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私の英国物語 Broadhurst Gardens NW6 (21) Trafalgar Square Christmas Tree

12月が始まり、Advent が始まった。 “coming” を意味するラテン語の “adventus” からきている、この Advent (待降節) は4週間続き、この間に教会や家庭では Christmas (キリスト降誕祭) の準備をする。

クリスマスの準備は、11月から少しずつ始まっている。
ショッピング街では、それぞれのショップが趣向を凝らしたクリスマス仕様のディスプレイで人々の目を楽しませている。ストリートは鮮やかなイルミネーションに彩られ、バスから眺める車窓も楽しい。
そうして、広場にはデコレーションも美しいクリスマス・ツリーが立てられ、クリスマス・マーケットが開かれる。

クリスマス・ツリーを飾る習慣というのは、もともと英国にはなかった。
この習慣をもたらしたのは、1761年、King George III に嫁いだドイツ人の Charlotte of Mecklenburg-Strelitz。 そして、一般庶民にまで広まったのは、ドイツ人の Prince Albert と結婚した Queen Victoria の時代。
フラットでは、「ドイツでは、アドヴェントの主日ごとに Stollen を食べて祝うの。」と、Andrea、Inken、Kathrin の3人が、ティータイムのお菓子にシュトレンをふるまってくれた。

こうしたクリスマスの飾りの中でも、ロンドンの風物詩として欠かせないものに the National Gallery 前の Trafalgar Square に立てられる、大きなクリスマス・ツリーがある。
このクリスマス・ツリーは、毎年、Norway の Oslo から贈られるものである。

第二次世界大戦中の1940年、ノルウェイは、ヒトラー率いるナチス・ドイツに侵攻された。 
国王 King Haakon VII とノルウェイ政府は英国へ退避し、英国で亡命政権を樹立。そして、ラジオを使って祖国解放のために戦うレジスタンスへ戦局を伝え続け、ナチスに抵抗を続けた。
5年後の1945年、戦争は連合軍が勝利し、ノルウェイは解放される。
1947年、国王 King Haakon VII は、第二次世界大戦中の英国の支援に対する感謝のしるしとして、ノルウェイから英国へクリスマス・ツリーを贈った。そして、毎年、ノルウェイから「感謝のクリスマス・ツリー」が贈られる伝統が始まった。

英国に贈られる樅の木は、ノルウェイの森に育った樹齢70~90年、高さ約20mほどの樅の木が選ばれる。
毎年11月に “the tree felling ceremony” (伐木の儀)が、オスロ市長、ウエストミンスター市長、駐ノルウェイ英国大使によって執り行われる。
樅の木は、トレーラーで森から100km以上離れた港へと運ばれ、船でロンドンまで輸送される。 そして、通関と検疫を受けた後、トレーラーでトラファルガー広場へと到着。
樅の木は、ノルウェイ伝統の様式で、白色灯のツリートップと電飾500個を縦に連ねたシンプルなデコレーションが施される。

クリスマス・ツリーの土台近くには、由来が記されたプラークが立っている。
"This tree is given by the city of Oslo as a token of Norwegian gratitude to the people of London for their assistance during the years 1940-45.
A tree has been given annually since 1947."

クリスマス・ライツの点灯式は、12月の第一木曜日、ウェストミンスター市長によって執り行われる。
クリスマス・マーケットで賑わう広場に大きなクリスマス・ツリーが加わり、広場では、聖歌隊によるクリスマス・キャロルのパフォーマンスが催され、いっそうクリスマスの雰囲気が盛り上がる。

トラファルガー広場のこのクリスマス・ツリーの下では、様々なチャリティー団体を中心に聖歌隊がクリスマス・キャロルを唄い、慈善募金を集めることができる。
多くはアマチュア合唱団で、支援するチャリティ団体への募金を呼びかけるため、練習を重ねて参加するのだそう。
ショッピング街の広場の煌びやかなクリスマス・ツリーに比べれば、素朴でシンプルなクリスマス・ツリーかもしれないけれど、本当の意味の
"Christmas spirit" は、こういうものなんだ、と聖歌隊のクリスマス・キャロルを聴きながら思っていた。



 


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