運動を日常に変えることは、ウェルビーイングなライフスタイルへ変容するために必要なのか?
"There is only one way to succeed in anything and that is to give it everything.”
成功するにはたった一つの方法しかない。全てを捧げることだ
- Vince Lombard
伸び続ける寿命と衰えていく身体
トレーナーの迫慶太です。人生100年時代と言われてから、少しづつ老後について考える配信を目にすることが多くなってきました。皆さんの30年後に自分はどうなっているか考えていますか?保険、投資、老後の資金などはよく耳にしますが、健康への投資はどのくらいしていますか?運動と聞くと、「健康のための習慣」という程度に捉えている人が多いかもしれない。しかし、運動は情動の安定や困難に直面した時の自己変容を支え、より良く生きる基盤をつくる。新型コロナウイルス禍の中、自宅で座って過ごす時間が長くなった人も多いかもしれません。ところが、4万8000人を対象にした大規模調査において、運動をしていない人は、している人に比べて新型コロナ感染による死亡率が2.5倍高く、ICU(集中治療室)に入る確率が2.25倍高いとの報告もあります。今回は超高齢化社会へ向かう私たちが知るべき健康投資とそれを支えるトレーナーの選び方についてご紹介していきます。
パーソナルトレーナーとは?
”パーソナルトレーナー=ダイエットさせてくれる人”なのか日本のパーソナルトレーナーには、このイメージが付き纏う。人はなぜ数字を追い求めるのか?ダイエット=体重ではなくどうなりたいかではないでしょうか?スタートアップの際は見た目をよくしたい方が多くで、そもそもの動作や所作の機能や習慣化がされているとは言えないことがほとんど。パーソナルダイエットジムの存在は、いい意味で運動文化を作り上げてもらいました。そもそもパーソナルトレーナーは、直訳すると”個別の運動を教授する人”となる為、クライアントが望むことをサポートすることが仕事です。単純にダイエット応援団ではなく、生涯のライフスタイルパートナーにもなりえる仕事だと言われています。
パーソナルトレーナーという仕事は、2000年ごろからライセンス発行する団体が日本でも増え始めました。筆者自身、インターネットの普及をし始めた中で、英語で検索して出てきたオーストラリアへ留学し運動指導者としての道を歩み出すことにしました。しかし、予備知識もなく渡豪した私に衝撃となる洗礼が待っていました。
泥臭い修練のような運動だけが私の常識でしたが、オーストラリアの青い空に白い雲、そして広がる素敵なビーチで運動をしている二人組がいました。それが、パーソナルトレーニングだと知り「これがフィットネス先進国か」そう感動したことを今でも覚えています。日常に運動があり、ワークアズライフとして、仕事も趣味もライフスタイルの一部になっている生活は、ストレスを限りなく減らすコツであり、パーソナルトレーナーは幸福度をあげるライフスタイルへと繋がる仕事だと感じました。
パーソナルトレーナーの仕事
パーソナルトレーナーは、ライフスタイルに運動を軸にした健康という習慣と醸成を築く仕事である。性別、身長、体重、職業、家族構成、居住地、好きな食べ物、音楽、ファッション等。十人十色様々なクライアントを見てきました。トレーナーの仕事は、多岐にわたり一人のクライアントのライフスタイルをサポートするアドバイザーとしてイニシアチブをとれるかは重要なポイントです。
それがプライベートジムなら指名制があるジムか、ないジムかでまたサポートの仕方が変わってきます。まず大切なのは運動の習慣をつけていくことが最大のミッションです。しかし、ただやるだけではなく、よくやることが大切であり、量をたくさんすることで、短期的なミッションはクリアできる可能性はありますが、本当にそこがゴールなのかを見極めることができているトレーナーなのかを見極める顧客の目も必要となります。
量より質
量の時代から質の時代へと変わってきていることから、運動を習慣化することを量で捉えるのではなく、1週間に一回のセッションで動作の質をあげるエクササイズを入れられるかが、セッション以外の仕事や趣味の時にカラダを動かした際の動作の醸成と言っています。パーソナルトレーナーは、習慣と醸成を意識しているかが、クライアントの時間価値をあげることになる。
運動を続けることで脳は発達する
学力1位の理由は「運動」米国イリノイ州ネイパービルの中学校で起きた実話をご紹介します。特に学力の高い学校ではなかったそうですが、1999年、TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)という世界的な学力テストで、この学校の中学2年生が理科で世界1位、数学で6位という成績を取ったという結果もあります。
ネイパービルの奇跡
この結果は全米の注目を集め、ハーバード大学がその理由の調査に入りました。すると、始業前の生徒に最大心拍数の約80~90%の負荷がかかるランニングを課していたことが分かりました。これが成績向上に影響した根本的な要素であると、調査チームは結論づけています。最大心拍数の約80~90%というのは、かなりきつい強度の運動です。理科と数学は、この運動直後の授業科目でした。運動直後の3時間程は、記憶力が20%近く向上することが研究で分かっています。実はこうした効果は、高齢者でも確認されています。
60~75歳の修道女を対象とした研究(※1)で、週3回20~30分の有酸素運動をしたグループでは、そうでないグループに比べて、3~6カ月後の国語と算数の成績が約25%高く、社交性も高まりました。ただし、運動習慣をやめたところ、約3カ月で元に戻ってしまったそうです。これらの知見を踏まえて、丸井グループでも2016年、全社員を対象に集団分析を実施しました(※2)。すると、14年度の健康診断時の調査において、「1回30分の汗をかくような運動を週2回以上、1年以上実施している」群は、15年度の業績評価が統計学的に有意に高く、14年度と比べても有意に上昇していることが分かりました。
運動と脳細胞の関係
中等度以上の運動をすると、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が脳で放出されます。これにより脳の神経結合が促され、記憶力向上や思考力を高めると考えられています。BDNFには脳を修復する機能もあり、認知症予防の面でも注目されています。運動は強力な認知症予防の方法なのです。近年まで、脳の神経細胞(ニューロン)は年を取るにつれて死んでいくだけで、新しくは生まれないという見方が主流でした。
しかし最近では、年を取っても新しい細胞は生まれており、ニューロンのつながりも新しくできることが分かってきました。ただ、細胞は新しく生まれるのですが、それらは加齢に伴って使われずにほとんどが死んでしまいます。脳細胞の生き残りを増やすにはどうすればよいのか。有効な方法は、「努力を要する学習」、あるいは「運動」です。特にランニングなど、息が上がる程度の有酸素運動がより効果的です。数々の研究から、運動習慣は脳細胞の生き残りと活性を高めることが分かってきました。
運動が自己変容を支える
仕事にストレスはつきものであり、働く人にとってストレスに対処する能力は重要です。米国心理学会は、科学的エビデンスに基づき「5つのストレス対処法」を提示しています。その1つが「運動」で、息が上がる程度の有酸素運動を週3回(20~30分が目安)実施することを推奨しています。有酸素運動には、強力な抗不安作用があるのです。運動と脳の研究領域において世界的に有名なハーバード大学医学大学院のジョン・J・レイティ博士は、自著(※3)において、運動はストレスによる不安やうつ症状を改善するだけでなく、集中力、注意力、やる気をも高めると述べています。
変化や困難に対応する適応的知性を高めるには、「痛み+内省=自己変容」が重要である。変化や困難に直面し、自分の従来の価値観や信念が通用しなくなり、それを変える時に私たちは心の痛みを感じるものです。運動は、その痛みを受けとめ、内省する力を育みます。人は古い価値観のまま自己変容しないという安易な道を歩んでしまいがちです。運動による不安の軽減や、脳細胞の活性化による発想の転換という支えがなければ、「痛み+内省」による自己変容への道のりは、より困難なものとなるでしょう。運動が適応的知性を高める本質的な支えとなるのは間違いありません。「運動が脳の機能を最善にする唯一にして最強の手段であることは、何百という研究論文に基づいている」と言われています。※3 『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』(NHK出版)
運動とウェルビーイング
運動を習慣にするということは、ライフスタイルを豊かにする一つの秘訣であり、これがウェルビーイングへと繋がる。ウェルビーイング(well-being)とは、「幸福」「健康」という意味に加え、身体だけでなく、精神的、社会的にも満たされている広い意味の幸福を指す概念を言います。世界保健機関(WHO)憲章では、健康とは何かを説明する前文にウェルビーイングという言葉が使われています。「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること(ウェルビーイング: well-being)をいいます」(引用:公益社団法人日本WHO協会「世界保健機関(WHO)憲章とは」)
パーソナル〇〇トレーナーの存在
これからのフェーズは、パーソナルトレーナーもカテゴライズされるべきである。パーソナルフィットネストレーナー、パーソナルコンディショニングトレーナー、パーソナルダイエットトレーナー、パーソナルウェルビーイングトレーナーなど。様々なシーンで、様々なニーズに受け入れられる個別トレーナーが広がることは、運動文化の醸成へと繋がり”運動すること=楽しいこと”となる。ウェルネス=健康、ウェルビーイング=幸福度(心身ともに理想的な状態)を提案するトレーナーが必要だと考えます。
パーソナルトレーナーの選び方
ここからは20年弱トレーナーとして活動してきた筆者が独断と偏見で通いたいと思えるトレーナー像をご紹介させていただきます。当ジムでも取り入れている内容であり、筆者自身が通いたいと思うジム像を示したものになります。※解剖学や運動生理学などの基礎的な知識がある事が前提となります。
①時間価値にこだわる
②運動を軸にしたサービス業という理解がある
③クライアントファースト
④老後の未来像まで描いてくれる
⑤運動が好き
⑥時事ネタに強い
⑦勉強熱心
⑧様々なサービスを受けている
⑨聞き上手
⑩常にポジティブ
これから超高齢化社会になっていく中で、もっともっとトレーナーが活躍できるフィールドが必要であり、老若男女が運動を日常的に行なっているライフスタイルを過ごしてもらえることは、高騰する医療費の削減にもつながります。持続可能なカラダ作りには、パーソナル〇〇トレーナーがたくさんいる世の中が理想的だと筆者は考えております。最後までお読みいただきありがとうございました。