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【短編集】short×3

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極めて短い短編集
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2019年5月の記事一覧

【短編】「猫月」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 071

 木崎はボロ切れのようになるまで働き、リビングの小さなソファに倒れこんだ。スネから先は宙…

倉光徹治
5年前
4

【短編】「風」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 070

 タクはバイト先のコンビニエンスストアに急いでいた。梅雨に入る前のこの季節、土曜日の午前…

倉光徹治
5年前
3

【短編】「ブルーハワイ」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 069

 ヨウコは4歳の頃、父と行った動物園のことを覚えている。  いちばん古い記憶かもしれない…

倉光徹治
5年前
5

【短編】「イルカの喪失」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 068

 我々人類がイルカを喪失したのは2026年5月21日のことだった。  その日、伊豆の小さな水族…

倉光徹治
5年前
1

【短編】「お菓子」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 067

 スーパーのお菓子売り場で、パパ、このお菓子見て、と息子が言った。  息子が手にしている…

倉光徹治
5年前
6

【短編】「パスワード」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 066

 朝起きてコーヒーを淹れようとポットの電源を押そうとしたらエラーが出た。  ホログラムに…

倉光徹治
5年前
3

【短編】「囚人」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 065

囚人たちがいた。 囚人たちは二つの自由を奪われていた。 ひとつ。質量に伴う力で強力に縛りつけられていた。 ひとつ。同時に時間の移動を固く禁じられていた。 可哀想だと思うだろう。 だが囚人たちは星を眺めることができたしお互いを愛し合うことができた。 それゆえに囚人たちは己が囚人であることを忘れていた。 忘れるのに時間はかからなかった。そういうものだ。 信じられないかもしれないが、2,3週間もすれば忘れてしまった。 囚人たちの惑星系でいえばわずか10万かそこらの

【短編】「禁吸血」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 064

 歯を削ってゆきます、と言われたので、はい、と答えた。  美人の歯科医師が無表情でドリル…

倉光徹治
5年前
3

【短編】「アキレス」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 063

 カメは走っていた。その速さは誰かがそれがカメであるということを解説しない限り誰もカメだ…

倉光徹治
5年前
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