いいたくないの
「社長とSNSでつながるべきではない」、というのは、過去の経験から学んだ教訓だ。SNSでちょろっと書いたプライベートを、リアルで話題にされたり、興味を持たれたりするのが、うざいのに、パワーバランスが違うから、あんまりムゲにもできない。社長はもちろん、同僚もやめといた方がいい。
そこに最近、「美容師さんともSNSでつながるべきではない」という新たな教訓が加わった。長年お世話になっていた美容師さんが、超くだらないクソリプをしてきて、それを2回も繰り返し、さらに、美容室のリアルのおしゃべりでも、2回繰り返した。気にするのもどうか、というような、つまらない内容だ。でも、私は、美容室にいくのも気が重かったし、美容室でクソリプトークを展開した翌日は、会社で仕事だっちゅーのに、午前中いっぱい、イヤ~な思いが頭のなかにいすわった。
もう、四半世紀もお世話になっている美容師さんだ。若い頃から、妊娠期、子育て期を経て、シニアの今まで、人生の半分を、年に何度かのペースで接してきた。気さくで、礼儀があって、いい人で、腕がいい美容師さん。都会のその店にいくことで、お洒落的にダメな自分をちょっと立て直す、定点観測のような役割もあった。都会に行けないくらいヨボヨボになるまで、通うつもりだった。
けれど、そっと、やめることにした。
SNSを、つながらなくした。ちょっとホッとした。
こちらが客としてのサービスを受けるのに、イヤだな~と思いながらいく必要はない。はい、理屈では分かる。でも、その美容師さんが、客が減ったら傷つくだろうな、と想像する。だから、多少何かあっても、心の絆が強い場合や技術を高く評価している場合は、やめないわけだ。でも、やっぱりいやなものはいやだ。何がいやなのか。それはね、言わないのです。言いたくないのです。マジレスで関係性を荒立てて、相手に波風をたて、こっちも嫌な気持ちになって、ということを、起こしたくないのです。だから、サービスを利用するのをやめるときは、そっと、さよならです。
サービスに不満があっても、クレームをいわない。いわずにそっとやめる。
多くの人が、そうだろう。
ある施設でも同じようなことを感じた。
施設運営者とは、とてもよい関係ができている。施設のサービスも気に入っている。しかし、トイレのペーパーが切れていた。
ああ、ここはもう、やめよう、と思った。
ペーパーなんて、なければ「ないです」といえばいいと、思うじゃない?
でも、いわないんです。ペーパーがないことを指摘することで、すみませんすみません、なんとかかんとかで、と謝られることとか、「ペーパーがない場合はスタッフに声をかけてください」なんて貼り紙が貼られていて、不足をサービス利用者が指摘することを期待されるレギュレーションになっていることとか、実際ペーパーがなくて、ありえん困る、とか。
ペーパーの盗難があって、数を置いていないのかもしれない。
場所的にも置き場所がない、ともいえる。
しかし、施設とトイレは近い。こんだけ多くの人が利用している施設である。スタッフさんのルーティーンでトイレチェックの頻度をあげるとか、なんらかの対策はできるはずだ。そこを、不備があったらサービス利用者に補わせる、という考え。うーん、時間がないなか、急いで行って利用していることもあるし、ペーパーないですー、なんて、めんどくさいこと、言いたくない。そんなことを言わせないサービスであるべきだ、と思うわけである。実際、困ったし。
あと、他にもあったよな。いいたくないシチュエーション。
あ、地方の魚を紹介するイベント。
のどぐろを堪能する会、みたいなうたい文句だった。
しかし、寿司6貫で、そのうち、のどぐろは1貫のみ。
シャリの味が濃くて、肝心の魚のうまさは、それほど感じない。
パッと食べて、ちょこっとやりとりして、15分くらいで席を立った。
「おいしかったです、ありがとうございました」 その言葉にうそはない。
でも、2500円もしたの。寿司ちょこっとで。
しかも、他の魚も、うりつける気まんまんだったの。
これから出かけるから、持って帰れない、といったら、通販でぜひ、と。
心の中で思う。
(うちの冷凍庫、魚でパンパンだから。
通販でわざわざ買うことはないから)
もっと、言わなかった本音。
(これで、2500円? 高! ぼりすぎ)
隣に、のどぐろ丼は 1300円で売っているのだ。
土産用の魚の試食を、ほんのちょっと出され、
「おいしい、残念だけど、出かけるから買えない」と言ったあとに、
通販でも買えるからどうぞ、とたたみかけられたときに思った。
ああ、この人は、東京の人を、「刈り場」としか思っていないんだな、と。
見込み顧客をイベントで呼び寄せて、刈り取る場。
プロダクトをお金にコンバージョンする場。
通販やってるから、頭のなかに「CV率」しかないのかな、と思った。
ちょこっとの寿司に、高い値段をつける違和感。
東京の人には、このくらいの値段をつけていいのよ、こっちも経費かかってるんだし、という、感覚。
さらに、お土産で、通販で、魚を買えという。(やんわりね)
にこやかな笑顔のなかに、なんだろう、和田裕美さんのビジネス書のような最後に契約を勝ち取りにいく、客をのしていくような意志を感じてしまった。(ビジネスには必要なものだが、このイベントは、もっとなごやかな主旨だった)
っていうようなことを、直接、相手にいうことは、ないよね。
アンケートに書くことも、ないよね。
静かに、去っていくだけよね。
反面教師として、自分の仕事の教訓にしよう。
刈り取り感を、感じさせるべきところではないところで
押し出さないように。
トイレットペーパーの不足を客に指摘させるようなことのないように。
客にかゆい思いをさせないように。
相手がいやになるような、返事に困るようなクソリプはしないように。