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城島洸一、それは世界一「名誉返上」が似合う男(湾岸ミッドナイト)

数か月前、ネットの友人の勧めで『湾岸ミッドナイト』を読み始めたけどこれがなんとまあ面白いこと。じっくり読み進め、最近は後半のマコト編に突入した。創作で大切な精神が詰まったものづくりのバイブルですよホント。

湾岸ミッドナイトは下記のヤンマガwebより視聴可能です。会員登録時に20000ペリカ、毎日のログインボーナスで1000ペリカが貰えます。それに対してマンガは1話500ペリカで読めるので急いで読まない限り実質無料で読めます。

さて、世の中「汚名挽回」と「名誉返上」という誤用めいた言葉がある。汚名挽回は「汚名を被った状態から挽回する」という意味であって実は誤用ではないと言われている。俺もその意見に賛成だ。言葉の響きからしてそう解釈するのが自然だろう。

一方の「名誉返上」はあまり聞かない。なにしろスキャンダルとか無い限りわざわざ進んで名誉を辞退する意味はないだろうから。そもそも名誉ってどういう意味だろう。いちばん分かりやすいのは「○○賞」とかか。他にも、富、権力、肩書き、実績……ようは社会的ステイタス全般と読み替えてもいいだろう。

して、湾岸ミッドナイトの城島洸一(きじま こういち)。城島は作中で有名な自動車評論家であり、それを誇示するようにベンツを転がしていた。実際、作中でも城島は「ベンツでも乗らなきゃ(評論家として)ハッタリが効かねえよ」的なことを言っていた。城島にとってベンツは単なる高級車である以上に、肩書きや実績を示す「名誉」の象徴だった。

ところが物語の後半、城島は昔乗り込んでいたFC型RX-7を取り戻すのだが、さらにそのFCを300kmで走らせるために改造費としてベンツを売り払ってしまうのだ。作中でも「思い入れのためにベンツ売るとかアホかよ」とか「せめてFD買えよ」とか散々言われたが、城島は「これが俺のこだわりだ」の一点張りであった。頭文字Dみたいな連続低速コーナー攻略ならともかく、ポンコツのFCで湾岸線を300kmで飛ばすのは無茶な話だ。それに首都高最速の悪魔のZに勝ったところで世間に自慢できないし、むしろスピード違反の即免停でキャリアに傷が付くことは間違いない。それでも城島は自分のこだわりのために名誉を売り払った。私はその時はじめて「名誉返上」という言葉がピタリと当てはまる場面に出会った。

湾岸ミッドナイトは他にもこういう具合に「分かる奴だけ分かればそれでいい」というスタンスでこだわりを貫き通すダサカッコイイ大人たちが出てくる。今でこそ「好きなことを仕事にする」とかって言葉が綺麗事のように語られる時代だが、湾岸はそれを泥臭い目線でそれを語ってくれる。現実はもっと大変なんだろうけど、それでもやっぱポリシーを貫き通す人生って憧れちゃいますよ。

(ちなみに今となっては世界的イニD&湾岸ブームでFCがベンツより高くなってるのはヒミツ)

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