では、「視覚障害者は光のない世界のプロ、聴覚障害者は音のない世界のプロ、車椅子ユーザーは移動のプロ」といった形で、障害のある方々を「未知の未来に導いてくれる“リードユーザー”」と呼んでいる。

 未知の未来。あくまで主眼は、イノベーションだ。“障害者のために”と考えると、そのまま困りごとを聞きがちだが、「先天性の方であれば、その世界でずっと生きてきたので、困りごとはない」。バリアフリーに取り組んできた自負をもつ企業もあるが、それはあくまで「ルールの中で守らないといけない制約と考えてきた」ものだ。

 でも、そんなマイナスをゼロにする課題解決にフォーカスすると、「どうしてもジャンプできずに似たような解が生まれ、イノベーションにつながりづらい」。それには、障害者自身もワクワクしない。


 改善にとどまらずにイノベーションを生み出したい。そのためにタキザワさんは、伴走型のコンサルティングを展開している。

 例を教えてくれた。ある家電メーカーに対して、実際に製品を担当したデザイナーやエンジニアの目の前で“視覚障害リードユーザー”に製品の箱を開けるところから使うまでの一連の体験を観察してもらった。まず箱が開けられない。取説に説明動画のQRコードがあっても、それ自体を認識できない。スマホで読み込めたとしても映像に音声ガイドが付いていない。そんなシーンを目の当たりにすることで、「急に自分事化する」。


 そうした自分事化への入口として、PLAYWORKSでは2か月ペースでオンラインの『インクルーシブデザイン体験ワークショップ』を提供している。「画面をオフにしたら視覚障害者だと気づかれない。マイクをミュートにしたら、聴覚障害者の方が伝え方がうまい」。オンラインだと、「健常者が降りてきて、障害者とフラットになれる」と教えてくれた。

 私も、もっと障害について自分事化し、また、ゼロからプラスにするイノベーションにこそ携わっていきたい。なので、タキザワさんが提供するワークショップへの参加から始めてみる。皆さんも是非ご一緒に。


▷ PLAYWORKS株式会社



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