サッカーという世界が素晴らしいのは。
つい先日
わざわざ大阪から糸島まで会いに来てくれた
このnoteの読者の方から
本のプレゼントをいただきました。
「 これ、すごく好きな本で
有坂さんにもピッタリじゃないかなって。
もしかしたらもう持っているかもしれませんが… 」
その本は
『 ボールピープル 』( 近藤篤・文藝春秋 )
持っている本でした、で、大大大好きな本でした。
写真と文章で表現されている
「フットボール×旅×人間×自由」な世界観が
自分の好みにあまりにドンピシャで
園長を務めている「エリア伊都グローバル保育園」
のオススメ本コーナーにも置いています。
こうしてプレゼントしてもらえたのには
何かに繋がるきっかけがあるかもしれないなぁと
あらためて読み直したのですが
読むたびに心動かされてしまうこの一節に
今回もやはり、グッときてしまったのでした。
「 サッカーという世界が素晴らしいのは
公園や、校庭や、ちっぽけなスタジアムが
その向こうにある広大な世界へと
繋がっていることにある。
たとえ自分が世界の片隅にいても
目の前にある空き地は
カンプ・ノウに続いている。
そうは見えなくても、でもそうなのだ。
どこかで確実に繋がっている 」
自分が監督を務める「エリア伊都」の
「U-15クラブユース選手権」予選がスタート。
勝つと県大会への出場権を獲得できる
決勝トーナメントラウンド16の1回戦
幸先よく先制点を奪ったものの追加点を奪えず
逆に後半、ミス絡みから失点してしまいました。
その後も追加点を奪えないまま時は過ぎ
PK戦を覚悟したロスタイムでのコーナーキック。
GKへ向かって蹴られたボール対して
たくさんの選手が次々に反応するも
誰にも触れることなく、直接ゴールイン。
そして、そのままタイムアップ。
土壇場の決勝ゴールで
なんとか出場権を獲得できたのでした。
内容的には課題が多く出てしまいましたが
出場権をかけた試合の最後の最後に
勝ち越せた結果自体は素直によかった!
リーグ戦では
ラスト数分で同点に追いつかれての引き分け
というゲームが多発していたので余計に。
この試合の2時間後には
ダブルヘッダーで準々決勝の試合も行われました。
で、なんとこの試合でもまた
まさかまさかのロスタイム決勝ゴールで2-1と勝利し
準決勝に進出することができたのでした。
この決勝ゴールは中学3年生FWハルキの
ペナルティエリア外からのスーパーゴール。
しかも、カッコ良すぎる物語つき。
ハルキは去年12月に行われた新人戦の試合で
ジャンプの着地時に足首を骨折。
手術、長いリハビリ期間を経て
3月中旬にようやくチーム練習に合流しました。
ただ歩くにもまだ引きずる感じだったので
まずはしっかり歩けて走れるところからのスタート。
「 早く復帰したい気持ちはあると思うけど
動けるようになるここからが
一番気をつけないといけないところだから
しっかり時間をかけて焦らずにやっていこう。
ゴールデンウィークから始まる
クラブユース選手権に間に合えば最高だね 」
それからは練習で
負荷のかかるメニューを少しずつこなしていき
試合では出場時間を少しずつ長くしていき。
ただ身体のキレやバランス感
技術的な感覚がなかなか戻らず
トップチームの試合には出れないまま
クラブユース選手権が始まる週に突入しました。
試合のある金曜日までのチーム練習は2回。
火曜日の練習では
シュート練習やゲーム形式で
ハルキらしい動き出しの速さと
シュート感覚が戻って来ていました。
そして最後の練習となる木曜日。
アップや技術練習を見ても状態が良さそうだったので
紅白戦でのラスト10分
トップチームのFWとして起用すると
何度もいい動き出しを見せ、得点も奪いました。
練習が終わり
これなら途中からの出場も考えられるな
とぼんやり考えていると
ハルキが思い詰めた表情を浮かべて近づいてきました。
「 コーチ、明日のクラブユースの試合
お願いだから使ってください…
自分の足はどうなってもいいので…
本当にお願いします… 」
普段自分から話しかけてくることはない
シャイなハルキからのまさかの直訴
目には涙が浮かんでいました。
「 試合に出す約束はできないけど
コンディションも感覚もすごく良くなってるから
試合に出るつもりで準備しておいてな 」
そう伝えると「はい」と
静かに返事をして帰っていったのでした。
準々決勝の試合でのロスタイム決勝点は
そんなハルキが決めたスーパーゴールだったのでした。
彼の苦労を知っていたので、みんな大喜び。
自ら心を決めて行動した人って、やっぱり強い。
同じサッカー人として、同じ男として
同じ人間として、本当に本当に痺れました。
試合終了後
翌日のために全員でストレッチをしていると
みんな興奮冷めやらず大興奮で話していたのですが
どこからかすすり泣く声が聴こえてきました。
それは4月初旬にケガをしてしまい
この大会に出場できなかった3年生のシュウタでした。
「 なんでこのタイミングで
シュウタが泣くんだよー!(笑)」
とみんなから突っ込まれると、泣きながら
「 こ、この試合に…で、出たかった…… 」
そして、また大号泣。
みんな一斉に愛のある大爆笑。
たまらなく幸せな光景でした。
「 サッカーという世界が素晴らしいのは
公園や、校庭や、ちっぽけなスタジアムが
その向こうにある広大な世界へと
繋がっていることにある。
たとえ自分が世界の片隅にいても
目の前にある空き地は
カンプ・ノウに続いている。
そうは見えなくても、でもそうなのだ。
どこかで確実に繋がっている 」
クラブユース選手権の予選があった
福岡県の片隅のあのちっぽけなグラウンドが
どんな広大な世界へと繋がっているかはわかりません。
でもあの幸せを感じた全員が
広大な世界へと一歩踏み出したことは間違いない。
広大な世界とは
国やスタジアムという実際的な場所のことだけでなく
自分の心のスペースのことでもあると思うから。
心のスペースが広くなった自分で
またサッカーをやろう、また生きていこう。
そしてまた、広大な世界へと飛び出していこう。
ちなみに準決勝は残念ながら
2-2 PK戦3-5で敗退となってしまいました。
2-0でリードしていたにも関わらず
ラスト10分で同点に追いつかれるという…(笑)
3歩進んで2歩下がる。
成長はいつだって1歩ずつだ。
【 写真 】亀山ののこ https://www.nonokokameyama.com/
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