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【横断 #13】自分の意思で選べる『自由』


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高橋 宜盟さん(後編)


(前編から続く)


 高橋さんが開発した、登録した言葉を指で選択して音声で伝えるアプリ『指伝話』は、発話に障害のある多くの方のコミュニケーションをサポートしてきた。 

 しかし、それに10年以上取り組んできた高橋さんは、指伝話の利益を大きくする以前に、「病気や障害だからといって“できる・できない”を周りが決めたり諦めたりするのはおかしい。可能性を閉じないことを伝えていくことが大切ではないか」と考えるようになる。


 地方の患者会に行くと、そこで推奨される意思伝達装置はもう決まっていて、iPadは受け入れられないこともあった。また、より楽しくコミュニケーションを取ってほしいと指伝話に学習教材の要素を取り入れたところ、行政から「身体障害の支援機器としての機能を超えているから、療育的な内容を取り除いてくれ」と言われたこともあった。

 一方で、自分にあったコミュニケーション機器としての指伝話を手に入れたことで、「なんだか忙しくなっちゃったよ、できることが増えて嬉しい」と伝えてくれる人たちもいる。

 また、他の装置では旦那さんとのコミュニケーションが取れなくなったと嘆いた奥さんが、指伝話メモリで毎日作る『笑顔日記』を通して旦那さんと再び心を通わせたことがあった。夫が操作をして「意思伝達」をしている訳ではないのだが、行政の担当者が指伝話を使った「夫婦の日常生活のコミュニケーション」を見て、補助の給付決定をだし、担当者自身も自分のことのように喜んだ。


 こうした経験から、高橋さんは、『何を使うか』よりも『何をしたいか』が大事であり、誰もが複数の選択肢から自分の意思で選ぶことができる自由を持てる環境を提供すべきと考える。それが『アクセシビリティという考え方』にある基本であり、この考え方を普及する一般社団法人結ライフコミュニケーション研究所を仲間と立ち上げた。


全国各地でアクセシビリティの大切さを伝える


 そんな中、知り合いの東京慈恵会医科大学脳神経外科学講座・先端医療情報技術研究部の髙尾先生が重症ギラン・バレー症候群に見舞われ、「体を動かせず、声も出せない状況」になったことを知る。先生のご家族から「久しぶりに会いにきて」と言われて向かった先はICU。4ヶ月間の意識不明を脱して間もなくで、首をわずかに動かせる程度の状態だったが、指伝話とiPadが手助けになると確信した。

 初めて“当事者”側になった先生から、こういった支援機器があることを「自分も知らなかった、アクセシビリティの重要性の普及を手伝ってほしい」と声がかかる。昨年、髙尾先生の研究部による『アクセシビリティサポートセンター』の立ち上げに参画し、高橋さんが仲間と立ち上げた研究所に込めた想いは、大学発でも花開いた。

 やはり患者さんとの一番の接点は、病院だ。アクセシビリティを伝えるのに最も適している場所だからこそ、大学の先生や病院の関係者に理解してもらえると状況はより良くなる。高橋さんは、「心臓を止めない医療はもちろん大切だが、心を止めないアクセシビリティも大切」と伝えていきたい。


 高橋さんは、ご自身が販売・普及してきた指伝話について、「テクノロジーの進化で、製品自体は数年で不要になる」と言い切る。しかし、誰もが複数の選択肢の中から自分の意思で選ぶことができることを”自由”とする「アクセシビリティという考え方は、なくならない」とも言い切る。

 そのために、指伝話は、あくまでその考え方を思い出してくれるきっかけで構わない。だから、指伝話のサイトの冒頭には、『機械ではなく機会です。』とある。


 高橋さんは、仮に何か“障害”があっても、「方法は1つではなく他にも選択肢がある」という考え方を大切にしてほしいのだ。このときの“障害”は、心身の障害に限らないかもしれない。「例えば、大学に不合格になった、希望していた会社に入社できなかった。でも、それで終わりじゃない。自分の夢を達成するやり方は色々あるから大丈夫と考えることができたら、『生き方』そのものもより良くなるだろう」と言う。


 前編でご紹介したが、高橋さんは障害のある当事者でも、そのご家族でもない。『指伝話』の開発も障害のためではなく、自分の業務のためだった。でも、それが当事者の知るところとなり、可能性を拓く手助けになっていった。そして今、自身の製品ありきではなく、誰もが複数の選択肢の中から自分の意思で選ぶことができる「アクセシビリティという考え方」の普及に走っている。


アクセシビリティは「自由」


 「指伝話の仕事をしていると、ご家族に難病の方がいるのですか?ってよく聞かれるんですよ。世間の多くがそういう方しか携わらないという前提に立っちゃってますね」という高橋さんの言葉が忘れられない。

 そんな背景がなくても、自分の技術が役に立つと思えば、どんなエンジニアや事業者にもこの分野に携わってほしい。高橋さんみたいな方が増えてくれることを、強く願う。






ここまで読んでくださった皆さまに‥


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