浪漫としての徒然草
さて、この第三十二段の「月を見る女」については、光田和伸さんという国文学者が「恋の隠し方― 兼好と「徒然草」」(青草書房)という本で新説を展開しています。それはこの三十二段に出てくるある方と兼好は同一人物で、月見る女は結ばれなかった兼好の恋人だったということ。更に彼女との思い出についての記述は徒然草の他の段にそうとは気が付かれないよう散りばめて挿入しているということ。これについての歴史的理解の中での根拠も示され説得力のあるおもしろい本になっています。けれども兼好自身は何も語っ