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私の英国物語 Broadhurst Gardens NW6 (32) Lent

寒さも一段と厳しくなる2月、暖かい春が待ち遠しくなる。
磔刑に処されて亡くなったイエス・キリストの復活を祝う Easter (復活祭) はキリスト教徒の最も重要な祭事。
日本でも Easter のことは知られているが、イースターまでの準備期間には、実に様々な典礼行事がある。

Ash Wednesday (灰の水曜日)から Easter Eve まで、日曜日を除いて40日間、回心と償いにつとめ、飲食を控えて質素な生活を送る Lent (四旬節)が行なわれる。
Lent は、春になると日が長くなるということから、“spring” (春)を意味する古期英語の、“lencten” からきている。
ラテン語では "quadragesima" (40日の期間)という。“40” は、イエス・キリストが荒れ野で40日間断食をしたことに由来する。

Ash Wednesday には、前年の  Palm Sunday の典礼に使用した棕櫚の葉を燃した灰を回心の印として塗布する灰の祝別式と塗布式が行なわれる。
灰はイエス・キリストの死と復活、そして、罪からの解放を意味する。

Lent 期間中の第4日曜日を "Mothering Sunday" といい、英国では「母の日」である。 第5日曜日は "Passion Sunday"、最後の日曜日を "Palm Sunday" といい、Easter 前の一週間が "Holy Week"。 その週の金曜日 "Good Friday" と "Easter" の翌日 "Easter Monday" は、祝日、bank holiday となる。

Ash Wednesday 前の3日、あるいは1週間を "Shrovetide" (懺悔節)といって、レントに入る前に "Carnival" (謝肉祭)をし、ご馳走を食べて祭りを開催する。
イタリアのヴェネツィアやブラジルのリオのカーニヴァルは世界的にも知られるが、英国各地では、“Mob-football” と呼ばれる、中世から続くルールなき過酷なフットボール大会が開かれる。
また、懺悔節の最後の日 "Shrove Tuesday" は "Pancake Day" ともいい、翌日から始まるレントの前にオイルやバター、卵やミルクを使いきってしまおうという日である。 パンケーキといっても、薄焼きのクレープのようなもので、レモン汁やジャムなどをつけて巻いて食べる。
このパンケーキにまつわる "Pancake Race" という楽しい競技も英国各地で行なわれる。 パンケーキをフライパンに載せたまま走るという競技で、途中で数回パンケーキを投げ上げてひっくり返さなくてはならないという、ちょっとしたスキルを要する。 この伝統競技は、1445年、Olney に住む主婦がパンケーキを焼いている時に懺悔の時を告げる教会のベルを聞き、慌ててフライパンをつかんだまま教会に走って行った、というのがもとになっているそうだ。

レントの節制は、祈り、断食、慈善の3点を通じた悔い改めの表明と解されている。 現在では、断食までする人は少ないそうだが、普段より肉食を控える人々は多いようで、ミセス・マーティン宅での夕食は、毎週金曜日が「魚の日」とされていたが、レントの期間中は、肉料理がいつもより控えめにされていた。 また、食卓では地域で催されるチャリティー・バザーのことが話題になることもあった。

Easter は、春分の後の満月直後の日曜日とされるので、毎年日付が変わる移動祝祭日。
因みに、2024年は、3月31日が Easter なので、2月14日から Lent が始まる。

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