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元に戻らない世界で、生き残りのボーダーは

東京の新宿で7月のオープンを目指して、イタリアの有名ジェラート店が準備を急いでいる。

同じく東京の恵比寿(えびす)という場所では、9月の開店を目標にNYの有名高級ステーキハウスが店舗の開発とプロモーションを本格的に始めていると、グルメな友人から聞いた。

元気な海外勢は既に長いトンネルを抜け出したかのごとく、人もサービスも国境を超えて動き始めている。さあ、チャンスだと。

かたや、近隣の町を歩くと、あちこちに閉店のお知らせや空き店舗、長らくシャッターをおろしたままの店が、目に止まってしまう。

自分が通う飲食店の店主さんは、穏やかな口調だったがハッキリ言った。昨年から世界で続く病気のせいで、ウチらの業界は完全に白黒ついたと。

少なくなったお客さんにも弱音を吐かず、工夫と努力でなんとか踏ん張ろうとする店。協力金を天から降った幸運のように思い、もらえるものはもらっておけとばかりに、動かなくなった商店主

それぞれの事情があるはず、批判めいたことを言う立場にはない。

だが、アスリートの明暗を分ける態度と重なると感じた。出場機会に恵まず、ベンチに座る毎日でも、トレーニングを怠らず体調を管理し、いつでも出番に備える者と、消えてゆく選手。

これは他人事でもなければ、飲食業界だけの話しでもない。そして、読んで気が晴れる名言や教訓の類でもなく、もっと切実な気配がしている。

IT化、省力化、自動化の話は説明不要だが、便利になって、価格が下がって、やがて多くの仕事が失われていく流れは、誰にも止められない。

昔は年寄りと別れる際には、「長生きしてね」がお決まりだった。そして、世界でもトップクラスの長寿を実現した私たちは、かつて夢見た天国のような場所で暮らしているはずだった。

誰も答えを知らないなら、学びの足腰が弱らないように自分を鼓舞して、その答えを探しにいく旅に出る準備はしておいた方がいいかもしれない。

問題が解決したと思ったら、次の宿題が必ず出てくる。

歳を取ると、なぜだか自分には教える資格があると勘違いする者がいる。しかし、オフィスでIT機器を導入してみたら、上司に教える時間が一番長かったなんて、笑ないことがリアルな世界だったりする。延命のためにあらゆるエネルギーが消費されているこの国を変えてゆくのは、若者の勇気と新しいテクノロジーだと信じている。

「教えてください」、そう素直に言える人だけは、最終便に間に合うかもしれない。





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