フラスコの木の実

昔、昔。

ハチミツを瓶に詰めて村の人に売って、

生計をたてている1人の男がいました。

そのハチミツの瓶は「Honeyth Heart」と言って、

村の人にはとても喜ばれていました。

ある日、

村に都会から来た1人の商人が、

そんな彼に、

ある朗報を教えてくれました。

商人「この村と2つの山を越え、

崖の上を登ったところに、

この世界で巨万の富をもたらす黄金の実が、

なっている。」

「Honeyth Heart」を作っている男は、

その話しを聞き、

鼻の穴を大きくし、

それはたいそう興奮しました。

男「おお、それはすごい。

私は今よりもっとお金持ちになれる。

商人さん、

私もその実が欲しくなりました。

私はすぐに旅の支度をして

黄金の実をとって来ます。」

ハチミツを作っている男は、

いきなり、

ハチミツの工場を放ったらかして、

家族もかえりみず、

さっさと旅に出てしまいました。

…。

男は道中なだらかな傾斜の山を越え、

急な斜面の山も何とか越え、

旅は順調でした。

しかし、

リュックの中につめこんでいた食料は、

この時点で、

すでに残りわずかとなっていました。

男「参ったな〜…。

この先の崖を登りきるには、

何か食料を蓄えないと大変だぞ。

何か食べれる物は…。」

!?

男は辺りを見渡し、

ある泉を発見しました。

その泉の脇にあった看板には、

看板「このほとりにあるキノコには注意せよ。

食べ過ぎ厳禁。」

と書いてありました。

男は少しちゅうちょしましたが、

男「ここまで来て、

後戻りは出来ない。

これをリュックに詰めよう。」

と言い、

たくさんのキノコをリュックにつめこみました。

そして、

険しい崖をのぼり始め、

男は一生懸命あせをかきながら、

合間をぬってキノコを食べ続け、

ようやく険しい崖をのぼりきりました。

男はひどく疲れていて、

目がかすんでいました。

しかし、

崖をのぼりきった森の中には、

かすんだ目を眩しく照らす大きな光が、

男の目に訴えかけるのです。

黄金の実「この世の富へようこそ。」

男は大きく呼吸をし、

男「おお、これが噂の。

黄金の実。」

男の目には、

黄金の木の実はこう映っていたのです。

男は、

できる限りリュックの中に、

黄金の実をつめこみました。

そして、

帰りの急な斜面の山を越えた所で、

男は倒れてしまいました。

…。

そして数日後、

男は何かの物音に気づいて目を覚ましました。

目を覚まし映った光景を眺めると、

そこは見覚えのある作りの天井でした。

我が家です。

男の家族は心配になり、

男の行方を探していたのです。

無事、家に帰って来た男は、

少しボーっとし、

ベッドの近くに置いてあったリュックに、

気づきました。

男「おー、大変だ!!

子供達よ!

妻よ!

私は黄金の実を手に入れたのだ!!」

家族「…。」

男「…。

どうした!?

なぜ喜ばない!?

黄金が我が家にあるのだぞ。」

そして、

家族の1番下の子供が申し訳なさそうに、

男に1つの赤いリンゴを差し出したのです。

男「…。

!?

どうした??

そんなものは要らない。

黄金が…。」

男はリュックの中からこぼれた、

たくさんのリンゴを見かけてしまいました。

男「…そんな。」

妻「あなた…。」

男はしばらくの間、

窓の外をずっと眺め毎日を過ごしていました。

そして、

ある時またハチミツ工場の瓶に、

ハチミツを入れだしたのです。

子供「お父さん、なんで??

どうしたの??」

男「…黄金とは労働のつみきだ。

…。

あのリンゴ美味しかったよ。」

…。

男が生計をたてるハチミツ工場のハチミツは、

いつまでも村の人々を喜ばせていたそうです。

ーおしまいー







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?