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【短編集】short×3

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極めて短い短編集
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2019年4月の記事一覧

【短編】「AM9:60」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 061

 運送会社のトラックがけたたましく通り過ぎてゆく。平日の午前中。住み慣れた住宅街はドタバ…

倉光徹治
5年前
3

【短編】「時代の名残」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 062

 古い遊園地にはほとんど人がいなかった。まるで大型連休だということが嘘であるかのような閑…

倉光徹治
5年前
5

【短編】「穴」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 060

 火曜日の真っ昼間。ぽっかりと時間が空いてしまった。予定していた打ち合わせが先方の都合で…

倉光徹治
5年前
4

【短編】「傘と烏」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 059

 少年は傘を逆さに差していた。  傘は雨を集めた。  少女は地面に傘を差していた。  雨…

倉光徹治
5年前
2

【短編】「名前屋」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 058

 残雪の残る小さな駅で降りた。  「曖昧」という駅だった。  特急の停車する中央駅から乗…

倉光徹治
5年前
9

【短編】「2003-2009」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 057

2003 猫は言った。「キミの考えていることはすべてお見通しさ。つまり、世界を完結させたいわ…

倉光徹治
5年前
3

【短編】「体内時計」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 056

 どうやら昨晩酔った際に体内時計をどこかに落としてしまったらしい。  都内を走る環状線のつり革につかまって腕時計を見ると針は10時19分を差していた。  先刻見たときは9時19分だったから一時間が経過したことになる。  窓外を流れてゆく高いタワーの近景に既視感を感じたのはこのためだろう。  道理で降りるべき駅にたどり着かないわけだ。  この電車に乗ったのは何時だっただろうか。忘れてしまった。  今朝のことだとは思うが昨日のことだったと言われればそんな気がしないわけ

【短編】「Yuri0915」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 055

 僕たちの距離はどのくらい離れているのだろうか。  レトルトのカレーを冷凍保存した白ご飯…

倉光徹治
5年前
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【短編】「伽」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 054

 雨漏りがした。  家ではなく、私の中で。  どこかからすきま風も吹いている。  上空に…

倉光徹治
5年前
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