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ピンチをアドリブで乗り越える技 32/100(即興術)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


演技とは、常にアドリブ

『ピンチをアドリブで乗り越える技」と題して、今まで色々なツールを赤裸々にご紹介して参りました。

主に、

ピンチに陥った瞬間、何を意識して、どう活路を見出すか?

という観点からお話ししてきました。

31回まで来て、それぞれのツールに関連性を見出し、横糸が通ることによって、「役者の思考回路」というものの全体像が、徐々に見えてきたのではないかと思います。

今日からは、

アドリブ力を鍛えるにはどうするか?

という観点から、アドリブ≒インプロと定義し、即興力を鍛えるためのツールを連載していこうと思います。

そもそも、演技には必ず、即興の要素が入り込みます。

台本や決められた演出があるにせよ、毎回の公演や、撮影時の毎テイク、常に即興性を保っていないと、新鮮さが失われていきます。

役者自身も、飽きてきます。

コメディーに至っては、前回の成功を期待して、それを再現しようとすると、必ずと言っていいほど滑ります。

都度都度、相手のセリフはもちろん、観客の状況まで含めて、深く傾聴(5/100参照)し、即興力をもって、細かい表現の部分を、演技していかなくてはなりません。

まさに、アドリブです。

狂言では、その要素がさらに濃くなります。

型というものがあり、セリフの抑揚まで、こと細やかに決められている中で、その微妙なニュアンスや強弱、密度などに表現の幅を見出します。

何もかもが、決められているような世界においても、それが人と人との対話である限り、そこには常に、即興性がなくてはいけません。

それが、プログラミングされたロボットと、一線を画す表現の部分です。

ではその即興性、どうすれば身につくのでしょうか?

私は、ロンドンで10年ちかく、インプロの劇団を共同主宰してました。
はじめは、インプロの神ともいえるキース・ジョンストンにならい、彼のメソッドを重要視していました。

パートナーの主宰者が、オックスフォード大学で長年続くインプロ劇団出身だったので、オックスフォード大学のメソッドも入っていたでしょう。

その後、わたしたちは喜劇性を重要視した、ショーとしてのインプロから離れ、「プロの役者が行う即興劇」へと方針転換をしました。

全盛期は、45分間の普通の演劇、ドラマチックで観客の涙を誘うような内容のものを、完全なる即興で行うという公演をしていました。
(もちろん喜劇性も含みます)

当時、ロンドンでこんな無謀なことをしていたのは、私たちだけでした。
この挑戦のために、イギリスの演劇学校で学ぶ演技力と、即興性をどう融合させるか?

また、45分間もの間、事前の相談も、劇中の相談もせずに、無事に公演を終えるには、どのようなスキルが求められるのか?

またそのスキルを習得するためには、何をすればよいか?
を模索し続けてきました。

45分間も続けていれば、ピンチはいくらでも発生します。

思い返せば、ほぼ毎回ピンチだらけだったかもしれません。

それでも、公演を止めることなく、笑いに逃げずに、リアルな芝居として、ひとつの物語をやり遂げる為に積み上げてきた多くの技は、「インプロのスキル」と「演劇学校のツール」を融合させた、私たち独自のメソッドです。

その中から、とくに皆さんのお役に立ちそうなものを、ご紹介していきたいと思います。

引き続きよろしくお願い致します!



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