【短編】「5分間」_Simplicity of the world, Complexity of the life. 008
私は深夜の町をフラフラと歩くのが好きだ。
ユングの言う集合的無意識が濃くなる。ひとり、またひとり、ひとが眠りにつく音がする。
空気が一秒ごとに澄んでゆく。冬の気配を感じる。ロングスカートでも足首が冷える。吐息が僅かに白くなってきた。定期テストの一夜漬けには、この夜行がついてくる。
2時と3時のあいだ。セブンイレブンまで徒歩5分。
排水溝の隙間をスニーカーで踏みつぶしてゆく。和田君の家の明かりは今日も消えている。テストの準備は万端なんだね、さすが和田君。