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ピンチをアドリブで乗り越える技 47/100(己)
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
この連載を読んでくださっている方々の中には、前回お話ししたように、自分の置かれる状況によって、キャラを変えることを求められている方々も、多いかと存じます。
もしかしたら、それは意識的なものではないかもしれません。
私たちは、その場の「空気」に応じて、もしくは、置かれている立場に応じて、見せる部分を変えています。
それが、社会で生きていく上では非常に大事な術であり、決して否定されるものでもありません。
それでいうと、子供は、自分の置かれる立場が限られています。この世は、自分を中心に回っており、それを脅かすものは少ないです。
もちろん、両親との関係によっては、家庭内よりも、もっと広い多種多様な社会で成長することを余儀なくされている子供たちも多く存在しますが、一般的には、子供たちが直面する社会は、大人が生きていかなくてはいけない、多種多様な社会よりは少ないと思います。
いや、少ないからこそ、その核となる親子関係が重要とも言えますね。
多くの子供達にとって、まず最初に変えていくのは、母親もしくは父親と「2人だけの時の自分」と、両親共にいる時の自分でしょうか?
自分というと、話が大きすぎるかもしれませんが、子供達と接していて、見せる顔を変えていると思う時はありませんか?
その次は祖父母の前、兄弟の前でしょうか?
それだけ幼い頃から、私たちはどの顔を見せるか、無意識に変化をつけています。
八方美人とか言われる以前から、私たちは状況に応じて態度を変えていませんか?
それは、至極普通のことであり、必要不可欠な処世術です。
ペットでさえ、相手によって見せる顔が違いますよね?
集団の中で生活する、生物として、当たり前のことです。
そういえば、野生の中で生活する動物たちはどうなんですかね?ご存知の方がいらっしゃったら、ぜひ教えていただきたいです。
状況に適合するというのは、成長過程の中で避けては通れない道だと思います。
さて、
そうすると、適合しようとする自分が持つ、複数の顔がある中で、その中核をなす、自分の素顔、とは一体なんなのでしょうか?
ここではそれを「己」としてみましょう。
前回ご紹介した「分人主義」に則ると、この「己」は存在しないということになってしまいます。
それって違和感がありますよね。
両親の次には、親戚、そして、公園や保育園という社会において、自分が「己」のどの側面を見せていくか、それを学んでいくのが成長だと思います。
そして、その社会の数や種類が、大人になるにつれて増えていきますね、そのうちに私たちは大人になっています。
思春期の反抗期は、もしかしたらそれと関連してるかもしれません。
社会に左右されない「己」を探すために、反抗するのかもしれません。
話は脱線しますが、わたしは、あまり反抗期というものを迎えた記憶がありません。
15歳で親元を離れて、演劇の勉強をするために単身イギリスへ渡った時、「狂言をやってる石田淡朗」という「己」が、はたして正しいのか?
という疑問を突きつけられました。
アイデンテティーへの疑問、いや、喪失というやつです。
それを親から離れた場所で経た私は、特に両親に反抗する必要性を感じなかった、のかもしれません。
(まあ、それから数年経って、父親と演技に対する価値観の相違が生じて、大喧嘩をするに至ったのですが、これって、反抗期ではないですよね??!)
自分の置かれる状況に応じて、人間関係に応じて、「空気」に応じて、どこではどういう顔を見せるべきなのか、学んでいくのだと思います。
少なくとも、私はそうでした。
母曰く、まだ幼い頃、つまり2、3才の時に、元々あまり騒ぐ子供ではなかったので、母親が少し良いレストランに、二人だけで連れて行ってくれたそうです。
その時、私は大人顔負けの態度で、小声で会話し、お行儀よく振る舞っていたとか…
私は、これが決してあるべき振る舞いだったとも思ってません。
なんなら、子供らしさのない、「ませたガキ」だとも思います。
でも、おそらく私たちは、こうやって「いろんな自分」を発見していく中で、「己」にとって最も心地よい、本来の姿を模索していくのではないでしょうか?
そうした過程を経て、少しづつ形成されていくのが「己」です。
そして、その「己」を核とした時、私たちは日々、異なる顔を見せて社会を生きています。
つまり、私たちは日常的に、
演技をしているとは思いませんか??
この連載を始めた頃に立ち返って、自問自答をする回となってしまいましたが、「演技技術」を語るにあたって、最も重要な部分なので、この形式で丁寧に検証しました。
ご意見、ご感想があれば、ぜひ伺いたいです!
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