ピンチをアドリブで乗り越える技 41/100(即興術09) -独白
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
見渡せばそこに、ヒント
今日からは、「独白(一人語り)」に関してお話していこうと思います。
私たちのインプロ劇団では、独白も行っていました。
単なるコメディーではなく、本格的な演劇にも引けを取らない作品を、即興で上演しようとしていたので、独白は必要な表現方法の一つでした。
中でも、わたしは結構この独白を得意にしていました。
発端は、ある公演の時、いつものように観客からいくつかキーワードをもらい、さあ開始という時、みんな調子が悪い日だったのか、誰も立ってシーンを始めとうとしません。
こういう時は、誰かが立てば、その相手役としてもう一人が立ちます。大抵の場合、最初に立ったメンバーは何かしらアイディアがあるので、もう一人はそれに乗る形で立ちやすくなります。
でもこの日は、誰も立とうとしません。
5秒、6秒、7秒、、、沈黙の状態が続きます。
これはまずい。
その日の公演のリーダーは私でした。
リーダーに与えられた責任の一つとして、観客からもらうキーワードを、精査して決めるという役割があります。つまり、誰も何も思い浮かばないような、観客からの提案キーワードを、決定してしまったのは私なんです。
今となっては思い出せませんが、例えば「箱」「赤」「慈しみ」としましょうか。こういう感じの、面白みのない、平凡な単語だったと思います。「友達」みたいな、関係性を表す単語が入っていれば、最初のシーンは友達同士の登場人物にしたりするのですが、このキーワードからは関係性は見えてきません。
抽象的な単語ばかりで、シーンの主題に直結しずらい、ハードル高めのキーワードです。
それでも、リーダーとしての責任をとって、とりあえず立ち上がりました。
頭の中は真っ白です。
他のメンバーもそれを分かっていたのか、誰も私に続こうとしません。
ピンチですね。
そんなぁ、、、と思った記憶はありますが、Tanrohなら何とかするだろうという信頼から来ているものだということも分かっていたので、特に苛立ちはありませんでした。
頭は空っぽ、何もアイディアがないことを観客に悟られぬように振る舞わなくてはいけません。
私は、ゆっくりと観客を見渡しながら、舞台の中心へ進みました。
確か、その劇場は妙な構造になっていて、舞台中央の前方、観客に近い位置に、細い柱が一本立ってました。(この頃私たちは大小さまざまな劇場を開拓中でした)
ゼロからはゼロしか生まれないと、33/100でお話ししましたが、この時はメンバー全員がゼロの状態。
観客の目線に応えるように見つめ返し、そこに何かを見出そうと、一歩一歩、しっかりとした足取りで時間を稼ぎながら、その柱の方へ歩いて行きました。
もちろん頭の中は、フル回転で第一声を探っています。
その柱は、劇場入りした時から気になってました。観客の視界を遮るほどの太さではないのですが、明らかに目障りです。劇団の共同主宰として、困った、良くない劇場を選んでしまった、と感じてました。
続いている沈黙、目障りな柱、私にかかるプレッシャー。
ああ、いけそう。
おもむろに、背中を柱にあずけ、両手を柱の後ろで縛られているかのように、交差させました。
瞬時に、苦痛な表情を浮かべ、観客を睨みつけ、息を荒げながらこう言ったと記憶してます。
「分かった…話すよ。聞きたいんだろ?レッドについて。俺たちがあいつをどうしたか。」
この時私が観客の方を見ていなければ、他のメンバーが立ち上がって、私を拘束している側の役になったことでしょう。
でも、私の目線は沈黙を埋めるために、観客に向いていたので、方向的にそれはおかしいです。仕方ないですね。腹を括るしかありません。
そこから私は、我々組織がレッドを捕まえて、彼を箱の中に閉じ込め、何をしたのかについての、一人語りを始めました。(慈しみを込めて)
連載50回を記念して、オンラインのQ&Aを開催してみようと思います。
わたしの文章力の乏しさから、上手くご説明できていない部分も、多々あるかと存じますので、この機会に何なりとお尋ね下さい。
また、この連載は「出し渋っていてもしょうがない!」と思い、シェアコミュニティーの意識で、無料公開しておりますが、Q&Aには3000円の参加費を頂戴したく存じます。
今後の展開へ向けての投げ銭と思い、ご支援を賜われますれば幸いです。
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