大学卒業後に就職せずオーストラリアへ。吉永晃さんのゼロからはじめる挑戦
オーストラリアでサーフィンと英語を学んでいる吉永晃さん。彼はなぜ大学卒業後に就職せず海外に飛び出したのか。オースストラリアに滞在して5ヶ月が経った彼に、その経緯を聞いてみた。
一番最悪な道を選ばれた
大学時代に部活のトライアスロンをやり遂げたあと、吉永さんは新たなスポーツに挑戦したい思いが芽生えたという。
「サーフィンの上手な人達がカッコよく見えて、次に挑戦する種目をサーフィンに決めたんだ。せっかく挑戦するなら真剣に取り組みたいから、素人だけどプロを目指すことにした」
また、英語を話せるようになりたい思いもあり、その2つができる場所は、サーフィンの大国であるオーストラリアだと思い浮かんだ。
しかし、当時は就活を控えている大学生。吉永さんは救急救命士の国家資格を取得できる学部に所属していた。
同級生150人のうち、ほとんどの生徒が資格や専門知識を活かして就職を選択するなか、海外に行くことを選択をしたのは、吉永さん含めて2人くらいしかいなかったそう。
「新卒を捨てるか悩んだけど、国家資格を持っているから別の道に挑戦できると思った」
仲のいい友人に「プロサーファーになるためにオーストラリアに行きたい」と伝えても馬鹿にされ、両親にも「意味がわからない。一番最悪な道を選ばれた」と受け入れてもらえなかった。
「ものすっごいアウェイだった。周りから散々に言われて、自分がやりたいと思っていることは、そんなにおかしいのかなって......。
だけど、年齢的にスポーツに挑戦できるのは最後かもしれないから。ここでやってみないと後悔する気がした」
追い詰められていく日々
そして、大学卒業後に吉永さんは単身でオーストラリアへ渡る。はじめは生活できる環境を整えることに専念したという。
「ほとんど何も知らない状態で行ったんだ。ネットの情報は似たようなものばかりで、古いものもあるから現地で調べた方が早いと思って。
わからないことがあったら、日本人を見つけてその場で尋ねた。スーパーの場所やパスモの作り方、仕事の見つけ方まで、一つひとつ教わった」
吉永さんは英語に慣れるために日本人のいない職場を選んだ。仕事の面接中に英語が聞き取れず、「君はもっと英語を勉強した方がいい」と言われることもあったが、それでもアルバイトの採用が決まり、働く場所を見つけるのに苦労はしなかった。
問題だったのは長期間住める家がなかなか見つからなかったことだ。そこにはコロナや出稼ぎに来る外国人が増えている影響があった。
「バイト先に1時間半掛けて通勤してた。フルタイムで働いたあと、また1時間半掛けて宿に帰って。毎日ヘトヘトだった。その間も借りられる家を探してたんだけど、全く見つからなくて......。
気づいたら寝る場所を繋ぎ止めるために、2ヶ月で宿を10回も変えてたね。日に日に貯金は減っていくし、ストレスで泣く日もあった。最悪、日本に帰ろうと思ったよ」
どうして日本に帰らなかったのかと聞くと、吉永さんはこう応えた。
「帰りたかったんだけど、日本を発つときに空港で『頑張ってくるね』って友達と別れたのに、すぐに帰ってくるのはダサすぎるから(笑)。
それは恥ずかしくてできないと思って、意地でなんとかしたかった(笑)」
運が味方をする
家が見つからず、このままではまずいと感じた吉永さん。滞在しているゴールドコーストという都市部から田舎町へ移動することを決断する。
「ビザの期間を延長するために田舎町にある工場で働く予定だったから、もう行ってしまおうと思って。バイトを辞めないといけないし、ゼロから環境を整えることになるけど、うまくいかないなら次を考えて動くしかなかった」
「移動するための車を買って、お金を払ってホームステイ先を用意してもらったから貯金のほとんどがなくなったけど、あんなに見つからなかった家も、田舎町の親切なホストファミリーのおかげで貸してもらえることになった。働く場所もサーフィンができる海の近くで見つかったんだよね。
本当に運がよかったと思う。今は生活環境が安定してきて、精神的なストレスはかなり減ったね」
今までのことが嘘のように吉永さんの理想の環境が整った。
やろうと思えばできる
さらに英語での会話にも変化が起きた。ホームステイ先に越してきた当初は、ホストファミリーとの会話がままならず、翻訳アプリを通じて会話をしていた吉永さん。そこから3ヶ月が経った今では、アプリを使わなくとも会話を楽しめているという。
「英語は生きていくために使わないといけないから、発音や文法はめちゃくちゃでも話してた。間違った部分を直してもらったり、わからない単語を調べたりしていくうちに、少しずつ身に付いていったよ。
ホストファザーが、『ホームステイに来たときは、言葉が通じなくて大変だっただろう。今じゃ、一緒にご飯を食べながら会話ができている。おまけに仕事もして、よく頑張ったな』って言ってくれてさ、泣きそうになった(笑)」
さいごに、オーストラリアに行ってよかったことを聞いてみた。
「オーストラリアでは人の目を気にする人が少なくて、時間もお金も好きなことや大切な周りの人に使っているんだよね。だから自分も見栄とかじゃなくて、時間やお金を好きなことに使うようになった。
最初は何もかも一からで大変だったけど、できなかったことが、少しずつできるようになっていくのがおもしろいんだよね。過酷だった5ヶ月を乗り越えて、やろうと思えばできるんだって自信がついたんだ」
(執筆:タオ)
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