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一瞬先の永遠



考える。


何億年前の人が生み出したモノ。
何億年先の人が生み出すモノ。

それは、今の僕たちに必要なモノなのだろうか。大切なモノなのだろうか。生きるために必要なモノは至極少ない。それ以外のモノで溢れかえる世界。

大掃除をして綺麗にしたら、残るモノは何だろう。

これは、地球環境を訴えるメッセージではない。未来の子ども達に向けた広告でもない。


ありふれた日常の一コマで、何がわかるだろう。

「そろそろ起きてよ、もう九時半だよ。」
カーテンから漏れる光で目覚める朝。

「いやいや、朝ご飯食べ過ぎじゃない?」
満腹感で始まる、笑顔の食卓。

「ねぇねぇ、この服でいいかな、似合ってるかな。」
外の世界に出る前の、胸が弾む気持ち。

「うん、似合ってる、めちゃかわいい。だから早く行かない?」
待つ楽しさ。

「うわぁ、電車結構混んでるね。」
肌に触れる人々の温もりと、大切な人の温もりとの温度の違い。

「どっちがいい?このスカートとワンピース。」
好きなモノを選ぶ時間と、大切な人の喜ぶ顔。

「ご飯にしよっか。何か食べたいのある?」
落ち着かせる空間と、息をつく暇。

「すごい美味しそう!これインスタのストーリーに載せるね。」
人から共感を得たいという欲望。

「外めちゃくちゃ寒くなってるじゃん。」
冷たいという感情に上書きされる、寄り添えるという暖かい期待。

「手、つなごっか…。」
赤くなる顔。

「じゃあ、またね。バイバイ。」
楽しさと比例して大きくなる、離ればなれになる辛さ、寂しさ。

「うん、また。」
また会いたいという素直な気持ち。

「今日はありがとう。すごく楽しかったよ。」
電波に乗って伝ってきた、幸せの余韻。


この世界は発達した技術によって多くのモノで溢れている。僕たちの欲しいモノもどんどん増えていく。今までは満足していたモノも、時代の変化につれてより高いモノを要求し、我が儘になって、とうとうないものねだりまで始める。

元々は何一つ無かった世界がここまで発展したのはそういった飽くなき探求心からなのだろう。
それでも僕たちは本当に大切なモノが何なのかわかっていない。
生きるためには、水も食べ物も、空気もお金も全部必要かもしれない。



でも、本当に大切なモノは言葉では言い表しづらい。

あなたとの会話。
かけがえのない時間。
一瞬、一瞬、一瞬。


それは振り返って初めて気付く。
手元から離れて、時間が経って、思い出して、この世界が自分だけじゃないということを強く思い知らされる。

誰でもいいわけじゃない。
大切なモノはきっと、あなたといるときに感じることができる。得ることができる。蓄えることができる。
それはこれまでも、これからも、ずっとずっと変わらない、普遍の定理のようなものだ。
あなたといた時間の一瞬一瞬が、抱きしめたいほど愛おしいモノになる。



そして、その一瞬の先に、
永遠に残るモノがある。

今を生きていると実感させてくれる、今までのモノ。これからのモノ。

振り返ると、何億年前の人と人。
前を向くと、何億年先の人と人。

ずっと変わらないことは、隣にあなたがいたということ。あなたが沢山のモノを与えてくれたということ。


それが、生きるということ。

あなたが死んだら生きていけない。
そんな言葉、言わなくてもわかるでしょ?


「あー、なんで好きになっちゃったのかなぁ。」
一瞬の溜息から漏れる、一生解決のできない永遠の疑問。

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