【映画評】『別離』について

イラン人監督、アスガー・ファルハディの『別離』を最近見直したので感想を書いてみる。

アスガー・ファルハディの真骨頂はなんといってもその人間観察力と人間描写だ。複雑な人間関係と、社会的な問題が絡み合った大小様々な「嘘」が絡み合い、どこにでもありそうな日常が一大サスペンスへと変貌する。

複雑に絡み合った「嘘」の中には、グローバリゼーションとイスラム教との齟齬を受け止められない歪みとして浮かび上がってくるものも含まれており、上流階層とそうでない人々との格差問題としても見れれば、娘の教育のために外国へ移住したい母親と、アルツハイマーの祖父の介護を理由にそれを拒む父親、その間で揺れる娘の、現代の家族論的な見方もできる。

物語は決してハッピーエンドとは言えない。残された選択肢は少ないが、「あなたはどちらを選ぶか?」と突きつけられているようである。

最後のスタッフロールの使い方がお見事。

個人的には、「東京物語」、「グラン・トリノ」と共に家族を考える上でみるべき映画なのでいろんな人に勧めているのだが、いまだに「観たよ」と言ってくれる人にあった事がない。
私のプレゼン力の問題なのだろうか?

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