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【しんけい #15】「次の患者や家族のため」をどう続けるか


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玉木 克志さん


 玉木さんは、一般社団法人日本ALS協会の理事を務めている。

 これまで何度か取り上げてきたが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)が障害をうけることで、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく進行性の難病。筋肉以外の、思考能力や意識、視力や聴力、内臓機能などは障害され難いと言われている一方で、病状の進行に伴って徐々に全身の運動機能が低下していく為、コミュニケーションが非常に難しくなる。

 最終的に全身に進行していく筋萎縮は、手から始まるケースが約40%、足から始まるケースが約30%、『球麻痺』といって舌、喉や口などの筋肉が痩せて嚥下困難や構音障害(しゃべりにくい)から始まるケースが約30%とも言われる。


 2000年のお正月のことだった。玉木さんのお父様は餅がのどにつまり、それを吐き出すのに苦労する。普通だったら「歳だから仕方がない」と片づけるだろう。玉木さんもそうだった。しかし、4月頃に「喋れなくなってきた」。まさに『球麻痺』だった。県内の大きい病院に行き、最終的にALSと診断された頃には、もう夏を迎えていた。

 初期症状から診断まで約8カ月を要したわけだが、「遅い人だと1年かかる方もおられる」と玉木さんは教えてくれた。類似の運動症状をもつパーキンソン病などと区別がつきづらいため、医師がALS診断に至るまでの明確な道のりがなく、そのうちに病気が進行してしまう。「その間、本人も家族も不安が続くんです」。


 玉木さんのお父様は2001年に他界するが、時を同じくして、一般社団法人日本ALS協会の愛知県支部の立ち上げを手伝ってくれないかと声がかかる。ALS患者の家族として「しんどかった。だからこそ、次の患者や家族が同じスタートラインから始めるのではいけない、自分の経験を伝えないといけない。」と、仲間と共に支部を立ち上げた。

 ALSとの関わりは、プライベートに留まらなかった。当時玉木さんは、ドアホン・インターホン・ナースコールなどの製造販売メーカーであるアイホン社でナースコールを担当していたが、「(筋萎縮の進行が進んだ)ALS患者はナースコールのボタンを押せなかった」。そこで、重度の障害を持っていても身体状況に応じて操作できるスイッチをそのまま接続できるナースコール『ワイヤレスホームコール』を開発した。この製品は見事、2003年の日本リハビリテーション工学協会の福祉機器コンテストで最優秀賞を獲得した。


 そして、あの頃からもう25年余りが経った。

 日本ALS協会は、罹患初期の患者さんが将来に抱く不安を解消したり、治療法の情報を発信・共有するのに大きな役割を果たしてきた。今でも定期的に患者家族会を開催すれば、先輩患者の話が聞きたい方が集い、人工呼吸器に伴う痰の吸引や透明文字盤を介した会話など、「密度の濃い」実体験が得られる。

 しかし、「今やネットでほとんどの情報が手に入るため、単に情報を得たいだけでは年会費を支払ってはくれず、協会全体として会員数は減少傾向にある」のが現状だ。また、玉木さんは現在68歳で、「頑張れても後2、3年」。協会には若い世代もいるが、当然仕事や子育てを優先せざるを得ず、「後継者が育っていない」。手伝ってくれる学生も「卒業すればいなくなってしまう」。そうした背景から、全国には活動を閉じる支部も出てきている。

 玉木さんは、こうした点について、「日本ALS協会全体の問題であると同時に、他の疾患の患者団体に共通する課題ではないか」と話された。それは間違いではないだろう。


 海外で国際ALS協会組織の会合にも参加する玉木さんからは、海外の取り組み事例もお聞きした。例えば、治療薬の開発に向けて国中のクリニックから情報が集まるようなシステムの構築や、近くのクリニックでどんな治療ができるかデータベースを整える構想。さらに国を横断しての患者団体のアライアンスの話など。

 確かに玉木さんが懸念される通り、一つひとつの支部の単位で継続的に活動することは難しくなってくるのかもしれない。しかし、これも玉木さんが教えてくれた「密度の濃い」実体験や患者が求める情報を共有することの重要性は不変だろう。

 こうした中で、いかにそうした経験や情報を地域や国を超えて流通させるか、そこが“患者団体”という塊を有意に存続させる手段になるのかもしれない。海外の事例を聞きながら、そう感じた。かつて「次の患者や家族のために」支部を立ち上げた玉木さん同様に、また違った形でその志を受け継ぐ仕組みがあるはずだ。そんな想いが頭を巡って離れない。






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